そういうことなんですよね?
スズは真面目な顔で神獣との出会いを教えてくれた。
「冒険者になってすぐ、依頼でとある村に向かう途中だった。
私は見たことない魔物に襲われて、一瞬で倒された。
そこに神聖なオーラを放つ大きな猫がやって来て、魔物を追い払ってくれた。
『やっと見つけた、しかし時間がない。
我は神獣、世界を守る者。
我の代わりにハイエルフ様を守ってくれ。
そのための力をお前に託す……』
それだけ言うと神獣様は消えてしまい、体を治癒してくれた。
あれは夢じゃない、お腹には大量の出血の痕があったから。
私は神獣様の願いを聞き入れることにした。
それからハイエルフと神獣についての情報を探し回ったけど、手掛かりの1つも見つからなかった」
スズは僕の方をじっと見つけてきた。
「えっと、言い忘れてたけど、僕は元々ハイエルフじゃなくて人間だよ。
この世界に来てステータスを確認したら、ハイエルフになってたんだ。
だからハイエルフや神獣については何も知らない。
ギルドにそういう情報は入ってこないんですか?」
ギルド職員のリーンベルさんに尋ねてみる。
「各地域の情報は入ってくるけど、神々しい獣についての目撃情報は稀だね。
でもそのほとんどが眉唾物で、信用できない情報らしいの。
それにスズの話だと人の言葉をしゃべったことになる。
そんな魔物や獣の情報は聞いたことがないから、私にはわからないわ」
「大丈夫、ハイエルフの存在が知れただけでも大きい。
これからは私がタツヤを守る。それだけでいい」
男としては守られる側なんて情けないかもしれない。でも嬉しい。
美少女を助けるのもアリだ。
でも美少女に助けられるのもアリだ。
もちろん、お礼は体ではr(自重
「それにそのステータスで無理はさせられない。
生きてる方が不思議。
オークと遊んでる人のステータスとは思えない」
「本当だよー。ゴブリン1体ギリギリ倒せるくらいのステータスだからね?」
なんか今、怖いこと言われてますね。
ゴブリンなんて余裕ですよ、なんたって醤油だからね。
オークなんてハバネロさんにお任せですよ。
2人は冗談が好きだなー、調味料がそんなに弱いわけないじゃないですか、ハッハッハ。
……今まで無謀な戦いをしてたんですか? 危ないんですか?
「しかも防具つけてない。クレイジーだよ?」
スズさんにクレイジーって言われた、ショック。
さっきオーク肉を食べて「むほっ」って言ってたくせに。
変な声を出してたくせに。
「ゴブリンのステータスが平均100って言われているの。
人間でいえば……5歳くらいじゃないかな?」
ご、ごさい?! ちょっと待って、意味がわからない。
僕の精神と運以外は100を切ってるよ。
5歳児並みでゴブリンよりもステータスが低い冒険者。
なんだ、そのネタキャラは、ただのザコじゃないか。
「それに強靭な精神と最大値の幸運はなに? 初めて見た。
強靭な精神力と幸運だけで生き抜く。
……やっぱり、変」
言わないで! 1番気にしてるやつだから!
彼女いない歴32年の結果が、称号とステータスとして現れただけなの。
しかも、32万も精神があるのにほとんど働いていない詐欺ステータスなんだよ。
べ、別に悲しくなんてないんだからねっ!!
「まぁまぁ。これからはスズがちゃんと守ってくれるからね?
いったんこの話はおしまい。
そうだ、今日はもう泊まっていって。
遅い時間になっちゃったから」
……リーンベルさんの家で、お泊り?
嬉しすぎて僕の32万の精神が崩壊しそうだ!
やはりこのステータスは詐欺だろう。
「お姉ちゃん、良いこという。泊まるべき。
よし、明日の朝ごはんもおいしくなる」
姉妹公認のお泊りイベントが発生した。
これは運100の効果なのか?
異性のお家にお泊りするって、これはもう……そういうことなんですよね?
そうですよね? 期待してもいいんですよね?
僕の『初心な心』を弄んじゃダメですよ。
女性の家に男が泊まるってことは、やることは1つしかありません。
は、初めてはリーンベルさんが、奪ってくれるんですか?
「タツヤくんはスズの布団で寝てね」
ち、違うんですね。
確かに妹の方が体の発育はいいですからね。
さっきも薄着にミニスカートで誘惑してきましたし。
スズの服装はそういう意味でしたか。
食事会のデザートは……僕っていうことですね。
もちろん、リーンベルさんもデザートを食べに来てくれますよね?
「ス、スズと、い、い、一緒に寝る、感じですか?」
「な~んか君は変なこと考えたりしてないかなー?」
当たり前じゃないですか!
念願のお泊まりを頂戴したばかりですよ。
誘ってきたのもそちらですし?
「か、か弱い10歳の僕が変なこと考えると思いますか?
まだ10歳なので、1人で寝るのは寂しいなーっと思っただけです」
「ふーん。ちなみにスズは私と一緒に寝るからね?
この子は猫みたいな子だから、家にいる時は私の足元で丸まって寝るの。
だからスズの布団は、買ってから1度も使ったことがないのよ。
一応洗っておいてよかったわ」
そういってリーンベルさん達と別の部屋に案内された。悲しい。
でも、女性の家にお泊りするというだけで妙に興奮しているよ。ヤバイやつだよね。
仮に期待しているようなイベントが発生しても、乗り越えられないと思うけど。
スズの薄着姿で膝から崩れ落ちた僕には、そんな刺激は強すぎる。
でも……さっきから幸せな妄想が止まらないよ。






