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はじめての異世界召喚 37 開戦の外側で

「始まったな」


戦場からほどほどの距離で離れた場所で京平が感慨深げに呟く。そんな京平の近くには蒼介しかいなかった。


「どっちが勝つか…、まぁ、普通なら帝国側だな」

「バッサリ言うなー」

「事実だ。それに言葉だけの慰めなんぞ何の役にも立ちやしないんだよ。ヴェロニカも相当な戦闘に関する才能とセンスもあるが、帝国側にも同じレベルの人間がいると何で仮定しない」

「だいぶ性格が変わったな」

「その性格を変えた張本人が何を言ってんだ」


京平は殺伐とした目を蒼介に向けた。京平の雰囲気は数日前の物と随分と異なり、触れれば斬るとばかりの剣呑さを表している。そしてその雰囲気を変えた張本人は悪びれもせずに言い放つ。


「僕は悪くない」

「どこぞの裸エプロン先輩か、テメーは!?」

「だってあのまま出してたらあそこで死んでたぞ?」

「その前に何度も殺されてるんだよ、俺の目の前にいる奴に!」


京平のその言葉は比喩や誇張ではない。事実、蒼介との数日間の追い込みで幾度も心肺停止、部位欠損、失血死などをした。ならば何故生きているのか。それは女王を死の淵から引きずり戻したアスクレピオスの杖を使うことで何度も蘇生を行い、起き上がったところで間髪入れずにまた追い込み修行に入る。そんなことを数日間ぶっ続けで行い、終わるころには京平の精神はすり減っているどころかごっそりと削られていた。しかし、そんなことを数日間とはいえ続ければ多少は強くなる。更に言えば元々の京平は才能はあった上に地力はある意味で出来上がっていたので、ただ生き残ればいいと考えていた蒼介は嬉しい誤算だと内心で喜んでいた。


「とりあえず横に置いといて」

「置いとくな、コラ!」

「ホレ、初陣の餞別だ」


蒼介は側に置いてあった包みを投げ渡す。京平は不機嫌な顔をしながらも受け取り、包みを開く。そこには見覚えのある刀と初めて見る剣が一振りずつ入っていた。


「これって七星刀…!?」

「おう、その通りだ」

「いいのかよ、こんなの渡して?」

「いらないのなら返せ」

「えぇー、そう来る…?」

「なら四の五の言わずに、受け取れや。そいつの効果は分かってるな」

「あぁ、目の前で見たからな。あの後、スレイが負けたって絶叫してたぞ」

「聞こえてたよ、あんなでかい叫び声聞こえない方がおかしい」


京平は蒼介と話しながら、渡された剣を鞘から抜いて確認する。そして、その剣は見た限りではただ何の変哲もない意匠をしていた。鞘も鍔も柄もただ灰色一色で統一されている。ただ、刀身を見た京平はただただ見入っていた。分かるのだろう、分からないはずがない。一剣士として手にしている剣がどれほどの業物かを見抜く程度には、京平はその高みにいる。

京平は固定されている視線を引き剥がすかのようにゆっくりと蒼介のいる方向に首を回しながら聞く。


「蒼介…」

「言っとくが、俺が一から作ったモンじゃないぞ。作り方を知ってそれを再現しただけで、俺のオリジナルの作品じゃない」

「だが、これだけの物を作れるってだけの技量があるってことだろ…?」

「それは違う、少しばかり裏技というか反則技を使っただけだ」

「だけど、それでも――――――――――」

「話は終わりだ、他のも来たことだしな」


京平の追及を断つかのように蒼介は声を上げた。蒼介の言葉の通りにこの場にいなかった三人が集まって来る。


『集まってるな』

「京平は何日か合わないうちにどっか変わってるな」

「蒼介…、京平に一体何をした」


三人は各々の反応をする。だが、共通して雰囲気の変わった京平に目を向けている。


「何をって、死なないための訓練を少し…」

「あれが少し!? 何度も殺されてるんだが!?」

「殺されて…!? え、でも京平は生きて…」

『察しろ、あの杖を使ったんだろ』

「アレ? でもあれって王国に貸し出したんじゃ」

「あぁ、スペアがあるから」

「スペア!?」

「何事も備えるべきだなー、特に回復手段は必須だからな、ハッハッハ」

「真顔で笑い声を出すな、気色悪い」

「そんなこと言っていいのか、スレイ? お前ら用にも装備持ってきたのに」

「何、マジか? お、京平が持ってるの七星刀だ」

「ホレ、お前らはこっちだ」


蒼介は足元に置いてあった包みをそれぞれに渡す。三人は渡された包みを開いて中身を確認し、振ってみたり装備するなどして感触を確かめている。


「…(シュッシュッ)」

優志は手甲を手にはめて空に正拳を放ち、満足そうにしている。


「いいな、コレ。やっぱし俺には剣なんかよりもこっちの方がよっぽどしっくりくる」

フランツは戦槌の柄の感触を握りながら確かめて不敵に笑う。


「それで俺は短剣が二本か、なんかフランツの装備が一番豪華じゃないか?」

スレイはそんなことを言いつつも手にした渡された短剣を新しく買ってもらった玩具を見る子供のように見つめる。


「そういや気になったんだが、これに銘とかないのか?」

渡された剣に感覚を馴染ませるように動作を確認しながら京平は蒼介に聞いた。


「銘…か、聞くととんでもない反応をしそうなんだよな」

「いいから聞かせてくれ」

「…分かったよ、そいつの銘は――――――――――」


蒼介の言葉を聞いて、京平と優志は言葉が出ないと言わんばかりに呆けた顔をした。その顔に疑問を持ったフランツとスレイは説明を求めて蒼介に聞いたが、また同じ顔が量産されることとなった。

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