はじめての異世界召喚 33 反撃準備3
王宮城内のとある場所、そこで五人の男たちは集まっていた。
「で、どうするんだお前ら?」
『愚問だな』
「右に同じく」
「というよりもこんなことを言ってること自体に意味があるのか?」
「ないだろうな…」
何故にこんな人気のない場所に五人は集まっているのか。それは少し時間を遡る――――――――――
蒼介はこれから起こる戦争に勝手に乱入することを決めた。はじめは戦争なんぞ勝手にやってろと考えていた蒼介だったが、王国が攻め滅ぼされた際に帰れなくなる可能性を考え即座に迎撃することにした。だが、今まで王国の騎士団の訓練に個人として参加したことはあるものの、連携などについてはしてこなかったためにアスクレピオスの杖を(一方的に)貸与してを作ることで自由に動けるようにした。
炎に包まれた瞬間を思い出し『あの女ぶっ潰す』と考えながら廊下を歩いていると、蒼介を待っていたかのように四人が並んで目の前に立っていた。
「…(ジロッ)」
優志は俺も混ぜろとばかりに目を光らせ――――――――――
「どうせ謁見の間みたいに、また一人で立ち回る気だったんだろ?」
京平は呆れたとばかりに溜息を吐き――――――――――
「俺たちだっていい加減に頭にきてんだよ」
フランツは光が消えた目をしながら笑い――――――――――
「そうでなくとも既に二回は殺されかけてるわけだしな…」
スレイは眼鏡の位置を直しながら、額に青筋を浮かべた。
既に全員が殺る気マンマンの狂戦士と化していた。
蒼介は考えた――――――――――『目がマジだ、どうすっべこれ』と。無視しようものならまとわり付かれる。下手に止めたら何をするか分からないと悟った。地元の悪友たち(蒼介自身も含む)と同じだと。断ったりなどしたら何をしでかすか分からない。
とりあえず人気のないところに集まることにした。そして、話は最初に戻る。
「とりあえず、ヴェロニカのところから予備用に余ってたのを(勝手に)持ってきた資料がここにある」
『それって』
「持ち出したらいけないやつなんじゃ…」
「いいんだよ」
「何が…?」
「悪ガキなんだから」
「イヤ、ダメだろ!?」
「というか、どうやって持ってきた…」
「企業秘密だ」
五人は床に座り、書類を広げる。そこには今までの帝国との戦争の経験が書かれていた。陣形の受け止め方から切り崩し方、そこからの攻め方などは多岐に渡る。その上、もしこちらの陣形が崩れたときの持ちこたえ方や立て直し方までもが乗っている。
「色々と載ってるな」
「…(コクコク)」
「というか本当にヴェロニカが書いたのか?」
「ウソクセー」
「普段がアレだから気持ちは分かるが、少しは信用してやれよ…」
ここでもヴェロニカの普段の評価がどれだけ酷いかが分かる一幕があった。しかし、今はそんなことよりも敵と味方の陣形についてである。
「暴れても邪魔にならない場所はどこかなっと…」
「…(ムー)」
「こことかどうだ?」
「こっちの方がよくないか?」
「それだと万が一突撃してきた王国軍の邪魔になるぞ」
五人はしばらくあーだのこーだの言い合いながらも作戦を練り、自分たちがどこに出るかを決めた。
「しっかし、コレでいいのか?」
「何がだ」
京平が蒼介に微妙な顔で聞いてくる。
「だってこれって王国が負けるの前提にした上で、王国軍に思いっきり顔に泥どころかヘドロ塗ることになるんだが…」
「元々が負け戦のつもりだったんだから、まだマシな方だろ」
「そうだぞー、いらない見栄張ってても何の得にもならんからな」
「…それで、本音は?」
フランツがケラケラ笑いながら言った後に、最後にスレイが質問してくる。蒼介が嗤い、フランツが嗤いながら言った。
「「帝国のアイツらに何度もやられて、一回も仕返ししてないから一発殴り返してやりたい」」
その様子を見て、優志が蒼介に筆談してきた。
『今更なんだが、蒼介って普通に笑えないのか?』
「無理だな」
即答であった。その会話を見て他の三人が盛り上がる。
「確かに蒼介が普通に笑ったところ、見たことないな」
「いつもは真顔か仏頂面だからな。」
『その上に目が死んでるから、人殺しの目にしか見えないしな』
「やっぱりアレか? 自称悪党だから笑わないのか」
「ハイそこー、黙ってろー。それよりも、だ…」
蒼介を弄り始めかけたところで、弄られかけた本人が待ったをかける。それもかなり真剣な目をして。
「他の連中はいいが京平お前、本当に参加するのか?」
「何がだ?」
「コレは戦争だぞ…」
「ん?」
「殺す覚悟はできてるのかって聞いてんだ」
蒼介が単刀直入に聞くと、京平の思考は凍結した。ようやくその可能性に気付いたかと、蒼介は内心で毒吐いた。
「俺と優志は自衛だが、もう地球で人殺しを経験してる。スレイも恐らくは経験者だ。フランツについては知らんが…」
「ほぅ、良く分かったな」
「俺も王太子になる前に盗賊とかに襲われて返り討ちにしたから、経験してるぞ」
「………」
蒼介の予想にスレイは舌を巻く。フランツも言うべきと考えて、自身も経験があると告白した。京平はそれを聞いて黙り込んだ。
「本当のことを言えば、俺一人で全部を片付けられる」
「ウソクセー」
「黙ってろ、フランツ。それでもお前らがこうして出てきたから、こうして譲歩しただけだ。それで、本当にこっちに来る覚悟はあるのか」
京平は葛藤する。そんな京平の前に蒼介は白木の鞘に納められた刀を背負っていた荷物から取り出して、京平の前に突き出す。
「それでもついて来るっていうのなら、コイツを取れ」
「………」
京平はただ自分の前に突き出された刀を見つめる。その手は震え、揺れ動いていた。
「…明日の夜まで待つ。それまでに決めろ」
蒼介は刀を背負っていた鞄の中に納め、部屋から出て言った。他の三人も京平に何も言わずに蒼介に倣い、退室する。京平はその場に座り込み、一人になりながら未だに葛藤している。
こうして、開戦まで五人は五人で準備を進めていたのだった。




