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はじめての異世界召喚 20 スレイの魔法3

目の前で行われている蒼介とスレイの戦いを一般人が一言で言うならば、スレイが善戦していると言うだろう。攻撃しているのはほとんどがスレイで、蒼介は攻撃をしていないのだから。だが、京平の目にはかなり違和感のある戦いに見えた。


「何か妙だな…」

「何がですか?」


京平の漏らしたつぶやきに隣にいた王国騎士団副団長が反応する。


「いやね、蒼介の戦い方が普段と違うからね」

「確かにいつもなら受け止めるか弾いているところを、すべて回避していますね。それも何か警戒するように距離も余裕を持たせていますし」


蒼介の訓練場での普段の戦い方は後の先である。相手が打ち込んできたところを引き込むか弾き飛ばして、足払いをした上で持っている武器を突き付けるか関節技などを極めるといったことで終わらせることがほとんどである。対して目の前で行っている蒼介の戦い方は何ともいやらしい戦い方だ。基本的に捌くか回避の二つであるが、その動き方も見ていてあまり楽しいものでもなく時折スレイに対して足を引っ掛けて転ばせようとしたり足で土を蹴り上げて顔に当てようとをしている。まるで喧嘩に勝てないチンピラが嫌がらせをしているようだ。


「あの体格なら最初はパワーファイターで間違いないと思ったんだが、バランス型だったのか? それにしては今回のスレイとの戦い方じゃトリッキー過ぎるしな…。っていうか、何だあの顔は」

「一体蒼介殿は何を考えているのでしょうか…。あの顔で…」


二人の戦いが行われている中、蒼介の顔はボヘーッとした表情をしていた。



そして、戦っている本人――――――――――スレイの心情はというと


(あー、何なんだコイツは!?)


とても混乱していた。


(フェイント掛けたら即座に後ろに飛び退くし、ガード固めたら転ばせようとしてくるか土で目を潰そうとする。俺も褒められた戦い方じゃないが、蒼介の戦い方はそれ以上に厄介だ!)


スレイも時折訓練場で京平や王国騎士団の相手をしている蒼介の姿を見ており、蒼介の戦い方は基本的にパワーファイトであることが基本であることを確認していた。そのために対策も考えて、今回の手合わせを蒼介に頼んだのである。それがどうだろう。返し技で翻弄しようという目論見が外れ、逆に翻弄されている。スレイは心の中で悪態を吐く。


(何でお前と比べたら貧弱もいいところの俺にこんなことをするんだよ! 普通に来いよ、コンチクショウが! しかも何だその顔は、スンゴイ腹立つんだが!?)


イライラとしている心情を隠しているスレイに対して、蒼介はボヘーッとした表情で気持ち悪い動きで徹底的に回避か受け流しをしている。それがまたスレイの感情を逆撫でする。


(クックク、いいだろう。そこまで莫迦にするのなら後悔させてやる。せいぜい負けた後に俺を莫迦にしたことを悔いるんだな!)


スレイは気付いていない、蒼介がスレイに合わせていたことを。

スレイは気付いていない、蒼介はスレイが魔法を使えることを知った上でこの戦い方を選んだと言うことを。

スレイは気付いていない、後悔するのは自分だということを。



(そろそろ来るか?)


蒼介はスレイの中の意思が何か変わったことに気付いた。


(ようやくか、このやり方は好きじゃないからもっと早くに来て欲しかったんだが…。まぁ、思い通りにならないのが人生か…)


スレイが心の中で悪態を吐くのと同様に、蒼介も心の中でぼやいていた。ただし、その顔は何も考えていないように見える、ボヘーッとした表情だったが…。


「コイツで終わらせる…!」

(来るか…!)


スレイが仕掛けてくると感じた蒼介は体に力を入れる――――――――――


「ふざけた戦い方もこれで終わりだ」

「そうだな」


――――――――――のではなく、力を抜いた。

その直後に蒼介はその場所から飛び退いた。それと同時に蒼介のいた場所に氷の杭が突き刺さる。その光景に周囲がどよめいた。


「バカな! 何故スレイ殿が魔法を!?」

「凄いのか、魔法を使うのがそんなに?」

「凄いも何も、この世界で男は魔法を使えないのですよ? それが目の前で魔法を使っているではありませんか!」


スレイが自身の周囲に氷でできた武器を浮かせて、蒼介に向かっていく。スレイが切りかかってくるのに対して蒼介はバックステップで回避していくが、何もない場所からまた氷の杭が出てきて蒼介に襲い掛かる。その氷の杭を蒼介は背中から刀を取り出して、切り裂いた。その光景を見ていた一同は言葉を失ったかのように唖然とする。その心情を代弁するかのように京平が叫んだ。


「ちょっと待てェェェェェい! 今、どこから出した!?」


その叫びに戦いがいったん止まる。


「どこって、背中から?」

「出した場所が問題なんだよ! 何で背中でも服の中から出てくる!?」

「そら、仕込んでたから」

「暗殺者か忍者かお前は!?」

「暗殺者は俺の悪友の一人だな。忍者には会ったことはまだないが…」

「物騒な悪友だな!?」


蒼介と京平の会話に割り込むように、副団長がスレイに食い入るように聞いてくる。


「それよりもスレイ殿、何故魔法が使えるのですか!?」


それはこの場にいる女、全員が効きたかったことだろう。


「何でって言われても、使えるモンだしな…」

「嘘です! この世界で男は魔法を使えないハズです!」 

「それって、この()()()()()()()男のことだろ…?」

「あっ…」

「俺はこの世界の出身じゃないし、使えない道理はない」


会話に一区切りがついたのか蒼介とスレイの二人は顔を見合わせて先ほどの位置に戻って言った。


「はい、再開(さいかーい)


そして、鋼と氷の乱舞が再び行われた。

蒼介のボヘーッとした表情のモデルは、シティーハ〇ターの二個師団を壊滅させた調子のいい時の顔と某海賊王を目指すゴム人間の「ゴムゴムのボー」が参考になりました。

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