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はじめての異世界召喚 3

さぁ、狩りの時間だ!!

「「「「「は…?」」」」」


誰もが最初にその光景に対し、それしか言えなかった。無理もないだろう、体格がいいとはいえたかだか男1人の片腕で何倍もの体躯をしているドラゴンの前足による振り下ろしを止めたのだから。それに加えてドラゴンの前足が止められて硬直している隙に、乗っている者もドラゴンもろとも燕尾服を着た青年によって蹴り飛ばされ近くの木に体を強かに打ち据えていた。


「好き勝手言いやがって。ここで死ねだ? 上等だ、殺れるならやってみろ。こっちが殺ってやるよ」

「……!(ゴキゴキ)」


蒼介は自分の肩に手を置いて腕を回しながら瞳を蒼く変化させ、燕尾服の青年は光を宿していない目を見開きながら首を鳴らしていた。双方ともかなりご立腹のようだ。


「鍛えてるな、どんな鍛錬をすればあんな風に…」

「鍛えてるって次元じゃないだろ…!? ドラゴン相手に勝つとか何モンだアイツら…!?」

「遅いぞ、何があった―――――って、ホントに何があった!?」


甚平の少年は現実逃避気味なことを言っているが、眼鏡の少年はすかさずツッコミを入れ一緒にいた2人を驚愕と警戒が入り混じったかのような視線を向ける。金髪の少年が遅いことに疑問を持ち戻ってきたが、その光景を見ることで他の面々と同じような反応をする。


「俺が先に行ってる間に何があったんだ?」

「アイツらが迫って来た竜を素手でボコボコにしたんだよ」

「マジか…」

「本当だ、見てみろ周りの反応を…!」


先ほどの光景に警戒してか2人の怒気に怖れを抱いたのか分からないが、命がけの鬼ごっこをしていた鬼たちは襲い掛かろうと武器を抜きながらも一定の距離を保っている。


「どうしたよ、来いよ。殺すんだろ、ホレホレ」

「……(クイクイ)」


2人は相手を小馬鹿にするように煽って挑発し、燕尾服の青年は手の平を上にして人差し指だけを動かして来いと挑発する。


「小僧どもがバカにするなァァァァァァァァァァ!!」


挑発によって何人かが釣れるが、2人はすげなく無力化して意識を断ち切る。


「俺たちもやるぞ…!」

「行くのか…」

「あんなの見せられたらなぁ…」


甚平の少年がやる気を出し、眼鏡の少年が疲れたように息を吐き、金髪の少年が苦笑いをする。


3人は2人に近づいて行き、2人の足元で伸びている兵士の装備をはぎ取り――――――――――もとい、拝借した。甚平の少年は剣を、眼鏡の少年はナイフを二振り、金髪の少年は戦槌をそれぞれ手に取る。


「何だ、さっさと先に行かないのか」

「……(フゥー)」

「あんなの見せつけられたら引けないだろ」

「まったく、厄介なことになったものだ…」

「終わらせてさっさと行くよ」


先に戦っていた2人は呆れながら、あとから加わった3人は苦笑いしながら会話する。そんなことをしながらも蒼介はあることに気づいた。


「そういや自己紹介してなかったな、青鬼蒼介だ」

榊 優志(さかき ゆうじ)、執事見習いだ』

「榊 優志だそうだ、オレは立花京平(たちばな きょうへい)

「スレイ・アルストだ」

「フランツ・スミス・アイゼンブルグだよー」


それぞれ自己紹介が終わり、全員が敵に向かって歩み出した。


蒼介たちが近づくたびに敵に緊張が走るが、そんなことは知ったことではないとばかりに蒼介たちは少しづつ歩く速度を上げていく。


「迎え撃て! 敵はたった5人だ! 取り囲んで串刺しにしてやれ!!」

「上等だ、やってみろ…!」

「……!」

「やれやれ日本刀が…イヤ、せめて片刃の剣がだったらよかったんだがな…」

「何だそりゃ? 大概の武器なら作れるぞ、俺」

「というかこれが終わればな…」


敵の指揮官(?)の言葉に蒼介が言い返し、優志も蒼介に同意するように拳を構える。京平は自分の手にしている得物に若干の不満があるのかぼやく。フランツは気負った様子もなく軽口を叩き、スレイはうんざりするように大量の敵を前にして溜息を吐いた。


そして、ついに5人対敵の軍隊が激突した。その結果—―――――――――


「一体何なんだ、コイツ等は!?」

「奴ら何を呼び出した!?」

「距離をとれ! 距離をとって魔法を打ち込んでやれ!!」

「駄目です! アイツ等魔法を打ち落としているばかりか、魔法が直撃しても効かないヤツもいます!!」


――――――――――大多数の軍隊が少人数に蹂躙された。


「オラオラ、どうした! 殺そうとしといてこの程度か!? ぬるいぞォォォォォォォォォォ!!」

「…!(フッ!!)」(ゴシャッ!!)

「一対一なら! まだしも! 乱戦なんて! 経験したこと! ないから! キツイ! しかも! 魔法まであるとか! 冗談じゃない!!」

「なら仲間から離れて、長物振り回せば何とかなるぞ!!」

「オイ、フランツ! そんなこと言いながら、巻き込まれそうなんだが!?」


蒼介は敵の落とした斧槍(ハルバート)を拾い上げて敵陣に一直線に飛び込み、的確に相手の持つ武器を破壊した上で意識を刈り取り戦闘不能にしながら走り回る。

優志は素手で武器を持った相手と渡り合い、鎧の上から拳を叩き込む。その一撃で敵は悶絶し、その鎧には拳の跡が深々とめり込んでいた。

京平は乱戦をしたことがないと言いつつも、的確に一人ずつ戦闘不能にしていく。他の面々とは違い戦い方に派手さはなく乱戦に対してたどたどしくもあるが、そこに危うさは見られない。

フランツは蒼介と同じように敵陣に飛び込み、戦槌を振り回して敵を薙ぎ払う。まれに敵がフランツの猛攻を潜り抜けて懐に潜り込んで害そうとしてくるが、獰猛に嗤ったフランツの拳や蹴りの餌食となった。

スレイはフランツの攻撃に巻き込まれそうになりながらも紙一重で回避し、両手に持ったナイフで敵の足をナイフで傷つけて行動力を奪っていく。


こうしてしばらくしたところで、5人と敵の大群の襲撃は終局を迎え――――――――――



――――――――――蒼介たちにとって、異世界での最初の戦友であり悪友ができた瞬間であった。

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