はじめての異世界召喚 40 王国vs帝国 3
――――――――――戦争一日目終了、王国陣営にて
その日の戦闘が終了し、それぞれの軍は自身が所属する陣地へと帰還していった。そして、王国の幕舎では王国の三姉妹の姫たちが互いの情報を交換していた。
「負傷者はまだ全体の一割にも満たない上に、全員が軽傷。今夜中に回復魔法で治療すれば即日に戦場に復帰できる程度。ソフィー、そっちの被害はどうなってる?」
「城壁に大岩を直撃させられて、至るところにヒビが入りました。これ以上をまともに受けると本当に崩れ落ちそうです。幸い蒼介さまから貸与されたこの杖の力で、向かってくる岩を消し飛ばすことができたので今日は何とか持ちました」
「確かにアレは凄かったねー。岩がまた城壁に当たるところで私も肝が冷えたけど、何か光の柱が出てきて岩が消し飛んだところを見てそれ以上に驚いたよ」
「コゼット、気持ちは私も分かるがお前の方の首尾はどうだ?」
末姫のコゼットの言葉で脱線しかけた話をヴェロニカが引き戻す。それに対して、話を脱線させかけた当の本人は軽い態度で謝罪をする。
「おー、ごめんごめん。一応気配を消しながら、部隊長だと思う人とかを中心に狙って倒したよ。一応麻痺させて捕まえたから尋問するならそっちでお願いね。しっかし、この兜を使ったら今まで以上に楽に近づけたよ。蒼介さんには感謝しかないね。」
「えぇ、本当にその通りですね。この杖がなければ、私も今頃は瓦礫の下敷きになっていたでしょうし…。ですが、蒼介さまって何者なんでしょうか…?」
「ん? どういう意味?」
「いえ、京平さまが蒼介さまと優志さまは同じ国から来たとおっしゃられていたので…」
「ということは、京平さんと優志さんも何か特別な力を持ってるってこと?」
コゼットが京平と優志が何か持っていると考え、何か二人からもふんだくってやろうと悪い笑みを浮かべる。だが、コゼットの言葉をソフィーは否定した。そして、次の言葉で首をかしげることとなる。
「それが、京平さま自身は実家が剣術道場をやっているだけで何の力を持っていない一般人だと言っていたのです。その上、京平さまたちの世界は魔法というものはあってもおとぎ話の類での存在とのことで…」
「どういうこと? なら何で蒼介はあんな物をいくつも持ってる?」
「分かりません。ですが、今は後回しにしましょう。こんな強力な武器をお借りしているのですから」
ソフィーは昼に自分が使った杖をまじまじと見た後にヴェロニカの隣に立てかけてある刀、コゼットの前に置いてある兜にそれぞれ目を向ける。
「それもそうだな。王宮で私たちを守るだけでなく、母様の命を救ってもらった。そのうえで武器まで貸してもらってこれ以上は野暮だ」
「私もそれでいいと思うよ。というか、これ以上を要求したら何を対価にしたらいいか分かったものじゃないからねー…」
ヴェロニカは複雑な顔をする。一応は納得しているが、戦いが終われば絶対に問いただしてやるとその表情が物語っている。コゼットは乾いた笑いをしながら遠い目をする。どうやら普段蒼介に折檻されているヴェロニカだけでなく、彼女にも身に覚えがあるらしい。どうやら、この中で蒼介に何かされていないのはソフィーだけのようである。そして、三姉妹が真面目な顔をしたところで――――――――――
「それでは、明日についての――――――――――」
「「「「「「「「「「ワァァァァァァァァァァ!!!!!」」」」」」」」」」
「な、何ですか!?」
「敵襲!?」
「それにしては、何か楽しそうな声だったけど…」
天幕の外から大歓声が聞こえてきた。それに反応して三姉妹はそれぞれの反応をしながらも、急いで天幕を出て行き状況を確認する。そこで見たものは――――――――――
「追加分、完成ー。ってコラ、そこ! 取り合ってケンカすんな!」
「…」(タンタンタンタン)
「はいー、並んでー。列はまっすぐにー」
「早く終わらないかな、この作業…」
「言うなフランツ…、俺だってきついんだから。魔力持つかな…?」
戦場の陣地で料理をしている蒼介と優志に、給仕と列の管理をする京平、フランツ。魔法で水と氷を樽に溜めるスレイ。そして、長蛇の列を作る王国軍であった。
「何コレ?」
「配給ですかね…?」
「ソフィー姉さんその通りだけど、やってるのあの五人だよ!? しかもあの量で配給し続けたら、私たちが干上がりそうなんだけど!?」
兵士の一人一人が手に持っている料理の量と戦争に参加している兵士の数をコゼットは軽く暗算で計算して、悲鳴の声をあげる。コゼットのその言葉に姉姫たちはギョッとしたあとに急いで蒼介たちに詰め寄った。
「アンタら、何してくれてんの!?」
「いよっす女王が倒れてから以来で久しぶりだが立て込んでるんで後にしろ、バカ姫」
蒼介はヴェロニカを一瞥して、手を軽く上げただけで食材を切り分ける作業に戻った。
「いえ、今お願いします! そうでないと私たち、餓死しますから!」
「取り乱すソフィー見るのもはじめてだが、暇そうだから愛しの京平でも手伝ってろ」
「まっ!?」
必死に止めるように懇願した矢先に、蒼介の言葉によってソフィーは一撃で赤面した上で撃沈された。
「ちょっと本気でやめて、蒼介さん! 王国の備蓄がなくなるから!」
「大丈夫だって、コゼット。だってこれアイツらのだし」
「アイツら…?」
蒼介は帝国軍がいるであろう方向に包丁を向けて、何の気負いもなく言った。
「アイツら、帝国軍」
「ハァ!?」
すべての王国兵士に配給を終えた蒼介たちは、当然の如く王女三姉妹に説明を求められた。しかし、話を聞いていくうちに、どんどん三姉妹の背中が哀愁を帯びていった。
「えーっと、五人で帝国の食糧を保存している場所に忍び込んで? それで食糧を盗んできたの?」
「その通りだな。帝国の見回りが意外とザルで助かったわ」
なんてことのないように蒼介は言うが、他の面々はかなりいっぱいいっぱいであったようである。蒼介に非難の嵐が殺到する。
『何が助かっただ、バカ』
「こっちはいつ見つかって殺されるか、気が気じゃなかったんだけど?」
「そうだ! どうせ忍び込むなら女湯を覗ける―――――」
「フランツ、一応は真面目な話だから、殺されるような発言は戦争が終わったあとにしてくれ」
「何だよ、そんなこと言ってて割とノリノリだっただろ。特に優志と京平は口笛を吹いてただろ、ル〇ンのテーマで」
名指しで言われた二人は、とぼけた表情で顔を逸らす。蒼介への非難が収まったところで、また三姉妹が蒼介から聞きなおす。
「それで、どうやってそれだけの物資を運んできたの?」
「あー、それはな…」
蒼介は言ってもいいかと許可を得るかのように、気まずいといった表情で優志の方を向く。それによってその場にいる全員の視線が優志に集中する。そして、何の問題もないとばかりに気を抜いた表情で優志は指を鳴らす。
すると優志の少し後ろの地面が暗黒に染まり、その中から重厚な音を響かせながら扉―――――否、門が這い出てきた。優志は門の前に立ち、着ている執事服が様になっている一礼をしてから門を開いた。
「入ってもいいとよ」
「何なのコレは…」
「本人曰く父親から貰ったそうだが、相当な大富豪だったようでな。中を見たらもっと凄い物があった」
その場にいる全員が門の中へ入っていく―――――かに見えたが、京平とフランツは残るようである。
「俺はもう入ったからいいや、これ以上あんなの見てたらおかしくなりそうだ」
「京平に同じく」
「何なの一体? 何があるっていうの?」
「それは見た方が早いな、何せ――――――――――」
蒼介は優志の隣に立ち、一拍置いてから言った。
「世界のすべてを一度は手に入れた男の宝物庫だ」




