はじめての異世界召喚 25 崩壊は唐突に2
「コレが蒼介、お前が起きる前に起こったことだ」
「マジか…、昼寝をしたせいでこの状態か」
「というか、何で城壁の上で昼寝してた!?」
「お前らが毎回俺の部屋に集まって来るから、静かに昼寝できる場所を探してたんだよ」
「俺たちが理由!?」
蒼介の言い分に驚愕する京平たち四人。そこで蒼介を鎖で雁字搦めにして捕えている暗殺者が
「どうでもいいんだけど、もう少し人質らしくしてくれるとありがたいんだけどー?」
「あー、ハイ。じゃあ、きゃー助けてー(棒)」
「見事なまでに棒読みだね」
「人質らしくしろって言うからしたのに、文句言わんでください」
「もうちょっと臨場感というか、緊張感が欲しいんだけどー?」
「慣れてしまったんで…」
「慣れた!?」
蒼介自身によるまさかの告白に蒼介と暗殺者の周りを取り囲んでいる周囲の騎士だけでなく、暗殺者自身も驚愕している。
「最初は三歳のときで…、今年も捕まって合わせて確か今回で四回ほどだったか…」
「割かし苦労してるんだね」
「そう思うんなら、この鎖ほどいてくれないですか」
「悪いね、仕事なんだよ」
「アッハッハ、デスヨネー」
暗殺者はニッコリと笑って蒼介の首筋にナイフを突きつける。蒼介は死んだ目で嗤ったあとに、諦めたように溜息を吐きながら呟く。その様子を見たスレイは蒼介に聞いてみる。
「オイ蒼介、一人で脱出とかできないのかよ」
「いつもならできるんだが、今は無理だな…」
「どういうことだ?」
「この女、ご丁寧に俺の肩と腕の関節を外してから鎖で縛りやがった。おかげで腕に力が入らん」
「抜け目のない女だな…」
「その上、何かされたのか頭が上手く回らない。何かかがされたか、飲まされたか?」
「ご明察。いやー、ドラゴンを素手で殴り飛ばす相手を何もせずにそのまま縛るとか自殺行為でしょー」
「ごもっともな判断だな…」
そんなことを言っているうちに暗殺者が女王の近くまで歩くように、蒼介に指示を出してきた。蒼介は指示に従うが、意地とばかりにゆっくりと歩く。
「目的は女王の暗殺か。そのくらいで国が揺らぐとは思えんが」
「そりゃそうだが、暗殺の直後に軍隊が国に攻め込んできたらどうなるかな?」
「まさか、近くに待機させてるのか? 思いっきり世界地図を塗り替える気か、チクショー」
「まぁ、恨んでくれても構わないよ。それだけのことを私たちはやってきてるからね」
蒼介はそれを聞いて、ニタァと嗤う。笑うのではなく、――――――――――嗤う。
「それを聞いて安心したわ」
「うん?」
「俺は悪党の家に生まれてな、ロクな最期を迎えることはないってある程度覚悟してんだよ」
「ほうほう、それで?」
「つまりだ。こういうことだ!」
蒼介はスレイに視線を向けて叫んだ。
「スレイ、俺に構うな! 最大火力だ!!」
「本当に、どうなっても知らねえぞ!」
スレイは蒼介の言葉に顔を険しくしながらも、指示通りに氷の刃の雨を女暗殺者の上に蒼介ごと殺しえない威力で降らせた。その魔法の威力で謁見の間の床が砕かれて粉塵が舞い上がり、視界が悪くなる。その光景を見ていた誰もが二人は死んだと考えた。しかしながら、その考えは一瞬で裏切られることになる。
それは本当に一瞬の出来事であった。
蒼介のすぐ後ろにいたはずで死んだと思われた暗殺者が魔法で喚びだしたらしき二匹の蛇に指示を出し、一匹を蒼介の首筋へ噛みつかせた。即効性の毒を持っているのか、蒼介はその場に音を立てて崩れ落ちた。
その後に蒼介と同じように、暗殺者が呼び出したもう一匹の蛇が女王の首筋へ噛みついた。蒼介に倣うかのように、女王もまたその場に崩れ落ちた。
暗殺者は止めとばかりに、ナイフを女王に向けて振りかぶる。騎士の叫び声が、ソフィーの悲鳴が、謁見の間に響き渡る。
「女王、その首もらった!」
ナイフが女王の首を切り裂こうとしたその時――――――――――
「ッァ!!」
「グボッ!」
優志の蹴りが暗殺者の横っ面に炸裂し、最悪の事態は免れることとなった。暗殺者は距離を取り、蹴りが当たった部分に手を当ててさする。その光景を見て、優志と手合わせをしたことがある者は目を見開いた。
「嘘だろ…。優志の蹴りを食らって立ってられるなんて」
「痛ったー。あー、そっちの白髪のヒトも警戒してたとはいえ、私の本気の速さに反応できるとは思わなかったなー」
「…(ギロッ!)」
「おー、恐ろし。もう少し愛想よくした方がいいよ」
「誰のせいでこんなことになったと思ってやがる!」
怒声を張り上げながら戦槌を振りかぶったフランツが一足跳びで暗殺者に飛び掛かる。暗殺者は上に飛び、全身の骨を砕こうとする横薙ぎに振るわれた戦槌は空を切る。
「おっとー、後ろから襲うのはいいけど叫ぶのはいただけないな。それじゃ、目的も果たしたしオサラバ!」
フランツから距離を取り、この場から逃げ出そうとする暗殺者。
「逃げられると思っているのか?」
「悪いが、逃がす気はない」
スレイが氷で出入り口や窓などの外へ繋がる場所を塞いだ上で小太刀を構え、京平が刀を抜く。
「やれやれ、無駄な体力を使いたくないんだけどね」
そう言って楽し気に笑いながら魔法陣を展開させ、先ほど喚び出した蛇が糸に見えるほどの大蛇が出てきた。
「仕方ないね、ここにいる全員を始末させてもらってから出るとするよ」
暗殺者の言葉に大蛇が鎌首を揺らして騎士団や京平たちに襲い掛かろうとした寸前――――――――――
「ここまで舐めた真似してタダで帰れると思ってんのか」
大蛇の頭がみじん切りにされた。
その場にいた全員が――――――――――暗殺者でさえも――――――――――驚愕した。なぜならそこに立っていたのは――――――――――
「さて、今度はこっちのターンだ…!」
蛇の毒に侵されて意識不明であったはずの蒼介であったのだから。




