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はじめての異世界召喚 38 王国vs帝国

「はァァァァァァァァァァ!!」

「来たぞ、ヴェロニカ王女だ! 密集して迎え撃て!」


ヴェロニカが蒼介謹製の日本刀を片手に密集している敵に向かって切り込む。それを迎え撃つのは一塊となった帝国軍の中隊の軍勢である。突撃して来るヴェロニカに対し、帝国中隊は密集しながら長槍を前方に構えて迎撃の陣形を構築する。

しかし、ヴェロニカは構うことなく自身の正面に突き出された槍へと向かっていった。普通ならばこのまま槍に全身が貫かれ確実に死ぬことになるだろうが、この中隊にいる全員がそんなことは微塵も思っていなかった。むしろ少しでも突っ込んでくる者の力を削ぎ、後につなげるという決死の覚悟を決めていた。だが、その決死の覚悟も叶うことはなかった。何故ならば――――――――――


「甘い! その程度で私を打ち取れると思っているのか!」


ヴェロニカは自身に向いている槍の穂先をすべて刀で切り落とし、中隊に真正面から切り込んだ。そして、一瞬の空白が起きると即座に声を張り上げる。


「全体突撃! 私がこじ開けた穴から突き破れ!」

「「「「「「「「「「オォォォォォォォォォォ!!!!!」」」」」」」」」」


ヴェロニカの声に応じて突撃するのは、ヴェロニカ自身が鍛えた王国一の練度を誇る第一師団である。自分たちを率いる王女の声に従い、間髪入れずにヴェロニカが切り開いた穴から突入して敵の陣形を切り崩していった。


「これでいくつ目だ…!」

「十から先はもう数えてません、姫さま…」

「あぁ、もう! 数が多すぎてイヤになる!」

「それでも相手の主力の半分近くに切り込んだハズです」

「面倒な!」

「普通なら何日もかけて攻略するのです。一日でここまで切り込んだ姫さまの方がおかしいのです!」


中隊を蹴散らしたヴェロニカは敵の多さに苛立ちを隠さずに言い放っている。


「それに蒼介たちは何をやっている!? 私たちに武器を渡す代わりに好きにやらせろと言っておいて何故来ない!」

「今はそんなことを言っている場合ではありません、次の部隊が来ます!」

「考える暇もないか、悪いが八つ当たりさせてもらうぞ帝国軍! 私に続けェェェェェェェェェェ!」

「「「「「「「「「「オォォォォォォォォォォ!!」」」」」」」」」」


ヴェロニカたちは次の標的へと向かっていく。



「敵の魔力の活性を確認! 大規模魔法来ます!」

「余波に備えて障壁を展開してください、私が撃ち落とします!」


空から落ちてくる巨大な氷塊が城壁を襲う。それを迎え撃つのは蒼介から渡された杖――――――――――レーヴァティンを構えたソフィーである。


「はァ!」


レーヴァティンから巨大な火球が放たれる。その大きさは氷塊を軽く包み込むほどであり、比較するとなればパチンコ玉とソフトボールほどの大きさの違いがある。


「ソフィー殿下だけに戦わせるな、我々もやるぞ!」

「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」

「一斉放出! 城壁を破壊しようとする侵略者どもを薙ぎ払え!」

「「「「「「「「「「はァァァァァァァァァァ!!!!!」」」」」」」」」」


先頭にいる魔術師から鋭い声が放たれ、展開している王国軍の守備をすり抜けて城壁を破壊しようとしている帝国軍に向かって魔法が放たれる。放たれた魔法は魔法や道具を使って城壁を破壊しようとする帝国軍の女に大打撃を与え、戦闘不能にする。自分たちが城壁を守ったのだと、魔法を放った女たちは歓喜の声を上げる。


「「「「「「「「「「オォォォォォォォォォォ!!!!!」」」」」」」」」」

「気を抜くな! 次が来るぞ!」

「上から来る魔法は任せて下さい! 皆さんは城壁を守ることを優先的にお願いします!」

「「「「「「「「「「御意!」」」」」」」」」」


ソフィーは次々と襲ってくる巨大な氷塊を先ほどと同じように特大の火炎玉で撃ち落とす。何度も同じことを繰り返しているうちに、帝国軍が今度は氷塊ではなく大岩を落として来た。今まで氷塊が落ちてきていたため同じように火炎玉で撃ち落とそうとしたが、大岩は燃え残り城壁に激突した。その衝撃で城壁に亀裂が走り、帝国軍はその亀裂目掛けて再度大岩を放ってくる。

だが、大岩は城壁から突如放たれた光の柱によって、城壁へと当たる前に一片残さず消え去った。その光の柱の発生した場所にはソフィーがうつ伏せになりながらも上体を反らし、杖を伸ばしていた。


「危なかった、アレが当たっていれば城壁は完全に破壊されるところでした…」

「殿下、ご無事ですか」

「私のことはあとで構いません、皆さん! ここは絶対に死守しますよ!」

「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」


城壁に亀裂を入れられたために、ソフィーたちは後が少なくなることで逆に士気が上がっていく。



「うっはー、大丈夫かなソフィー姉さん…」

「姫さま、ここで声を出されては」

「大丈夫大丈夫、この乱戦でこれだけの声量なら聞かれないって。それにしてもさっきの光はどうやってやったのかな」

「恐らく蒼介殿が貸与してくれた杖なのでしょうが…」

「やっぱりそれしかないよねー」

「そろそろ接敵します」


コゼットは姿を魔法で隠しながら敵の部隊に近づいていた。元々真正面から戦うような才能も性格もなかったコゼットが神から与えられた魔法の属性は闇から派生した影である。その属性の特性は隠蔽と幻影を主に扱う言わばトリックスターや暗殺者のようなものである。現にこうして複数人で帝国の部隊に近づいても気づかれない理由もそこにある。それに加えて今回は蒼介が渡した道具――――――――――兜の効果で倍プッシュの状態だ。現在のコゼットは影が薄いと言えるレベルではなく、本当に存在していないというレベルで相手に気付かれていないのである。


「それじゃあ、お仕事開始ー」


コゼットは暗器を手に、目の前の部隊の指揮官にひっそりと近づいていった。

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