はじめての異世界召喚 39 王国vs帝国 2
皆さま、明けましておめでとうございます。
――――――――――戦場、帝国陣営にて
「意外と王国は善戦しているな」
「あぁ、意外に地力があるな。さっきの光の柱も気になるところだが、一日でここまで食い込んだ第一王女がアタシとしては気になるところだな」
後方で指揮をしているシーラとツバキは互いに肩を並べて戦場を見渡していた。
「こうなると物量で押し潰すことよりも引き込んだ方が楽か…」
「アレは引き込んだところで、くたばるようなタマじゃないぞ?」
「なら檻に引き込んだ後に確実に仕留められるようにすればいい」
「何をするつもりだ」
「何、ただ出番が来たということだ。ツバキ将軍、出てみるか?」
「…いいのか?」
「出ないのなら、私が出るが――――――――――」
「ハイ、アタシが出る! ヨッシャ来たァ!」
「見事なまでに態度が変わったな」
「当たり前だ、アタシにとっては将軍なんて地位は戦うためだけに得たモノなんだ! 後方で指揮するなんざ他の奴らに丸投げして、前線で部隊を引き連れて暴れてた方が性に合ってる!」
「私だからいいが、陛下や他の将軍たちの前では絶対に言うなよ…」
「分かってるって、そこらへんは弁えてるから」
ケラケラとツバキは笑いながら準備運動とばかりに背負った巨大な刀剣を抜き放ち振り回す。素人から見ればただ雑に振り回しているようにしか見えないだろう扱いだがその実、隣にいるシーラはゾッと寒気を感じていた。
(まったく、ツバキが味方で本当によかった。種族が鬼人族ということを前提に考えても、その実力は歴代の将軍と比べて段違いだ。逆に第一王女には同情したくなるな。私だったら、真正面からやりあうのは絶対に御免だ…)
シーラはそんなことを考えながらも、意気揚々とヴェロニカが暴れている辺りの戦場へ向かおうとするツバキの後襟を掴んで止める。
「言っておくが、第一王女を引き込む作戦は明日だぞ」
「え、今日じゃないのか…?」
「当たり前だ。先に各部隊への作戦の変更に加えて、お前が暴れるということも通達しなければならん」
「めんどくさいなー」
「…前回に出撃した際に、お前が暴れまわって敵どころか味方まで巻き込まれかけて死にそうになったと部下から報告があったんだがまた繰り返す気か?」
「ハイ! すいませんです!」
シーラから暗に前線に出さないぞと迫力のある表情で釘を刺され、ツバキは一瞬で委縮する。
「それに何か搦め手でも使われたら突撃思考のお前だけならまだしも、他の奴らが危ないんだが」
「あれだけ一日で切り込んでくる奴が、そんな手を使うか?」
「バカか、攻め込まれているのはあっちの方だからな。やけっぱちになれば、なりふり構わずどんな手でも使って勝ちに来るぞ。ましてや私のせいで怒らせたのだからな。ハッハッハ」
「胸張って笑いながら言うことじゃないな」
「胸など張ってない、開き直っただけだ!」
「なお悪いわ! っていうかそんなことを言う性格だったか?」
つい今朝方まで命令を遂行するためならどんな手段でも使うと思っていた同僚。もはやそれは幻想だったと思い知らされた今日という日のツバキである。
「私だってたまには冗談を言いたくもある。だが私が基本的に冗談を言える相手が言えると思うか? 話をするにしても会議ばかりで相手は冗談が通じない他の将軍に皇帝陛下、私を畏怖している部下ばかり! 挙句の果てに戦場を駆けずり回ってばかりで正体が露見して、ろくに街で一杯やることもできんのだぞ!」
「すまん、聞いたアタシが悪かったから落ち着いてくれ!」
鬼気迫る表情でツバキに詰め寄り、日々のストレスを語る。その様子に将軍の中で最も肝が据わっていると言われるツバキもタジタジである。
「まぁ、今回の失態で私は降格するだろうな。そうしたら少しは楽になれるかもしれないな」
「あー、いいな。私も一兵卒の時が楽でよかったよ。なのにいつの間にかこんな地位にまでなっちまって」
「それはお前が活躍し過ぎたからだろう、イヤなら断ればよかっただろうに」
「いやな、その時の上官が嫌味ったらしい奴でな…。偉くなれば気兼ねなくぶっ飛ばせると思ったんだよ」
「あぁ、成程な」
何ともツバキらしい理由だとシーラは乾いた笑いをこぼした。自分にもそんな時があったと笑いながら思い出す。しかし、今と何ら変わりないと思いなおした。
「今日はここまでだな、一度引き上げるぞ」
「もう少し削ることは難しいか?」
「削ることは難しくないが、あの第一王女にそれ以上が削られることになりそうだ。」
「確かに…」
「それに城壁を崩そうとした巨岩を消し飛ばしたあの光の柱についても警戒が必要になる。アレがこちらに向かってきたらそれどころではないからな」
「アレか…、何だったんだろうな」
「分からん。攻め込む前に過去の資料を隅々まで調べたが、可能性がありそうなカエラ・マグラ師でもあんな芸当は不可能だろう」
「あの炎魔にも不可能ってか…。ならアイツらは?」
「アイツら?」
「お前の竜を殴り飛ばしたってヤツらだよ」
「バカな、それこそ炎で消し炭にでもなっているはずだ」
「しっかしなー、こことは違う世界から呼び出されたって話だろ? 妙な力を持っててもおかしくはないと思うんだが」
「だとしても対策しようにも知らないのでは意味がない。だが警戒はしておくべきか…」
この時、シーラはツバキの言葉を軽く考えていた。それは後々大きな後悔となって返ってくることとは今は思いもしなかった。




