帰還 その2
4人は並んで帰りながら、今回の転移について話していた。
「で、そこから別の世界に行った」
「あー、それはいい人だったな」
「しっかし、世界を救ったのに対しての対価が飯一食分とは安すぎでしょ」
「まぁ、いいんじゃないの? 蒼介だし」
そんなことを話し合いながら、それぞれ分かれようとしたときにそれは起こった。
「…ハァ、厄日か」
「またかよ…」
「よっしゃ、デストロイの時間来たー!!」
「悠は相変わらずの反応だね…」
目の前には30人程の黒服の男たちが行く手を塞いでいた。その様子に蒼介は溜息を吐きながら俯き、刃は額に手を当て空を仰ぎ見る。悠に至っては目を輝かせ、それを緋燕は疲れたように笑いながら顔を向ける。
「一応聞いておくが、アンタらの目的は?」
「…そこにいる青鬼蒼介に用がある」
刃が質問をして、返ってきた答えに対して呆れたあとに残念な者を見る目をする。
「モテモテだねぇ、蒼介~♪」
「男にモテても嬉しくないだろうけどね…」
軽く言いながら悠は笑い、緋燕は苦笑いしながら相槌を打つ。しかし、その後に刃と同じような視線を黒服たちに向ける。そして緋燕が口を開いた。
「悪いことは言いませんから帰った方がいいですよ、お兄さん方。今の蒼介は色々と危ないんで逃げた方が最善です。」
「てかまだいたんだな、こういう絶滅危惧種通り越した保護指定種が」
「オイオイ、ここにいるだろ?」
「お前は例外だ、悠」
好き勝手に言われているが、相対する黒服たちは何も言わない。いや、何も言えないと言った方が正しいか。何故なら蒼介が向けてくる光を灯していない視線と重圧するかのような雰囲気に気圧されているためである。
彼らはそれぞれ荒事に対する経験は豊富であるが、ここにいる面々の中で一番の危険人物は蒼介だからである。たかだか高校生一人を葬るだけで人生を遊んで暮らせるだけの報酬を受け取れるということに目が眩んだだけの俗物が勝てるはずがなかった。
「ククク、今日はもう厄介ごとは腹いっぱいだっていうのにどこのどいつだこんなめんどくさいモンを寄こしやがったのは…。いいよ、やってやるよ、殺りゃいいんだろ、殺りゃ。上等だ来いやオラ…」
蒼介は眼の光が消えた状態でケタケタ笑いながら物騒なことを呟いていた。それに対して刃たちは敵ではないのに蒼介を怖れていた。それと同時に黒服たちに心の中で合掌していた。
「流石の僕もあの状態の蒼介とタイマンはしたくないなー…」
「悠でも怖いものってあるんだな」
「というか早く巻き込まれる前に逃げるよ!!」
蒼介の瞳の色が黒から蒼に変化し、ただ乾いた声で宣言した。
「さぁ、絶望の時間だ…!!」