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天使の笑顔に浄化されてしまいそうだ

 何度か休憩を挟み、フリージアへ向けて街道を歩いていく。


 スズは意外に話すのが好きなんだろう。

 聞くと何でも答えてくれるし、色々教えてくれる。


「普段どうやって戦っているの?

 昨日シルバーウルフと戦ったときは猫みたいに戦ってたよね。

 ホロホロ鳥の時は普通に殴ってたけど」


「スピードのある戦いをする時は、4足歩行で猫みたいに戦う。

 パワーのある戦いをする時は、2足歩行で人みたいに戦う。

 私は生まれたときから猫っぽかったらしい。

 なぜかわからない、自分でも猫みたいな行動をしている方が落ち着く」


「リーンベルさんの家で寝てた時も、猫みたいに丸まって寝てたもんね」


「うん、昔はお姉ちゃんの耳をよく舐めて怒られた。

 今も舐めたい願望はある。

 怒られるからやらないだけ」


 リーンベルさんの耳を舐めるときは呼んでほしい、そばで見たい。

 ちなみにスズさん、僕の耳、あいてますよ?


「獣人じゃないけどね。

 でも、獣人の友達に身体能力は獣人並みって言われた。

 沼地のように足を奪われる所でも、猫型の4足歩行ならダダダッて走れるから便利」


「やっぱり獣人の方が身体能力は高いんだね。

 神獣様と出会ってからなの?」


「多分。身体能力がグッと上がった気がする。

 あと魔法も強くなった」


「魔法も使って戦うことができるの?」


「うん、火魔法だけ得意」


 スズさんのハイスペックの一部をもらいたい。

 せっかく異世界に来たんだから、僕も火魔法使ってみたかったよ。


 火魔法ちょうだい、ソースあげるから。


 街道をひたすら歩いていると、辺りがだんだん暗くなってきた。

 無理して進まず、野営をして過ごすことになった。


「夜ごはん何にしよっか」


「タマゴサンドと金タマ汁」


 金タマ汁はやめて。

 絶対に『みそ』を省略しないで。

 タマネギと味噌に失礼だからね。


「ホロホロ鳥はいいの?」


「ホロホロ鳥はお姉ちゃんと一緒に食べたい。

 今はタマゴサンドとみそ汁がいい」


「スズはお姉ちゃん大好きだよね」


「姉妹仲良し」


 リーンベルさんは面倒見がいいから、お姉ちゃんっ子になる気持ちもわかるよ。

 マイペースのスズはスズで可愛くて放っておけないし。

 何が言いたいかっていうと、この姉妹は最強。


 夜ごはんはスズの希望通りに、タマゴサンドと金タマネギのみそ汁にした。


 夜ごはんを食べてお腹いっぱいになると、急激な眠気に襲われてしまう。

 1日中歩いたせいでヘロヘロなんだろう、足が棒みたいになってるし。

 何度か休憩したとはいえ、今の体は10歳の子供だからね。


 でも、野営するなら見張りが必須。


「タツヤは休んで、私が見張りをしてる」


「途中で起こしてね? 代わるから」


「私は2年間ずっとこんな生活してるから問題ない。

 良い子は休む、よしよし」


 まさかスズに頭を撫でられるとは思わなかった。

 嫌いじゃないけど。


 スズの頭ナデナデはとても心地よかった。

 また『初心(うぶ)な心』発動してる気がする。


 トロけそうなくらい気持ちがいい。

 もっとしてほしい……。



- 翌朝 -



 頭を撫でられた記憶が5秒しかなく、気付けば朝になっていた。

 どうやら一瞬で寝てしまったみたいだ。

 なんてもったいないことを……。


 朝まで見張りしてくれたスズに感謝を伝えると、『タマゴサンドと金タマネギのみそ汁』を要求された。

 お安い御用です、お作りしますね。


 朝ごはんを食べた僕たちは、街へ向かって歩き出す。

 夜はしっかり休ませてもらったけど、昨日1日歩き続けたから筋肉痛が酷い。

 でも、スズなんて寝てないからね。

 休んでた僕が弱音を吐くわけにはいかないよ。


 そのまま歩き続けていくと、昼前にはフリージアの街へ戻ってきた。

 ギルドに報告をすれば、無事に『ショコラの初依頼』は完了だ。


 僕たちはすぐに早速ギルドへ向かう。

 ギルドの扉を開けると、4日ぶりのリーンベルさんがカウンターにいた。


 久しぶりに会うとドキドキしてしまうね。

 神々しいオーラを放っているよ、さすが天使だ。


「お姉ちゃん。ただいま」


「おかえり。どうだった?」


「依頼完了、報告する」


 シルバーウルフが3体ではなく、6体だったことをスズは報告した。

 村人の確認不足による依頼発注ミスだと処理された。


 僕は黙って横に突っ立って話を聞いてるだけ。

 また付き人感が増してしまった。


「じゃあヴォルガさんに解体してもらってね。

 はい、依頼報酬だよ」


 お金の管理はスズにお任せだ。

 だから、報酬を受け取るのもスズ、お金を払うのもスズ。

 絶対に捨てられないように、積極的に餌付けをしていこうと思う。


「うん、解体へ行く。

 別件、ホロホロ鳥がいたから狩ってきた。しかも6匹」


 リーンベルさんは立ち上がり、目をキラキラさせてスズと両手で握手をしていた。

 本当にホロホロ鳥が大好きみたいだ。


 早速シルバーウルフとホロホロ鳥を解体するため、ヴォルガさんの元へ向かう。


「おー! スズじゃねぇか、変わらねぇな!」


「うん。良いもの持ってきた」


「はっはっは、期待しているぜ」


 スズは元々この街にいたから、ヴォルガさんと知り合いみたいだ。

 まずはシルバーウルフを6体を取り出す。


「ん? お前らパーティ組んだのか?」


「パーティ名、ショコラ」


「お、おう。そ、それはまた変わったパーティ名だな」


 変なパーティ名だって言ってるようなもんですよ。


「さすがBランク冒険者だな、傷が少なく1発で倒されている。

 たった2年で随分成長したな。

 ん? これだけ……無傷か?」


「タツヤが卵で倒した」


「そういえば、お前はここらのウルフも無傷で持ってきてたな。

 それにしても、卵でか?」


「卵」


「「「 ……… 」」」


 1番気にしているデリケートな問題に首を突っ込まないでほしい!


 逆にCランクモンスターを無傷で倒す人いる?

 僕なんて卵をパカッて割ったら、ウルフがフゴッッッッって言って倒せるんだよ? すごくない?


 ……あんまり変な目で見ないで。泣いちゃうよ?


「ウルフとは別に解体して欲しい魔物を持ってきたんですけど、一緒に渡してもいいですか?」


「おう、出してくれ」


 ホロホロ鳥を一気に6体取り出すと、ヴォルガさんは「ファーーー!」と言って驚いた。


 僕とスズは顔を合わせてニヤリとした。やってやったぜ。

 鳥といっても、縦・横ともに2mの超大物が6体だからね。


 あまりにも驚いたヴォルガさんは、開いた口が塞がらないようだ。


「ホロホロ鳥の肉は全ていただく」


「なっ?! こんなにもか?!

 腐っちまうからギルドに少しは卸してくれよ! な? な?」


「アイテムボックスは腐らない」


「ヌアーーーーーーーーーー!」


 良い年したオッサンが頭をかきむしって悔しがっている。

 ちょっと可哀想だから、スズに交渉してあげよう。


「10キロくらいわけてあげたら?

 言うこと聞いてくれたら、おいしい料理が待ってるよ。

 夜ごはんは、ホロホロ鳥の肉汁がじゅわ~っとあふれ出「10キロわける」」


 早いよ。まだ肉汁しか言ってないのに。

 それでもスズはよだれを垂らし始めている。

 しっかり餌付けできそうで嬉しいけど。


「6体いるんだ、もう少し頼む!

 せめて20キロわけてくれ」


「スズ、ヴォルガさんがやっぱりホロホロ鳥の肉いらないって」


「あぁー! スマン! 10キロでいい!

 いや、お願いします!」


「10キロだけですよ」


 解体に時間がかかるみたいなので、後で肉を取りに来ることにした。

 解体場から戻ると、不思議そうな顔したリーンベルさんに声をかけられる。


「ヴォルガさんが2回も叫んでたけど、どうしたの?」


「スズがホロホロ鳥を卸さない、って言ったら叫ばれました」


「アイテムボックスがあれば腐らない。タツヤはいい子」


 そういって僕の頭を撫ではじめるスズ。

 や、やめて~。『初心(うぶ)な心』のせいでトロけそうになるから。

 心地良すぎるんだよ。

 リ、リーンベルさんの前でそんなことしないで……。


「6体もいるのにギルドの取り分0だったら、確かに悲しくなっちゃうね」


「10キロだけ卸した」


 あっ、スズさんのナデナデが終わってしまった。

 もっと撫でられたい、スズさんに頭をナデナデされたい。

 むしろ飼われたい、スズさんにペットとして飼われたい。


 ……ハッ、ダメだ。

 最近は欲望に素直すぎる気がする、気を付けよう。


「そっか、ありがとね。

 最近入ってきてなかったから、取り合いになるだろうなー。

 そ、それで、その……今日の夜ごはんはホロホロ鳥で作るんだよね?

 私の分も……ちゃんとあるよね? ね?」


 恥ずかしそうにホロホロ鳥料理を催促するリーンベルさんが可愛い。

 あるに決まってるじゃないですか、むしろ一緒に食べてください。


 リーンベルさんにも飼われたい。


「元々そのつもりですから大丈夫です。

 その代わり、お家で食べさせてくださいね?」


「うんうん! じゃあ今日楽しみにしてるね!」


 グハッ、リーンベルさんの天使スマイルが炸裂する。

 4日ぶりの神聖な笑顔に、僕は浄化されて消滅してしまいそうだ!


 え? もう消滅してしまえって?

 そんなこと言わないで、もうちょっと付き合ってよ。


 癒されすぎて逆にダメージをくらい始めているので、この場から立ち去ることにする。


「じゃあ、買い出しに行ってきますね」


「あっ、待って。もう1つお願いしてもいいかな?

 その……ちょっと恥ずかしいんだけど」


 そんなに恥ずかしそうにしてどうしたんだろう。


 ま、まさか……愛の告白?!

 人が少ないと言ってもギルド内ですよ。

 さっき『あなたの家でごはんを食べます宣言』した時から、マールさんとアカネさんがガン見してるのに。


 今けっこう注目されてるんですからね。

 それなのに、愛の……告白。


 僕たちがお会いするのは、4日ぶりですもんね。

 会えない時間で恋心に気付くパターンですか。


 リーンベルさんも僕と同じ気持ちだったなら、恥ずかしいですけど……い、いいですよ?


「少しね、言いにくいんだけど」


 モジモジするリーンベルさんがヤバイ。

 モジモジするリーンベルさんがヤバイ。


「今度お礼するから、タマゴサンドわけて?」


「………?」


 頭が真っ白になった。

 何を言われたのか理解できない。


 告白じゃない?

 タマゴサンド?

 タマゴサンドが欲しいの?


「タマゴサンドは至高」


「あれはズルいよね、おいしすぎだもん。

 ふわふわなパンにふわふわな卵、マヨネーズが寄り添って優しい味を作り出すの。

 お願い、今日のお昼ごはんに食べたいの」


「……ど、どうぞ」


 最高にぎこちない笑顔でタマゴサンドを渡した。

 リーンベルさんの最高にうれしそうな天使の笑顔が返ってきた。


 この笑顔、プライスレス。

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