はじめての異世界召喚 28 崩壊のあとに
謁見の間はドラゴンの吐いた炎によって完全に崩壊した。
しかし、その場に居合わせた者は塵煙で汚れてはいるものの、誰一人として死んではいなかった。
「どうなってる、何で俺はまだ生きてる…」
「さすがにに死ぬかと思ったけど、何だコレ?」
倒れている女王を守っていた京平とスレイは目の前の光景に困惑していた。最初はスレイが竜の炎を氷の壁によって防ごうとしていたが、一瞬でとは言わないが高速で溶かされてしまった。もう駄目だと考え、せめてもの思いで京平は女王の上に覆いかぶさりスレイは人生で間違いなく最大の出力で氷の壁を再構築した。そんな二人の前に突如として盾が現れた。その盾によって迫りくる炎は遮られ、落ちてくる瓦礫は弾かれていった。
「奇跡と呼ぶには、出来過ぎだな…」
「…(コクリ)」
「フランツ! 優志!」
「お前らも無事だったか」
「あぁ、俺たちはこの盾に守られて助かった」
「…(コクコク)」
フランツが指差した先には京平とスレイを守った盾とは異なる意匠だが、同じ絵が描かれた盾が宙に浮いていた。
「どうやら、彼女たちも無事らしい」
フランツの視線の先には手を出そうにも、蒼介が無双という名の私刑をしていたがゆえに手を出すことができなかった騎士団がいる。その前には何本かの刀剣が床に突き刺さっており、その刀剣が支点となって障壁が張られていた。その刀剣の一本を京平とスレイは凝視していた。
「何で生きてるっていうのはコレのおかげとして、何だこの盾は…?」
フランツは胡散臭いとばかりに浮いている盾を指先でつつく。すると盾は意志を持ったかのようにフランツのつつくタイミングに合わせて軽く落ちた。
「痛ッ! 何しやがる、この盾!?」
軽く突き指をしたようであるフランツ。その様子を見ているのかどうか分からないが、理解はしているようである。笑うかのように盾は振動する。フランツは腹が立ったのか、落ちていた瓦礫を盾に投げた。恩を仇で返す所業に怒ったらしき盾は、フランツの頭を体当たり(?)で襲撃した。そこに京平とスレイを守った盾も参戦する。その打撃は先ほどの蒼介の私刑に匹敵するものであるが、どことなく笑える絵面である。
「…(ハァ)」
「何やってんだかな。それよりもスレイ、あの刀…」
「あぁ、間違いない。蒼介の七星刀だ」
「もしかしなくても蒼介が何かしたのか…」
スレイが七星刀に近づき、引き抜く。スレイが七星刀を確認していると一気に人が流れ込んでくる。
「ご無事ですか、皆さま!」
「どうなってるのよ、コレは!?」
「コレは、相当酷いね…」
まずは王女三姉妹が京平たちのもとへ駆け寄る。暗殺者マーニがいた際に現場にいたソフィーは騎士団によっていつの間にか連れ出されていたようである。
「それよりも姉さん? お忍びで城下へ出かけて帰って来た時に使った通路のカギはかけましたか?」
「いやー、どうだったかなー」
「後でキッツイお仕置きが待ってるよん、姉さん」
詰問するソフィーに対して、滝のような汗を流しながら目が泳いでいるヴェロニカ。覚悟しとけとばかりにコゼットは宣告した。
「皆さま、ご無事ですか!」
「陛下はどこにいらっしゃるのですか!?」
「ケガをした方はいらっしゃいますか!」
今度は三姉妹の後から騎士団が流れ込んでくる。それにはスレイが対応した。
「負傷者は女王一人だ、マーニと呼ばれた暗殺者が毒蛇を使って女王を襲った! 誰か毒について詳しい奴はいないか!?」
「それは私が対応します!」
「頼む!」
スレイは近くに倒れている女王を駆け寄って来た騎士に任せて、京平と優志とともに少し離れた場所に移動した。フランツ? 未だに盾によってフルボッコの最中である。
「さてと、女王も任せることができたところで蒼介はどこだ?」
「そういえば…、いつもなら悪態を吐いてるのにどこにもいないな」
「…(コクリ)」
「こんな時にどこに隠れてるんだか」
「…(バンバン)」
「どうした、何を見てるんだ優…じ――――――――――」
「何だ、どうし…――――――――――」
急に優志が京平の肩を思い切り叩いてきた。肩を叩かれた本人は優志を見る。いつも眠たそうな目をしている顔がありえないものでも見たような表情をしていた。その視線を辿る。それに遅れてスレイも視線を辿った。すると二人とも絶句した。そこには丘のように積み上げられた瓦礫があり、そこから何かを掴もうとしていた焼けただれた腕が片方だけ生えていた。
「なぁ、アレってもしかして…」
「もしかしなくてもあんな太い腕した奴なんざここにいる優志以外に一人だ…」
「…(サァー)」
三人の顔がどんどん青ざめていく。一目散に優志と京平が腕の生えている瓦礫の山に走り出した。
「…(ダッ!)」
「蒼介! そこにいるのか!?」
「おい、手の空いてる奴はこっちに来て手伝ってくれ!」
真っ先に優志と京平が瓦礫の山へ登り、撤去作業を行う。スレイの叫びに手の空いていた騎士団員たちがただならぬ様子に近寄ってくる。
「何事ですかって、腕!?」
「蒼介が埋まってる、手伝ってくれ!」
「わ、分かりました!」
「総員、目の前の瓦礫の排除だ!」
「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」
そうして、瓦礫の撤去作業が行われてしばらく経ってからのことである。
「アレ?」
「どうしたんだ?」
「イヤ、今腕が動いたような…」
「なら生きてるってことだ、急ぐぞ!」
「ハイ! って、え!?」
「何をしているって、えぇ!?」
作業中に突如、蒼介の腕らしき場所から蒼い何かが立ち昇った。




