はじめての異世界召喚 22 五人の休日
異世界召喚されてから三週間ほど経ったとある日、珍しく召喚された五人の休日が重なった。五人は何をするでもなく集まって駄弁っていた。――――――――――蒼介の部屋で。
「それで最近はスレイが訓練場に入り浸りで、俺が相手をすることになってヴェロニカが不機嫌になってなー…」
『愛されてんな、京平』
「というか、もう訓練場というか騎士団は京平のハーレムになってんだろ」
「騎士団どころか城中が京平のハーレムになってんだろ」
「おーい、お前らー…?」
京平のハーレム状態を話題を肴に盛り上がっている。――――――――――蒼介の部屋で。
「ハーレムって、俺にそんな気はないんだがな…」
『本人にそんな気がなくとも、端から見たらそうとしか思えんぞ…』
「いいじゃないのー、男ならハーレムは大歓迎だろ!」
「それはお前が王族だからだ、フランツ。アレ? でも京平が婿入りしたら、王族の一員になってハーレムが作り放題になるんじゃ…」
「スレイ、俺は節操なしになるつもりはないからやめてくれな?」
「お前らー、聞こえってかー…?」
四人は今度は京平の未来を想像し出して、また盛り上がった。――――――――――蒼介の部屋で。そして、その部屋の主はというと、
「お前ら、だから何で俺の部屋に集まって来るんだよ…!」
話に参加するでもなく、自室のベッドの上で寝転んでいた。その気怠いという表情を隠そうともせず四人のいる方向へ顔を向ける。
「だって、コレがあるから落ち着くんだもん」
「もんじゃねーよ、ハーレム野郎が…!」
京平が自分の前にあるモノをチョイチョイと指差す。蒼介は若干イラッとしながら言い返した。
『ていうか、何でちゃぶ台と畳があるんだよ。こんなファンタジーな世界でここだけ現実感が半端ないんだが…』
「日曜大工で自作した。文句があるなら出てけ」
京平が指差しているちゃぶ台と畳を見ながら微妙な顔をした優志(執事スタイル)が聞いてくる。それを至極当然と如く蒼介は言い返した。
「お前と再戦しようと来たんだが、断られたから仕方なくここにいる」
「俺の休みをどう使おうが、俺の勝手だ」
スレイが笑いながら言うが、蒼介はキッパリと断った。
「暇だからだ!」
「よし、出てけ」
フランツが簡潔に答えて、同じように蒼介も簡潔に答えを返した。
そして、若干グロッキー状態の蒼介に京平が何を思ったのか聞いてみた。
「てか何で毎週一日は必ずそうしてんだ?」
「言ってなかったか?」
「言ってないし、聞いてもいないな」
蒼介は「そうかー」とやる気のない声を出しながら説明する。
「俺は毎朝起きて体動かしてんだよ」
「それは知ってるが…」
蒼介は毎朝誰もが寝ている時間から起きて鍛練している。京平自身も早起きしているが、蒼介よりも早く起きていたことはなかった。
「そんでその疲労が若干溜まり過ぎてオーバーワーク気味だから、週一でこうして必要以上に動かないでだらけてんだよ」
「体力の塊のお前がオーバーワークって、普段俺が来る前に何をしてんだよ…」
「聞きたいのか?」
蒼介の言葉に京平は首を縦に振る。部屋にいる他の面々も興味があるのか、蒼介の方を見て待っている。
「まずは走り込みからの全力疾走を三十分から始まる」
「ほう」
「ちなみに走り込みは体が慣れるまでの二分か三分だ」
「…は?」
「終わったら、指立伏せ、足掛け腹筋、片足スクワット左右を千回ずつ」
「普通に腕立てとかでよくないか?」
「それだと足りなくなったからこうなった。次に技の鍛練に入る」
「さっきまでと違って何か普通だな…」
「使う技の鍛練なんぞそんなモンだろ。ちなみに俺は鎧通しからやる」
「技の方が普通じゃない!」
京平が噴き出して絶叫した。優志も唖然としていた。フランツとスレイは蒼介の技について今一つ分かっていないようだ。
「何なんだ、お前は一体!?」
「何がだよ」
「刀鍛冶ができて、自分を殺しに来る軍隊を返り討ちにできる奴が何で高校生やってんだよ!」
「それができなきゃ死んでたからだよ」
「どんな生活送ってた!? てか人間やめてるって言っても万能すぎるわ、コンチクショウ!」
「違うぞ、万能だからじゃなくてできるからやってるんだ」
絶叫する京平に蒼介が面倒臭そうに答えていく。
「というか、どんな生活か? 週一で殺し屋さんが襲ってくる生活だが」
「日本だよな、ソレ!? 何で法治国家なのに週一で襲われてんの!?」
「うっさいな、俺の家は裏社会に片足突っ込んでる悪党の家系なんだよ」
「あー、そうなの…」
絶叫するのに疲れたのか京平のテンションが急降下していく。そして、バトンを受け取ったかのように優志が筆談で聞いて(?)くる
『代々の悪党ってヤツか。ということはお前も何かやらかしてんのか?』
「やってるぞー、大体半年前ぐらいに麻薬組織をイギリスまで行って結果的に壊滅させた」
蒼介の気負った様子のない言葉にその場にいた五人が思いっきり引いた。無理もないだろう。人間をやめたとはいえ、一高校生がやることではないのだから。
「ちなみにその道中に神にも襲われたから散々だったな」
「もう腹いっぱいだ…」




