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暴れ馬エステル

 3人の帝国兵をタマちゃんとクロちゃんが担ぎ、捕虜にして街へ戻ってきた。


 冒険者ギルドでアズキさんに事情を話して、ギルドへ帝国兵を引き渡す。

 途中で暴れることも考慮して、タマちゃんとクロちゃんに連れて行ってもらうことにした。


 その間に僕は、Sっ気女性と共にギルドマスターの部屋で話し合い。

 3人でソファに座って、人間バージョンの精霊獣チョロチョロと向かい合っている。 


 早くも嫌な予感を感じ取ったのか、チョロチョロは大きな溜息を漏らしていた。


「4人組の正体は、帝国兵ということか」


「はい、そうでした。

 一時的にフェンネル王国と冒険者ギルドに協力を求めることで、同意済みです。

 その間はアズキさんに引き渡した帝国兵を、捕虜として扱うことも許可いただきました」


 僕はキマイラの皮をちらつかせて、3つの条件を突きつけることに成功した。


 1つ目は、冒険者ギルドに協力して、一時的に部下を捕虜として扱うこと。

 これは万が一彼女が逃げた時、帝国へ突きつけるために必要だったから。


 2つ目は、僕と共に行動してもらうこと。

 勝手に行動して森を壊されても困る、という理由が1割。

 残りの9割が、Sっ気のあるお姉さんと一緒にいたいから。


 僕は初対面のこの人に罵倒されて、弄ばれたいという願望に支配されている。

 災害級の魔物で無邪気に喜ぶ姿は、なんだかんだで可愛かったし。

 口封じのキスもしたい。いや、されたい。


 3つ目は、エルフと無関係である場合は撤退すること。

 スノーフラワーを手に入れるためには、精霊の森を守る必要があるから。


「お前……よくこいつを説得できたな。

 帝国の暴れ馬エステル王女といったら、手が付けられないことで有名だぞ」


 あ、やっぱり問題児d……、王女?!

 どことなく肌艶があって、エロスを放つ引き締まったボディをお持ちのお姉さんだと思っていたけど、王女だったのか。


 武器を持って前線で戦う王女なんて、めちゃくちゃタイプだよ。

 そんな国の兵士だったら、自分を認めてもらうために必死で訓練に取り組むからね。

 練習相手に選ばれて、どさくさに紛れて押し倒されたいと思ってしまう。


 いいな、剣で戦う暴れ馬の王女。

 きっと夜も暴れ馬に違いない。


「ふんっ、私は第4王女で実質はただの一般兵みたいなもの。

 だいたい暴れ馬なんて二つ名が失礼極まりない。

 エルフの調査隊になるため、兵士達を薙ぎ倒しただけだ。

 世界を守るのは帝国の役目だからな」


 自分で一般兵だというものの、王女である以上は民のため、世界のために動きたいんだろう。

 兵士達を薙ぎ倒すのはどうかと思うけど。


「こやつがいる調査隊ということは……少々面倒なことになったな。

 冒険者ギルドが処理できる領域を超えておる。

 領主とフェンネル王国に申請して、場合によっては帝国に……」


 ブツブツと難しいことを呟き始めたチョロチョロは、露骨に嫌そうな顔をしている。


「そんなに難しく考えなくても大丈夫ですよ」


 あなたが悩むことは間違いないと思いますけど。


「何を言っておるんだ、世界一扱いの難しい女だぞ。

 3年前、訓練と称して各地の冒険者ギルドで、こいつは暴れまわっておった。

 あの時は確か、フェンネル王国の王都のギルドで敗戦し、帝国へ送り返したはず」


「ち、違う。あれは冒険者達のレベルアップになればいいと思ってだな。

 あまりにも弱すぎて薙ぎ倒しただけだ」


 ただの道場破りじゃん。

 暴れ馬の二つ名がピッタリだよ。


「1年前、獣人国の獣王を強襲した件はどう説明する?

 1人で外交へ出かけた獣王に襲い掛かり、返り討ちにあったそうだな」


「返り討ちにあったのは事実だが、それも違う。

 強いといっても、一国の王が1人で外出など危険だろう。

 それをわからせるために強襲して、危険を教えようと思っただけだ。

 殺すつもりは一切なかった」


 それは国際問題に発展するほどの大問題だぞ。

 暴れ馬の領域を超えた、ただの犯罪者じゃないか。


 きっとエステルさんは間違った優しさを持った、悪い意味で純粋なタイプに違いない。

 頑固なわからず屋さんで、行き過ぎた正義感を持った、厄介過ぎるお節介さん。

 話を聞いてる分にはいいけど、巻き込まれたら大変なことになりそうだ。


 僕レベルになってくると、そういうダメなところも好きになっちゃうけどね。

 恥ずかしい思い出なのか、顔を赤くするところが可愛いと思ってしまうから。


「まぁ過去は過去ですよ。

 それに解決する方法はすでに決まっていますので。

 無闇に森へ手を出さないことは約束しましたから、被害は出ないと思いますよ」


「ほー、お前は随分こやつのことを信頼しておるんだな。

 それで、どういう方法で解決するつもりだ?

 エルフに対してはどこまでも強硬姿勢を崩さないのが帝国だぞ」


 騒ぎを起こした元凶が威張らないで下さいよ。

 オッサンのジト目なんて誰も嬉しくないんですから。


「いやー、エステルさんが言うにはですね。

 1週間前、巨大な魔力がスノーウルフの森に消えるのを感じたそうなんですよ。

 あっ、そうだ、偶然ですね。

 ちょうどフェンネル王国とデザートローズを結ぶ橋が壊された日のことかなー?」


 わざとらしくチョロチョロにプレッシャーをかけていく。


「不審に思って調査したら、森に結界があったことからエルフの仕業だと判断したみたいです。

 スノーウルフの森にエルフが住めるはずがないんですけどね。

 それで今回、エステルさんと共に巨大な魔力の正体を確認することにしました。

 巨大な魔力がエルフでなければ、素直に帝国へ撤退してくださるそうです」


 挙動不審になったチョロチョロは、目がキョロキョロと動き始めた。

 顔全体に冷や汗が流れるほど、動揺を隠せていない。

 自分に原因があったことを自覚した彼は、3,000年生きていると思えないほどパニック状態だ。


 何歳まで生きても、男とは嘘が下手な生き物である。


「ふぇ、フェンネル王国に許可を取らないと、だ、ダメなんじゃないのか?

 フェンネル王国の土地を、ギルドの判断で無闇に調査するわけにはいかないぞ」


 声が裏返ったチョロチョロは必死に逃れようとしていた。

 だが、そんな逃げ道は存在しない。


「大丈夫ですよ、僕の名前を出してもらえれば、国王なら協力してくれますから。

 一応、チョロチョロさんに確認してもらうとして、調査は明日からにしましょうか」


 そこまで言うと、チョロチョロさんがすごい勢いで近寄り、ガシッと肩を組んで来た。

 部屋の隅っこに追いやられて座り込む。


「お、おい、どういうことだ。

 我はこんなやつと関わり合いたくないぞ」


「エルフの仕業ではない場合、すぐに引くように約束しましたから。

 他にエルフがいないと証明する方法はありますか?

 このまま帝国に送り返しても、すぐにまたやって来ますよ。

 それなら森でチョロチョロさんがウルフの姿を見せたら、一件落着じゃないですか」


 にゃんにゃんが戦闘を避けるほどの巨大ウルフだったし、エステルさんも無闇に敵対しないだろう。

 タマちゃんと対峙した時に実力差を見抜いて、戦闘を避けていたから。


 あと、元凶は自分なんですから、大人なら責任を取ってください。


「し、しかしだな、あまり姿を見せたくはないんだ」


「何を言っているんですか。

 どうせ古代竜と暴れすぎて、魔力を偽装する力を残すの忘れたんですよね?

 今は全然バレませんし、エステルさんが平然としていますから。

 精霊達を守ることが役目なんですし、覚悟を決めてください。

 その後はこっちで何とかしますから」


「む、むう……」


 どれだけあの姿を見せるのが嫌なんですか。

 僕にはアッサリと姿を見せ、スノーウルフのティモティモを自慢してきたくせに。


 うなだれるチョロチョロさんを無視して、エステルさんに近付いていく。


「エステルさん、ギルドマスターとは話がつきました。

 今日はこのままギルドのお世話になってください。

 捕虜にした部下のこともありますし」


「断る、約束はお前と共に行動することだったはずだ。

 部下には大人しくするように命令をしておく、心配するな」


 えっ?! 確かに約束はしましたけど……。

 それは森で勝手な行動をされたら困るからであって、街では自由でいいのに。


 いや、もしかしたら、僕と一緒にいたいんじゃないのか?


 Sっ気の強いエステルさんは、本能的にMっ気の強い僕を求めているんだ。

 露天風呂でSMプレイをすることになるかもしれない。

 きっとマールさんも好きなタイプだと思うし、旅館に連れて行っても問題はないだろう。


 僕が間違っていたよ。

 帝国の人間を野放しにできないし、一緒の部屋に泊まるしかないな。


「わかりました、団体行動は大切ですからね。

 旅館に泊まっていますから、一緒に向かいましょう」


「な、なんだと?!

 りょ、旅館に泊まるほどの金は……も、持っていないぞ」


「王女がそれでどうするんですか!

 仕方ありませんね、僕が払いますから大人しくしててくださいよ」


「う、うむ、すまんな」


 危うく帝国の王女を逃がすところだった。

 金持ちでよかったよ。

【あとがき】


今日が書籍一巻の発売日ですヾ(*´∀`*)ノ

せっかくなので、24~27日は18時に更新しようと思います。

Web版、書籍とも、よろしくお願いいたします。

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