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初めての恋人 彼女やけくそのワンナイトラブ

 初めての恋人は、同郷の同い年の女の子でした。その子との一番の思い出は西宮市のタイ料理のお店でデートしたことです。2回生のころです(関西の学生は2年生を2回生といいます)。


 体育会の彼女は、笑顔の素敵な社会学部の学生でした。


 まだ、食べログやぐるなびのなかった頃、口コミで知ったその店はとてもおしゃれでアジアンテイストの内装でした。


 店の方が、トムヤムクンの効能を説明してくれて、辛さを日本人向けにしてある、と言っていました。



 その子は、高校時代の恋愛を引きずったまま、遠く離れた兵庫に下宿が始まったとのこと。多少やけくそでボクとデートしたようです。


 女性は、男性の元カノのことを聞くのはイヤらしいですが、男性は(少なくともボクは)女の子の元カレの話を聞くことは苦痛になりません。


 彼女の元カレは、高校の理科の先生でした。先生の方は結婚を意識するほど真剣交際のつもりだったのですが。彼女は地元を離れて下宿することになり、先生は県内に残ってくれるものと思い込んでいて、現役女子高生だったその女の子とコミュニケーションギャップがあったのです。先生の真摯な愛情を知ったのは、兵庫に移り住むことを先生に告げたその時だったようで、『なんで関学に来ちゃったんだろ(T^T)』と彼女はひどく落ち込んでいて、タイ料理のあとに2軒目、3軒目とお酒が進んで、ちょっとやけくそになっちゃったみたいです。

 そのあと二人、泥酔でボクのアパートに流れ込み、男と女の関係になりました。彼女には内緒だったけどボクは、それが初体験でした。


 やけくその恋など続くはずもなく、結果ワンナイトラブになりましたが、悲しみにせつなさに満ちた彼女の表情は、造形以上に美しかったです。


 彼女との数ヶ月のお付き合いの最後の別れ文句は、

「そんなに優しくほほえまないで…」

でした。


 「そんなに優しくほほえまないで…」

90年代の神戸は、未熟な二人にあまりにも優しくほほえみかけていてくれていたのでした。

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