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はじめての異世界召喚 29 崩壊のあとに2

「何だコレは!?」

「とにかく一度離れろ!」

「何なんだ一体!?」


蒼介の腕が生えている瓦礫の山のある場所から距離をとる騎士団員たち。


「俺、思うんだ。蒼介が何かやったら驚くけど、受け止められる自信があるって」

「…(コクコク)」

「今度は何をするつもりだ、蒼介…」

「うーい、って何が起きてる!?」

(((このバカ王子は…)))


ようやく盾の私刑から解放されたフランツが駆けつけてくる。京平が軽く事情を説明する。


「なるほど、アレが蒼介の腕か…」

「どうなるか分からないぞ」

「何か出てるしなー…」


そんなことを話していると腕に再び変化が起こる。焼けただれた腕が徐々に黒く染まっていき、立ち昇っている蒼い何かも下から上へ夜空のように黒くなっていく。


「蒼介と優志って人間辞めてるって言ってたよな?」

「…(コクリ)」

「何か思い当たることとかないのか、優志」

「…(ウーン)」

「獣みたいに命の危機になると暴れまわるとか?」

「やめろ、フラグが建つ!」

「「フラグ?」」


京平が叫び、フランツとスレイが首を傾げた瞬間にそれは起こった。蒼介が生き埋めになっていた瓦礫の山が爆散したのである。瓦礫の欠片が部屋中に飛び散り、ボロボロだった謁見の間が更に無残な状態になる。


「…(ウォ!?)」

「これはまた派手な…。キャストオフ…じゃないな、コレは」

「蒼介!」

「何をし…た?」


瓦礫の山が吹き飛んで出てきたのは蒼介ではなかった。それは、一言で言えば異形であった。肌の色は墨汁を塗りたくったかのように黒く、髪は蒼穹か大海を連想させるかの如く蒼かった。その上、額から二本の角が生えている。


「何だ、アレは…」

「蒼介…なのか?」

「服は蒼介の着てたものだな」

「…(コクコク)」


四人は遠巻きに蒼介らしきモノを見ていた。騎士団員の面々も四人に倣うかのように同じようにしている。


「アレは何だ一体、蒼介殿なのか?」

「京平殿たちが人間をやめていると言っていたが…」

「何にせよ、女王陛下や私らを救ってくれたことに変わりはないと思うのだが…」


騎士団員たちがどうするべきか迷っていると、目の前の異形に変化が訪れた。黒い煙が体から立ち昇り、肌の色が黒から人間の色である肌色に戻っていく。やがて黒い煙が蒼介の全身を覆ったあとに残されたのは、疲れたように立ったまま目をつぶっている蒼介であった。しかし、無事かと思いきや体の所々に火傷の跡が見られる。


「やっぱり、蒼介だったな」

「…(コクリ)」

「あー、でも若干火傷の跡が残ってるな」

「焼死体になってもおかしくなかったんだ、生きてるだけで驚異だ!」


四人が騒いでいるのと同様に騎士団が色めき立つ。


「本当に蒼介殿だったぞ…!」

「京平殿たちの言う通りだったな。しかし、何だったんだ、あの姿は」

「それはあとで考えることだ、陛下の治療を最優先に行え!」


騎士団も色々と聞きたいこともあるようだが、あとにしてくれるようである。しかし、そんな空気を知らぬとばかりにぶった斬り――――――――――


「ちょっと、姉さん! 話はまだ終わってません!」

「アタシだけじゃなくてあっさり捕まってる蒼介にも言いなさいよ! ちょっと蒼介、何寝てんの!」

「こんなのが長女とは、妹として恥ずかしい…」


ヴェロニカがソフィーの説教を振り切って蒼介のもとへと早歩きでやって来る。その様子にコゼットは頭を抱える。ヴェロニカが喚き散らしながら近づいてくるが、それは悪手であった。なぜなら――――――――――


「蒼介、アンタが寝てたせいで敵が堂々とここまで入り込んできたって――――――――――」

「黙れよ、バカ姫」


蒼介自身は怒り狂っていたからである。不用意に近づいてきたヴェロニカの頭を鷲掴みにする。


「自分のことを棚に上げて、人のことをボロクソ言ってんじゃねぇぞゴラ…!」

「アンタ、王女にこんなことして――――――――――」

「アァ?」

「イダダダダダダダダダダ!!」


体こそ元に戻っていたが、蒼介の顔は変貌していた。瞳は蒼くなっていたが、それは最初に森で襲撃を受けたときに聞いていたからまだ納得できる。しかし、今度は瞳だけではなく目そのものが変わっていることにその場にいる全員が納得ができなかった。何故なら、目の白い部分が黒く変わり果てているためである。更に変化は目だけでなく、口にも表れていた。蒼介のその歯は噛みついたものをすべて食いちぎらんばかりの乱杭歯に変貌していたのである。

だが、変わったのは姿だけであり、ヴェロニカに対して折檻をしている様子を見ていた四人は安堵した。


「結局、蒼介は蒼介だったか…」

「…(ウンウン)」

「しかし、あの顔元に戻らないか? 俺としては怖いから戻ってほしいんだが」

「その恐怖はフランツがいつも蒼介に面倒ごと押し付けてるからだろ?」


四人のやり取りを聞いて、ヴェロニカを蒼介から解放しようと飛び出そうと考えていた騎士団が呆気にとられる。


「確かに京平殿たちの言うように蒼介殿だったが、どうしたものか…」

「ヴェロニカ様は…、このままでいいな、うん」

「いつも反省しない姫様にはいい薬だな。蒼介殿、もっとやってください」


騎士たちは蒼介の行いを咎めるどころか称賛していた。そして騎士たちだけでなく、ソフィーとコゼットもいい笑顔だった。


「フフフ、いくらお母さまと私がお説教をしても悔い改めないのですから最終手段に手を出しても文句はないですよね」

「私もそう思うよ、ソフィー姉さん。いい気味だよ、この前も私が城下町で買ったクッキーを勝手に食べたんだし」


孤立無援とはこのことである。蒼介が掴んでいるヴェロニカの頭からミシミシと音が鳴ってきた頃に一人の老婆が蒼介をたしなめた。


「その辺で許してやりな、坊主」

「あ? あぁ、婆さんか」



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