はじめての異世界召喚 19 スレイの魔法2
「神、ねぇ…」
「それでこの世界の神は――――――――――」
「あー、それはいいや…」
「ん? そうか…、って何か不機嫌そうだな」
「前に神関係でひどい目にあったのを思い出してな…」
「…あー、思い出した。自己紹介の時に言ってたな」
そして、男はこの世界の魔法が使えない理由と女尊男卑の説明に入る。
先ほども少し出てきたが、男が魔法を使えない理由は体質にある。厳密には使えないわけではないが、それについてはおいおい説明する。まず、女が魔法を使える理由として体の中にある魔法的な器官の有無である。たとえて言うなら、蛇口の着いたドラム缶とそうでないドラム缶を想像してもらうのが早いだろう。ドラム缶の中には両方とも水がある。女の方は蛇口のついたドラム缶であり、蛇口をひねれば水が出る。この蛇口から出た水が魔法である。対してもう一方のドラム缶には蛇口がないために水が出せない。そのため、この世界の男は目に見えるような魔法が使えないのである。
「なるほどな、魔力持ってても使えないんじゃ意味ないか」
「イヤ、実は全く使えないってわけじゃないらしい」
「何…?」
「身体強化の魔法があってな、これは男でも女でも使えるようでな」
身体強化の魔法のやり方は魔力を放出するのではなく、体の中の魔力を体の使う部分の内側に集めることで使えるようになるというだけの単純なやりかたである。しかしながらその効果は、身体能力を何倍にも上げることができるという代物であり極めれば何十倍にも膨れ上がるとのことだ。
「それって…、イヤ、何でもない。…アレ?」
「どうした?」
「それってつまり、体格で勝ってる男の方が有利だろ。ここまでこの世界の男の評価が低いのが不思議なんだが」
「あー、それがな。」
スレイが今しがた調べ終わったことを話す。
どこかの国で何十年か前に身体強化を高いレベルで使える男たちが待遇に不満を抱いて革命を起こしたらしく、その国は最終的に反逆者たちを鎮圧したものの隣国から強襲を受けて滅亡したらしい。
その事件以降に各国は教訓としてその事件は教科書レベルで載ることとなり、ある国は男の扱いを改め、またある国は反逆されないようにさらに厳しい扱いをしたとのことであった。
「ただなぁ…」
「ただ、何だ?」
「男たちの負けた理由が遠距離からの魔法での狙い撃ちでの強襲だってことらしいみたいでな」
「へー」
「…それだけならまだしも、男たちは何も持たずに素手で挑んだみたいでな」
「…へー」
「…武器も防具も使わなかったから、革命が上手くいったのも最初だけだったらしい」
聞き終えてから蒼介は頭をテーブルに打ち付ける。蒼介は顔をあげると、表情が引きつらせていた。
「莫迦か! どんだけ脳筋なんだ!」
「魔法が使えなくても弓でも石でも使えばよかったのにな…」
「全くだよ! どんだけ自分の筋肉がすごいと思ってんの!?」
「ホントにな…」
欠片でも同情した自分が莫迦だったと嘆いて蒼介が立ち上がろうとしたところで、スレイから待ったがかかる。
「ところで蒼介、まだ時間はあるか?」
「あるにはあるが、どうした?」
「何、少しな…」
スレイはそう言って立ち上がる。
「少し体が鈍ってな、相手を頼みたいんだが」
「良いが、優志ほど頑丈じゃないと体が持たないぞ」
「そういや、毎朝組み手やってるんだったな」
「おう、俺と殴り合いできる奴は中々いないから、色々と助かってる」
「ドラゴンを殴り飛ばすような奴とまともにやればシャレにならないが、それならやりようはあるんだよ」
「今のセリフを聞いて俺の方が不安になったんだが…」
蒼介はそう言いつつも立ち上がる。
「そう言いつつもやってくれるんだな」
「別に構わねーよ、俺も別の奴とやろうと思っただけだ」
蒼介とスレイは揃って訓練場へと向かう。到着すると、京平が声をかけてきた。
「蒼介はともかく珍しいな、スレイがここに足を運ぶのは」
「何、蒼介に頼んで錆落としに来ただけだ」
「錆落としって、俺は油か砥石扱いか」
「あー! 勝負しなさい蒼介! 今日こそ私が勝――――――――――」
「――――――――――シャア!」
蒼介がぼやいたところでヴェロニカが乱入しようと叫び、セリフを全部言い終える前にラリアットが顔面に炸裂する。ラリアットを行ったのはもちろん蒼介である。
「うし、やるぞスレイ」
「………あぁ、頼むわ」
「…って、蒼介とやるのか! オーイ全員集合、蒼介が戦うぞ!」
仮にも第一王女であるのに、蒼介のヴェロニカの扱いは相変わらずである。よく処刑されないなとスレイは思いながら、蒼介と相対する。
京平が訓練場全域に聞こえるように声を張り上げる。そのセリフで訓練場にいた兵士や騎士が蒼介とスレイの周りに集まってくる。
ちなみにヴェロニカはすでにベンチの上に寝かされている。
「蒼介が戦うっていっただけなのに、観客が多くないか?」
「ホントにな。何で俺がいると、こんだけ集まるんだ…」
「それは蒼介が一番強いからだろ」
「一番は優志だ」
京平が理由を言うが、蒼介は否定する。
「それはそうと、始めるか」
「頼むぞ、蒼介」
そう言ってスレイは蒼介からもらった小太刀を両手に持って蒼介に向かっていった。




