はじめての異世界召喚 41 王国vs帝国 4 魔王の宝物庫
遅れて申し訳ございません。現在、仕事で新しいことを覚えている最中でして、書く暇がありませんでした。
優志が出した門に入って行くのは、持ち主である優志に加え、蒼介、スレイ、そして王国王女の三姉妹である。奥に進んでいる間にヴェロニカはしきりにこの場所について聞いてくる。それもそのはず、門の中に入ってから見たものは先を見通すことが出来ないほどの廊下と、その左右に等間隔に続いている扉である。その廊下を6人はずっと進んでいる。
「はー、まさか優志がこんなモノをもってたなんてねー」
「やはり蒼介さまだけでなく、優志さまも魔法とは違う不思議な力をお持ちだったのですね」
「すごいね、一体どこまで続いているのやら…」
「曰く、本人ですら把握しきれてないようだが。しっかし、本当に父親が相当強欲だったようだな。あんなモンまで入っていたとは…」
「確かにアレには引いたな…」
「ホントにな…。俺も大概荒稼ぎしたが、何をどうすればあそこまで…」
最後列の男二人は何やら遠い目をしている。そのことに興味を持ったコゼットは後ろに下がり、遠い目をしている理由について聞いてくる。
「ねぇねぇ蒼介さん、スレイさん、一体ここで何を見たの?」
若干目を輝かせながら聞いてくるが、野郎二人は乾いた嗤いを顔に張り付けたままである。しかし、蒼介の方の嗤いは若干暗黒面の割合が強い。その笑みを見てコゼットは地雷を踏んだと確信した。
「聞きたい?」
「や、やっぱりいいかなー…」
「そう言わずに聞けや」
「そ、蒼介さん…? 何でそんなに強く肩を掴むのかなー…?」
コゼットはサバンナでライオンに目を付けられた小動物のように小刻みに震える。そんなコゼットに対して、蒼介は眼の光と嗤いすら消した顔で言う。その双眸と口に当たる部分にはただの黒い穴が開いていた。
「逃がさないためだよ」
コゼットの肩に置かれた蒼介の手は万力の如く相手を掴んで離さない。まるでその様子は冥府から逃げ出そうとする逃亡者を拘束するする冥王の御使いのようである。早い話が蒼介はどうやったのかは不明だが、ホラー映画に出てきそうな顔をしている。
コゼットは蒼介の言葉を聞いて絶叫した。その声を聞いて姉姫たちは「何事!?」とばかりに高速で振り返る。
「イヤァァァァァァァァァァ! 姉さんたち助けてェェェェェェェェェェ!!」
「何々、どうしたの!?」
「蒼介さんが! 蒼介さんが、得体の知れない恐ろしい顔に!」
「得体の知れない恐怖って…」
「ほら見てよ!」
そう言ってコゼットは蒼介を指差すが、二人の姫が蒼介の顔に向けた時には普段通りの蒼介の顔がそこにはあった。蒼介の顔を見てコゼットに視線を向けながらため息を吐く二人。
「あ、アレ? 戻ってる?」
「コゼット、アンタがイタズラ大好きなのは知ってるけど、一応この国にとっての恩人なんだから。こんな時に蒼介をダシにしてイタズラするのはやめなよ」
「嘘じゃないから! 本当のことだから!」
「普段通りの蒼介さまじゃありませんか。蒼介さまが恐ろしい顔をなさるのはフランツさまが蒼介さまを怒らせた時だけですよ?」
「それもそうだけど、本当なんだってば!」
呆れた顔をしている姉二人の服の裾を何度も引っ張りながら蒼介を指差すコゼット。その顔は少し涙目である。普段の飄々とした態度はどこへ行ったのであろうか。コゼットがそんな風に絶叫していると――――――――――
――――――――――パンッ!!
優志がいつの間にか後ろを向いていて、据わった目で手を叩き鳴らした。
「…!」(ビッ! ビッ!)
優志は自身の口元に親指で線を引いた後にその指で自分の後ろを指した。
「黙ってついてこいってことね…」
「少し騒ぎ過ぎましたか」
「そうだな。少し静かにしような、コゼット」
「私を騒がせた本人がどの口で…!」
「いいからもう行くぞ、お前ら。優志がキレると蒼介並みに厄介だぞ」
最後のスレイの言葉に三姉妹は一瞬固まったあとにゆっくりと優志の方へ首を回したあと、すぐさま横一列で並んだ。優志が三姉妹が静かになったのを確認してから再度歩き始めた。
「並ぶの早ッ。規律が厳しい軍隊並みだったぞ」
「それだけお前が怖かったってことだろ…」
「怖がらせたの俺じゃないよな?」
「怒り狂ってフランツをタコ殴りにしてた蒼介を優志が止めた時があったろ? そんな優志はある意味でお前と同格と言っても過言じゃない」
「あー、あったなそんなこと。だがなぁ…」
「何だ?」
次の蒼介の一言で優志以外の全員が硬直する。
「優志の方が多分強いぞ?」
「「「「ハッ…?」」」」
「俺の強みはただの頑丈さに任せた殴り合いだからな。多少は体術の基礎みたいなのは身内から習ったが、それからはほぼ独学の実践で鍛え上げたからな」
「ドラゴンを殴り飛ばしたアレで基礎だけって…」
「逆に優志は型ができてるって言えばいいのか? アレは正統派な戦い方だな。いくら崩そうとしても中々構えが破れない崩したとしてもすぐに立て直されるから、相手をしている方からすればかなり厄介だ」
「蒼介の腕力で崩せない上に立て直すってどれだけ硬いんだ…」
「優志の場合は硬いっつーよりも上手いって言った方が正しいな。いいのが入ったと思ったら実は何回も流されてたからな」
「どうやれば流せるんだよ…」
後ろにいる二人の会話に聞き耳を立てている三姉妹は、目の前を歩いている話題の張本人を見て顔を青くする。現在の三人の考えていることは、完全に同じだった。――――――――――まさか目の前のこの人もヤバイ人だったとは、と。
蒼介とスレイが話している内容を聞いていたのか優志が背を向けたまま、否定するように手を横に振ってくる。そして、優志の指先が光り――――――――――この世界の文字で空中に指を走らせて筆談した。
『違う、あの時は蒼介がフランツをとっ捕まえるために体力を使い切ってたから勝てた。それに、蒼介の方が強い』
文字が宙に浮かんでいる光景に三姉妹は驚愕する。
「な、何それ!?」
「魔法なのですか!?」
「スレイさんのは見たことあったけど、優志さんのははじめてだなー」
対して男二人の反応はといえば――――――――――
「相変わらず優志、書くの早いなー」
「というか優志、この世界の文字覚えたのか…」
優志が見せた現象よりも別のことについて驚いていた。そのことに対してヴェロニカは二人に詰め寄る。
「何でそんなに呑気なのよアンタら!」
蒼介はヴェロニカに対して淡々と「優志だし」と返した。スレイに至っては、鼻で笑いながら――――――――――
『俺だって似たようなことはできるんだよ』
と、氷で宙に――――――――――この世界の――――――――――文字を作った。
「うっわー、その顔腹立つー」
『ハッハッハ』
「口で言え!」
『怒っちゃヤダ』
「コロス…!」
「ハッ、やってみろ」
臨戦態勢を取り一触即発となったスレイとヴェロニカの戦いは――――――――――
「お、着いたみたいだぞ」
目的地に到着し、蒼介によって首根っこを掴まれて始まる一歩手前でその場は終わった。優志がドアを開け、その中に入っていく。他の面々もそれに続いて入っていく。
その部屋は果てしない空間が広がり、そこには金銀財宝に尋常ではない気配のする数多の武器に加えてジャンルを問わない美術品、何の文字で書かれているのか分からない本までがあった。その中心に一つの大きな丸テーブルと、それを囲むように丸イスがあった。
「前の部屋とは違うんだな」
『アレはただの食糧庫だったからな。今回は会議室ってところだな』
「円卓か、どこぞの騎士王みたいだな。まぁ、ここの主は悪魔みたいな面だが」
『悪人面ならお前も負けてないだろうが。あと、あんな悲劇的なモンと一緒にすんな』
そんな話をしている三人には目もくれずに、三姉妹はただそこにあるものに眼を丸くし、各々の反応を見せる。
「何、この武器は…。異様な気配が…」
「優志さまの世界の言語なんでしょうが、何と書いてあるのでしょうか」
「この絵とか壺とかいくらぐらいするんだろ?」
「気になるのは分かるが、そろそろ話をするから座ってくれー」
蒼介が散らばっていた三姉妹を呼ぶ。優志が上座に座り、男二人が席についたのを見て三姉妹も席に着く。優志が一つ溜息を吐いてから再び筆談をしようとして――――――――――やめた。そして、次の優志が行ったことに全員が驚愕した。
「とりあえず、ようこそ魔王の宝物庫へ。前の持ち主の息子である俺が歓迎する」




