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はじめての異世界召喚 21 スレイの魔法4

氷の刃が飛び、鋼の刃と激突して砕け散る。その光景はいつまでも見ていたくなるような幻想的な光景であっただろう――――――――――中心で殺し合い染みた手合わせをしている二人がいなければ。


「今まで散々おちょくってくれやがって、氷漬けにして標本にしてやる!」

「お前が本気出さなかったからだろ? それに地が出てるぞ、氷眼鏡!」

「誰が眼鏡だコラ!」

「実際に眼鏡してるだろうが!」


互いに罵声を浴びせながら戦っている。目の前で行われていることは素人目に見ても高次元の戦いであるのに、ギャーギャーと二人の罵声が飛び交ってるせいでチンピラのケンカか責任を押し付けあう悪ガキにしか見えないのが何とも物悲しい。


「何なんだろうな、コレ…」

「コレは素晴らしい戦いなのですが、お二人の声が少し…」


京平と副団長が嘆いている。しかしそれでも戦いは終わらない。


スレイが何度目かの無数の氷の刃を作り出して、蒼介に向かって射出する。蒼介は襲い掛かる刃を一つ残らず切り砕き、スレイに向かって突貫する。スレイはそれを読んでいたかのように、蒼介の背後に特大の氷の杭を造り出して、またも射出する。しかしながら蒼介は上半身をひねって回避した上で、スレイに向かって氷の杭を蹴り飛ばした。自分に向かってくる氷を視認した瞬間にスレイは氷を消し去った。


「さっきから打ち返した氷が消えてくから、この手はもうマンネリか…」

「自分で出したんだ。消せるのも思い通りに決まってんだろ」

「なら、コイツの出番か…」


蒼介はそう言ってハチのように飛び交ってくる氷の刃を回避しながら、持っていた刀を取り出した時とは逆に背中にしまう。そこから更に別の刀を鞘ごと取り出した。


「得物を変えたぐらいで、この物量を捌ききれるか!」

「できるさ」


そう言って蒼介は腰溜めに刀を構えて鞘から一気に引き抜いて居合切りを放った。その一閃でスレイが放った氷の弾幕は一気に消え失せた。


「蒼介のヤロウ、居合もできたのか…」

「それよりも! あの量の氷をどうやって消し飛ばしたのですか!?」


京平が目を細めて呟くが、副団長はそれどころではなかったようだ。


「蒼介殿の腕力で振るった剣圧で吹き飛ばすならまだしも、ただ霧のように消え失せるなんて普通ではあり得ませんよ!」

「全くだ、今度は何をしやがった…」


副団長は混乱したように叫び出す。それに同調するようにスレイは冷や汗を垂らしながら聞いてくる。周りにいたギャラリー(サボっている奴ら)たちもスレイが言い終わった後に騒ぎ出す。そんな中、蒼介が静かに言った。


「七星刀…」

「「何…?」」

「コイツに備わっている特性は破魔の能力だ」


周りの反応などどうでもいいのか、蒼介は呆けているスレイに向かって突貫していく。蒼介が近づいてくることに気付いたスレイは距離を取って牽制のために氷の刃を作り出して打ち出すが、蒼介が七星刀を振るうことでそれは何の意味もなくなっていく。そして、スレイの前についに蒼介がたどり着いた。蒼介は七星刀を左手で振りかぶりながら言う。


「答え合わせはあとでしてやる」

「それならまだ時間はありそうだな」


振り下ろされた七星刀をスレイは蒼介が制作した二本の小太刀で受け止める。


「…俺の刀鍛冶の腕も捨てたモンじゃないな。小太刀で七星刀を受け止めるか」

「ホントにありがとうよ、いい武器をくれてよ!」


スレイは鍔迫り合いの状態から蹴りを繰り出すが、蒼介の右腕で防がれる。しかし、再び距離が開いた――――――――――と思われたところで蒼介が七星刀を"投げた"


スレイは七星刀が飛んで来たことにギョッとしつつも、小太刀で弾き飛ばしてやり過ごした――――――――――


「悪いが、そろそろ終わりだ」


――――――――――ところで目の前に蒼介がいた。スレイは弾き飛ばしていない残っていた腕を掴まれたまま地面に叩き付けられて、意識と息が一瞬止められた。その一瞬で蒼介は拳を握ってスレイに止めを刺そうとする。


「久しぶりに本気になれたよ、ありがとな!」


スレイに拳を振り下ろそうとした瞬間、蒼介は後ろへ引っ張られた。後ろを向くと、優志が蒼介の襟首を持っていた。


「優志か、もう時間か?」

「…(コクリ)」

「そうか、時間か…」


蒼介はスレイに顔を向ける。


「そんじゃ、仕事だから行くわ。続きはまた今度なー」


そう言って蒼介は訓練場から優志とともに出ていく。残された京平と副団長、野次馬たちは蒼介の背が見えなくなってから息を吐いた。無理もないだろう。蒼介が普段訓練にさんかする際には寸止めか関節技で終わらせることがほとんどだというのに、スレイを相手にした時の最後は地面に叩き付けた上に拳を振り下ろそうとしたのだ。それも本気で。蒼介の訓練の相手をしたことがある、または訓練をみた騎士は蒼介の腕力が常軌を逸していることをよく知っている。それがまともに人の顔面一つに入ろうとしたのだから、たまったものではない。


そして、地面で大の字になったままのスレイに京平が近づいて行く。京平が近づいていることに気付いているというのに未だにスレイは体を起こさない。


「やられたな、スレイ」

「………」

「まー、気にしなさんな。あそこまで食いつけたのは優志ぐらいだよ」

「………」

「お前も凄かった――――――――――」

「アァァァァァァァァァァ!!!!!」

「「「「「…!?」」」」」


突然叫び出すスレイにその場にいた一同は驚愕する。そして、次のスレイの言葉にその叫びの意味を理解した。


「負けたァァァァァァァァァァ!!!!! コンチクショウがァァァァァァァァァァ!!!!!」

「「「「「あー…」」」」」


死にかけるよりもただ悔しかった、スレイの心の中はそれ一つであった。


「アァァァァァァァァァァ――――――――――(ピタッ)」

「「「「「…?」」」」」

「あー、ボロ負けしたか…」


普段のスレイに戻ったことで一同は安堵した。京平もまた然りである。そして、一同が安堵しているところにスレイが京平に顔を向けて言った。


「京平、相手頼めるか…?」

「いいけど、あんな規模の魔法使われたら速攻で負けるんだが…」

「イヤ、魔法は使わない。蒼介には効果が薄かったからな」


その言葉に京平は目を丸くした後に、ニヤリと笑う。その言葉だけですべてを理解する。


「俺は剣しか取り柄がないぞ?」

「それでも俺よりかは接近戦が得意だろ」

「蒼介は俺よりも強いぞ?」

「だからどうした、それでもお前は弱くはないだろ」

「目指すモノは何だ…?」

「とりあえず、蒼介へのリベンジだ!!」


京平の笑いが最高潮に達したと同時に刀を抜き、スレイに切りかかる。それをスレイは小太刀で防いで反撃を行う。


「悪いが俺も蒼介に負け続けてるんでな、先にこっちが勝たせてもらうぞ!」

「知らないな、そんなモン! 先に勝つのは俺だ!」


スレイの第二ラウンドが始まる。その光景を騎士たちが歓声を挙げて笑いながら見ていた。

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