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リーンベルさんと初デート1

- 翌日 -


 ついにリーンベルさんとデートをする日がやってきた。


 スズは言う、「大丈夫、お姉ちゃんがリードしてくれるから」

 シロップさんは言う、「ベルちゃんがリードしてくれるよ~」

 フィオナさんは言う、「彼女についていけば大丈夫ですよ」


 みんな僕のことをしっかり理解してくれて嬉しい。

 待つ専門だから、リーンベルさんにしっかり弄ばれようと思うよ。

 今日も自分らしく一切攻めず、成すがままにされてくるね。


 3人に見送られて、ギルドの方へ歩いていった。

 すると、すでにギルドの外ではリーンベルさんが待っていた。


 僕に気付いてリーンベルさんは、ニコッと笑いながら駆け足で近付いてくる。


「もう、遅いよ。何してたの?」


「ご、ごめんなさい」


 これが待ち合わせというやつか!

 僕のことを考えながら待っててくれたと思うだけで、嬉しくて心拍数が加速する。


「ほら、早く行くよ」


 リーンベルさんは僕の手をギュッとつかんで歩き始めた。


 急なガチのデート展開に大混乱だ。

 19歳のリーンベルさんという大人の女性に手を繋がれて、デートをしている。

 恋人繋ぎじゃないから手汗は出ないけど、すごくドドドドってする。


 手を繋いで歩いてるとはいえ、僕は身長140cmしかない。

 だから少しだけ見上げるような形で、リーンベルさんの顔を見ることになる。

 それが改めて自分は子供なんだと自覚し、年上のお姉さんとデートしていると実感する。


 挙動不審になって歩いていると、リーンベルさんは立ち止まって、僕の顔を覗き込んできた。

 手を繋いで見つめられると、心臓が爆発しそうになるからやめてほしい。


「心臓……大丈夫?」


「爆発しそうですよね、でも大丈夫だと思いますよ」


「爆発する前にちゃんと言うんだよ?

 ちょっと慣れるまでこのまま歩くから」


 普通にデートしてるだけなのに、爆弾を持っているような気分になるよ。



- 1時間後 -



「ねぇ、いつになったら心臓落ち着くの?」


「うーん、多分治まることはありませんね。

 これよりワンランク上になると、心臓がヒエーって雄たけびを上げるんですよ。

 それを越えると、なぜか心停止しても生きているっていう現象が起こります」


「そういうのは早く言ってよね。

 1時間も歩いちゃったじゃない」


「ご、ごめんなさい」


 さすがリーンベルさんだ。

 今の意味不明な説明を迷わず受け入れてくれた。

 逆に僕が驚かされてしまったよ。


 リーンベルさんは少しふくれっ面でギュッと手を握り、南門から外に連れて行ってくれた。


 向かうのは、以前ゼリーをみんなで食べた湖に違いない。

 確かにあそこなら人は少ないし、ピクニックみたいな雰囲気でデートには最適。


 でも、僕は護衛できるような立派な冒険者じゃない。

 一応Cランクだけど、戦闘力は圧倒的に低いから。


「リーンベルさん、魔物も出て危ないですよ」


「大丈夫だからついてきて。

 昨日ボディガードを雇ったから」


 リーンベルさんが指を差す方向を見てると、スズが『任せろよ』と言わんばかりの不敵な笑みを浮かべていた。

 デートを監視されてるようで、恥ずかしい気もするけど。


「右耳を噛まれたけどね」


 あっ、そういう契約をしたんですね。

 ぼ、僕も噛ませてもらっても……あっ、いえ、噛んでもらいたい派でした、すいません。


「ギルドは大丈夫だったんですか?

 いきなり午後から休みもらって」


「今まで有給とか使ったことなかったからねー。

 今日の午後だけ休むって言ったのに、明日も休みになっちゃったよ。

 だから全然大丈夫かなー。

 なんだったら……明日もデートする?」


 なぜこんなに積極的なんだろうか。

 今までリーンベルさんと、こういう展開になりそうでならなかったのに。

 何度か脈アリ展開もあったけど、ことごとく誤解で終わってたからね。

 それなのに、追加デートまで誘われるなんて。


 ……はっはーん。読めたぞ。


 これはからかってるな。

 さすがの僕でも気付いちゃうよ。

 何といっても、僕はこれで人生2度目のデートだからね。


 経験者は違うんですよ、経験者はねっ!!


「僕は単純なんですから、からかっちゃダメですよ。

 すぐに本気にしちゃうんですから」


「別にからかってないんだけどなー。

 ちょっと君を独り占めしたいなって思っただけだから」


 ……おい、誰か警察を呼んでくれ。


 何が起こっているのかわからないんだ。

 これはスタンピードの前兆か?!

 言葉の意味は理解できても、受け入れることができないんだ。

 憧れ続けてきたリーンベルさんに、嬉しいことを言ってもらっている。


 でも、なぜだろうか。

 僕は幸せよりも疑心暗鬼になっている。


 彼女が本当にそんなことを思っているのかわからないんだ。

 リップサービスじゃないのか。

 おいしいごはんをこれからも食べたいから、彼女は機嫌取りをしているのではないだろうか。


 それだったら大成功だよ。

 今すぐ新しいホロホロ鳥料理を作り出して、提供してあげたい気分だもん。

 嘘でもいいから、もっと言葉にしてほしい。


 混乱と興奮でおかしなことになりながら歩いていくと、湖に到着した。

 リーンベルさんはしゃがみこんで、隣に座るようにジェスチャーを送ってくる。

 スズ以外誰も見ていないけど、妙に恥ずかしく思いながらも腰を下ろした。


 少し遠いと思ったのか、僕の方に詰めてきたリーンベルさんは、そっと肩に手を回してきた。

 ゆっくりと僕を傾けるように倒していき、何かの上に乗せられる。




 今日は異世界が崩壊する命日なんだろうか。

 理解できないことが多すぎる。


 前方にある壮大な湖がなぜか横を向いているんだ。

 目線を落とすと見える、天使の膝が意味するもの。



 こ、これは、まさか……。

 カップルが行う伝説の行為、『膝枕』なのか!!




「ほら、もっと力を抜いて。

 体がガチガチ過ぎて反りかえってるよ」


 そんなこといっても、力を抜けるようなシチュエーションじゃないよ。

 いま僕を持って釘を打ったら、立派なトンカチになるくらい全身が固まっているんだ。

 もし、リーンベルさんの趣味が書道なら、僕をブンチンにしてほしい。


「いきなりこんなことしたら、誰だってこうなりますよ。

 僕の生まれた世界だったら、軽犯罪になりますからね(?)」


「ただの膝枕でしょ。

 耳掃除してあげるから、もっとダラーンとして」


 み、みみ、み、み、耳掃除のオプションまで付いているんですか!

 初めての膝枕に初めての耳掃除だよ。

 異世界では、こんな積極的なデートが当たり前というのだろうか。


 まだ初デートだっていうのに攻めすぎだろう!


 普通は手繋ぎデートから初めて、お互いの心を縮め合うものだと、小学校の頃に教えてもらったぞ。

 スズだって、初めてのデートでここまでやってこなかった。

 でも、リーンベルさんはスズより4歳も年上の大人の女性。

 これが大人の余裕から生まれるデートテクニック、通称テクニシャンと呼ばれる人種なのか。


 リーンベルさんはガチガチに固まった僕に業を煮やしたのか、風魔法を唱えてきた。


 ふーーーー


「あぁーーーっ?!」


「もう、大袈裟なんだからー。

 耳に息を吹きかけたぐらいで、大声出さないでよ」


「耳ふーなんて最強クラスですからね。

 価値観が違いすぎるんですよ。

 料理で例えると、今のはから揚げでしたよ」


「ごめんね、それは最強だった」


 共通の話題があって助かったよ。

 価値観を共有するのに、最適な発言をしたと思う。


「でも、このままじゃできないから、もっとリラックスして」


 リーンベルさんは僕の横腹に手を添えて、ゆらゆらと揺らし始めた。

 赤ちゃんがあやされているみたいで恥ずかしいけど、自然と落ち着いてしまうのが不思議だ。

 これが天使の特殊能力なのかもしれない。


 しばらくそのまま揺らされていると、力が抜けきって、よだれを垂らしそうになっていた。

 何とかよだれが太ももに垂れることを防いでいると、リーンベルさんが揺らすことをやめる。


 そして、僕の耳を片手で軽く引っ張り、綿棒で攻め始めてきた。


 最初は耳の穴に入れず、周りを優しく綿棒で撫でられていく。

 この時点で極上の癒しであり、自然と目を閉じてしまうのも仕方がない。


 あまりの心地良さに耐え切れず、リーンベルさんの膝をつかんでしまう。

 ちょっとヒンヤリしていると思いながらも、怒られないのでセーフの範囲だ。


「穴に入れるからねー」


 なんかすごい意味深な発言をした気がするので、念のため脳内メモリーに保存した。


 リーンベルさんはそのまま優しく綿棒を耳の穴の中に入れ、クルクルと回しながら耳掃除を始めていく。

 ゴソゴソと聞こえる綿棒の音に、体の自由が奪われてしまうような感覚に陥った。

 全意識が耳に集中してしまい、綿棒が出たり入ったりする心地良い感覚に、だんだんと心が支配されていく。


 一度穴から綿棒を取り出したリーンベルさんは、今度は耳かきに変えてきた。


 再び穴の中にやってきた耳かきは、先ほどよりも鋭い刺激を送ってくる。

 ゴリゴリと言う音を立てるものの、痛みはなくて心地良い。

 もう1歩も動く気になれず、このまま永遠に耳掃除をされていたい。


「大きいのがあるから、動かないでね」


 どうせならロープで拘束して動きを止めてほしいと思いながら、リーンベルさんのゴリゴリ攻めに耐え続ける。


 ゴリッゴリッ……と、こびりついたものを引きはがすため、耳の角度が何度か微調整された。

 ちょっと強めに響く耳かきの音が刺激的で、リーンベルさんが小声で「うーん」と唸っているのが堪らない。


「あっ、取れた」


 大きな耳クソが取れて喜ぶリーンベルさん。

 もっと頑張ってへばりついて欲しかったと思う僕。


 幸せだった耳かきが終焉を迎えるとき、ふわふわしたあいつが耳を襲ってくる。

 耳かきの反対側に付いている、ぼんてんが耳の中に入れられ、ゴソゴソと仕上げのお掃除をされてしまった。


「はい、次は反対になって」


 リーンベルさんの操り人形のように、無の境地で反対側になる。

 すると、目の前には服で見えないけど、ヘソがあることに気付く。


 天使のお腹が目の前にあるんだ、服越しだけど。

 大きく目を見開いて全力で横を見ると、程よく膨らんだおっぱい様が視界に入ってくる。


 いったい僕にどうしろというんだろうか。

 経験豊富なお姉さんは刺激的過ぎるよ。


 だが、リーンベルさんはお構いなしだ。

 再び綿棒で耳掃除を始めてくる。


 紳士のマナーとして目をつぶるべきなんだろうか。

 欲望のままに目を開けて、リーンベルさんのお腹を透視してもいいんだろうか。


 どっちだ、どっちを選んだらいいんだ?!


 耳の穴に綿棒が入れられた時、僕はすべてを理解した。

 心地良くて自然と目を閉じてしまい、見ている余裕なんてなかったんだ。


 僕は反対側の耳も同じように掃除され、とても心地いい時間が過ぎていく。

 順調に耳掃除が進んでいくと、リーンベルさんは押し殺したような声で囁いてきた。


「あっ……おっきい~」

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