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パーティ結成

 街に着くまで、スズちゃんと楽しいひと時を過ごした。

 無表情で口数が少ない、でも会話は途切れない。


 以前助けた女の子とは大違いだ。


 もしかすると、僕たちは相性がいいのかもしれないね。

 勝手に舞い上がってしまうよ。

 彼女いない32年にもなると『話しが続く=恋』だと勘違いするんだ。

 ヤバいやつだと自覚しているよ。


 僕は「ギルドに行くけどどうする?」と聞いてみたら、「一緒に行く」と言われた。

 可愛いペットと散歩をしているような気分になってきた。

 無表情なのに愛しくてたまらない存在。ずるい。


 冒険者ギルドに着くと、僕はあることに気付いてしまう。


 女性を連れてリーンベルさんに会ってもいいのか、ということだ。

 もしかしたら、浮気と思われるかもしれない。

 リーンベルさんに「私のことは遊びだったんだね」って思われたらどうしよう。

 でも、この子の可愛さも捨てがたいんだ。なんか懐かれてるし。


 クソッ、こじらせた恋愛虚弱体質が妙な罪悪感を植え付けてきやがるぜ!

 一方的な片想いだから、本当は考える必要もないけど。


「どうしたの? 早く入りたい」


「あっ、うん。ごめんね」


 スズちゃんが急かして来るから仕方ない。

 逆に僕たちの関係を見たリーンベルさんが嫉妬してくれるかもしれない。

 それはそれで……アリ!


 そんなことを考えながら、ギルドの中に入っていく。

 昼の2時過ぎだから、冒険者は少ない。

 2人でリーンベルさんの元へ向かっていくと、リーンベルさんは固まってしまった。


 やっぱり知らない女性を連れて来ちゃったからかな。

 目の前まで来ると、リーンベルさんが明らかに驚いているんだもん。

 僕とスズちゃんをチラチラと順番に見ている。

 そうだよね、いきなりこんな可愛い子連れてきたらショックだよね。


 なんか……ごめんね? でも、安心してください。

 僕はリーンベルさんにすべてを捧げる覚悟でいますから。


 それにしても、改めてリーンベルさんとスズちゃんを見比べると顔付きが似ているな。

 できることなら2人同時に好かれたいよ。


「なんで君たちが一緒にいるの?」


「ただいま、お姉ちゃん」


「おかえり。

 でも、もう少し早く戻って来て欲しかったなー。

 手紙届いてから、1か月も待ってたんだよ?」


「次は気を付ける」


 あれ、知り合い? お、お姉ちゃん!?

 顔が似てると思ったら姉妹なの?

 僕はどれだけ鈍感なんだろうか。

 1人だけ取り残されている感じがするから、念のため確認してみよう。


「お姉ちゃん?」


「お姉ちゃん」


「え、妹さん?」


「なんで知らずに一緒に来るのかなー。

 スズは私の妹で、2年ぶりに王都から帰って来る予定になってたの。

 どこであったの?」


「お姉ちゃん、大変。この子は変。

 だからパーティ組む」


「「え?!」」


 2人でキョトンとしてスズちゃんを見てしまう。


「パーティ申請の受付」


 スズちゃんはギルドカードをリーンベルさんに手渡す。

 僕とリーンベルさんは混乱している。


「ごめんね、お姉ちゃんは頭が追いつかないよ。

 ちょっと整理させてもらっていいかな?

 スズは基本言葉足らずだから、ちょっと経緯を説明してもらってもいい?」


 僕に聞かれても困りますよ。

 同じく混乱してるんですから。


「えっと、僕もよくわからないです。

 戦ってるところを見られてたみたいで、戦闘後に声をかけてもらったんです。

 それでクッキーを上げたら『ついてくる』って言われて、一緒に街へ戻ってきただけで」


「スズはどうしてパーティを組もうと思ったの?

 今まで一度もパーティを組んでないって聞いてるよ?」


 初めてですか?

 お互いに初体験……ですね。

 変な意味じゃないけどね、初めてという言葉に敏感なだけで。


「変だから。オーク2体と遊んでた。

 クッキーもおいしかった」


 あれ、スズさん?

 オーク2体と遊んでいたってどういうこと?

 そのワードは危険な気がするんですけど。


「タツヤく~ん。最近大人しくて良い子だったよね~。

 どうしちゃったのかなー?

 寂しくてオークさんに遊んでもらってたのかなー?」


 ほらっ、ニコニコリーンベルさんが再来してるじゃん!

 最近見てなかった黒いオーラがすごいよ。

 もう闇に飲み込まれそうなぐらい黒いの出てるから。


「お姉ちゃん、あれは絶対オークと遊んでた」


 なぜ火に油を注ぐんだ!

 あぁー! 堕天使が……降臨してしまった。

 言い訳で回避行動を取る、総員衝撃に備えろ!


「遊んでないです!

 街道の近くの森からオークが2体飛び出してきたから倒しただけです!」


「Eランクでなんでオークを2体も倒してるの!

 しかも遊んでたって何?

 君はこの前オークで怖い思いをしたばかりなのに何してるの!

 ウルフを討伐するのに無理はしないって約束したばかりじゃありませんでしたか!」

「ごめんなさい!!!」



- 1時間後 -



 回避不可能だった。

 激オコリーンベルさんに1時間も説教された。

 怖いよ……やっぱりこの人は怒らせてはいけない人だ。


 その間スズちゃんはボケーッとしてるし。

 この姉妹、顔以外は全然似てないんですけど。

 でも2人とも可愛い。好き。


「本当にもう! 最近やっと普通になってきたと思ってたのに」


 リーンベルさんはため息交じりで怒っている。

 よかった、黒いオーラが消え去った。

 この地に平和が訪れたよ。


「お姉ちゃん、パーティ申請」


 スズちゃんはマイペースだな。

 姉妹だから堕天使に慣れているのかもしれない。


「タツヤくんもギルドカード出して?

 パーティ受付するから」


「えっと、大丈夫なんですか?

 僕まだEランクですけど」


 こんな可愛い子とパーティを組めるのは嬉しい。

 でも、彼女はBランク冒険者だ。

 僕は荷物持ちと料理ぐらいしかできないからね?


「スズなら大丈夫よ。

 Bランク冒険者で有名な子だから。

 Bランクパーティがする依頼を単独でクリアしてるくらいよ。

 悪い子じゃないし安心して」


 何それ、チートキャラじゃん。

 異世界転移した僕が激よわなのに。ずるい。


「そ・れ・に! 君がまたオークに突っ込んでも大丈夫なようにスズといた方が安全なの!

 だいたいアイテムボックス持ちなんだから、高ランク冒険者と一緒にいるべきよ!」


「わかりました! すいません!」


 潔くパーティ申請を承ります。

 リーンベルさんの判断に間違いはありません。

 リーンベルさんのいうことを聞けば幸せになれるという言い伝えがあります。

 大人しくしておきましょう。


 僕は今から荷物持ちの料理人になります。

 スズさんの立派な付き人を目指そう。

 なんたって、リーンベルさんの妹だからね。

 姉妹に好かれるっていう、最高のルートを通りたい。


「パーティ名は決めてある?」


「クッキー」


「な、なんでクッキーなの?」


「おいしかったから」


 その時だ!


 突然、目の前に野生のサブマスが現れた。

 スズちゃんの『クッキー』という言葉に反応したようだ。

 跪いて両手を差し出している。


 仕方ないので、クッキーが100個入った箱をサブマスに手渡す。

 泣きながら喜んで帰っていった。


 クッキーの強奪にあったのは初めてだ。


「クッキーはまた今度作ってあげるからやめよう。

 今みたいに危険を伴う可能性がある」


「……タツヤが作った?」


「うん、そうだよ。お菓子作りは得意だからね」


「クッキーよりおいしいの作れる?

 どんなの作れる?

 あの黒い濃厚なのは何?」


 無表情なのに目が輝いている。

 なんだこのキラキラしている目は!?

 浄化されてしまいそうだ。さすが天使の妹。


「黒いのはチョコレートって言ってね、いっぱい持ってるよ。食べる?」


 試しに【調味料作成】で板チョコを作って渡してあげる。

 スズちゃんは一口食べると、嬉しそうに食べ続けている。無表情だけどね。

 でも、リズムよく左右に揺れて食べているんだ。

 リーンベルさんにも渡すと、同じように揺れだした。さすが姉妹だ。


「クッキーよりおいしいとなると『フォンダンショコラ』とか『ガトーショコラ』とか『ショコラケーキ』とか……」


「パーティ名『ショコラ』にする。決定。異論は許さない」


「えっと、スズちゃん?」


「スズでいい」


「えっ?! いや、あの、スズちゃん?」


「スズでいい。異論は許さない」


「あ、はい。ス、スズ」


「うん」


 成り行きを見守っていたリーンベルさんは苦笑いをしている。

 もっとカッコイイ名前にしなくてもいいのかな。

 ちょっと恥ずかしいパーティ名に感じるよ。


 それにしても……リーンベルさんとスズ。

 どっちにも逆らえない気がする。

 この姉妹の手の上で転がされることになるんだろうか、嫌いじゃないけど。


 むしろ、もっと姉妹の手の上で転がされt(自重



 その後「料理もできる?」と聞かれて「できるよ」と答えたら、スズの目の色が変わった。

 解体場でオークの解体だけお願いして、すぐに市場へ向かって引っ張られていく。

 さっきまでほのぼのしてたのに、急にキレのある動きですごく強引だ。


 こういう強引な展開……好き。

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