はじめての異世界召喚 17 京平とフランツ、狂喜乱舞する
「ここまでとはな…」
「凄まじいな、この切れ味…」
京平とフランツが蒼介から日本刀を渡された夜、二人の姿は訓練場にあった。この日の五人の仕事がすべて終わった後、京平とフランツは蒼介のもとへと爆走した。しかしたどり着いたときにはすでに寝る支度を済ませ、死んだように爆睡している蒼介の姿があった。フランツは蒼介を叩き起こそうとしたが、京平が眠っている蒼介の近くに『緊急時以外に起こしたら、〇LAPの刑に処す。特にフランツとヴェロニカ』と妙にピンポイントで書かれている紙が貼られていたのを見つけたので無理矢理引き剥がされた。
実際に無理矢理起こしたりなどしたら蒼介に何をされるのか分からないため、京平はいまだに諦めていないフランツを連れて試し切りをするために訓練場へと移動した。
この世界にも巻き藁が何故かあったため、最初に京平が試し切りを開始した。その切れ味は自身の家にある家宝の刀以上の切れ味であると京平自身が実感し、まじまじと手に持っている日本刀を見た。
次にフランツが試し切りを行い同じように巻き藁を切っていたが、何を考えたのか丸太や石、剣に鎧などを色々と持ち出してきた。
「京平、終わったなら変わってくれ」
「…それをどうするつもりだ」
次々と持ってきたものを並べていくフランツに京平に嫌な予感を感じたのか、冷や汗を垂らす。振り返るとフランツの目が爛々と輝いていた。それを見て京平は自分の予想が確信となった。
「切るんだよ!」
「やめろ莫迦! それは石とかを切るものじゃない!!」
京平が止めようとするが、時すでに遅し。フランツは丸太の上に置いた石に大上段から一気に刀を振り下ろす。京平はその光景に刀が折れる想像をして絶望しかけるが、次の瞬間に眼が飛び出るほど驚愕した。
「スゲーな、丸太ごと切れた…」
「嘘だろ…!?」
フランツが振り下ろした刀は石を二つに割り、丸太まで切り裂いた。京平はフランツに近寄り、刀の状態を確認する。わずかに刃毀れができていた。
「石と丸太を切って、刃毀れがたったこれだけか…」
「やっぱし、京平みたいに剣術をがっつりやってないからダメか…」
「イヤ、普通なら折れてるからな!?」
そんなことを言いつつも、京平はフランツの持つ刀について考える。
(素材は昨日作ったフランツの剣と変わりはないハズ…。けど、ここまで切れ味が違うのはどういうことだ? 一晩で何本も刀を作ったことといい、人間やめてるって言ってたがその部分を除いても蒼介って本当に何者だ?)
「よし、次は剣と鎧だな」
「だから、やめろって言ってんだろうが!!」
フランツの言葉に深く考え込んでいた京平が現実に引き戻される。今日もらったばかりの刀が刃毀れを起こしたばかりか折れたりなどしたら、制作主である蒼介に何をされるのかわかったものではない。そのことに気づいていないのかそのことに気づいていても興味が尽きないほど興奮しているのか、フランツは目を輝かせながら鎧を真っ二つにせんと京平を引きずりながら鎧へと近づいて行く。そしてついに――――――――――
「フッフッフ、鎧は切れるのかぁ?」
「もう好きにしてくれ…」
京平は諦めて、フランツから離れた。
「いざ!」
「蒼介に何されても俺は知らないからなー」
京平は死んだ目になりながら、やる気のない声で注意する。フランツに何が起こっても関知しない気なのだろう。そして、フランツの生か死かの審判の時が訪れる。フランツは先ほどと同じように刀を大上段に構えて振り下ろす。その光景を京平はもう知らんとばかりに、現実逃避しながら見ていた。
(フランツって雑なように見えて、しっかり刃筋立ててるんだなー…)
「スゥー…、フン!」
そして、刀が振り下ろされた結果――――――――――
「切れたァァァァァァァァァァ!!!!!」
「マジか…」
守るように剣を持たせたままで構えさせていた状態の鎧をまたも見事に真っ二つにしていた。フランツは歓声を上げ、京平は驚愕すると同時に落胆する。京平の視線の先には――――――――――
「あーあ、フランツやっちまったな」
「え――――――――――って、あァァァァァァァァァァ!!!!!」
京平が呆れた声を出しながら、フランツの持つ刀を指差す。そこには無残に折れたフランツの刀があった。それを見て京平はそそくさと逃げようとする。
「待て、京平!」
「知ーらないっと」
京平がフランツの静止の声を振り切って訓練場から出ようとすると、優志とスレイが入り口の近くに立っていた。
「二人ともどうした、ってもしかしなくてもその箱は…」
「…(コクリ)」
「その反応を見るに、京平にも渡されたか」
聞けば二人も今朝方に蒼介から渡され、この時間に試し切りをしようとしたところである。優志とスレイの二人は箱の蓋を開けて中を見せる。優志の箱の中には標準の大きさの刀が一振りに、小太刀や脇差などが何本か揃っていた。スレイの箱の中には普通の大きさの刀はなく、小太刀や脇差などが揃っていた。
『ついでにオレには包丁が付いてきた。』
優志はそう紙に書いてから、布を巻いた包丁を取り出して見せる。布をほどいて出てきたのは、見事な出刃包丁である。
「そういや刀も包丁も同じように作るって、どこかで聞いたことがあるな」
「もとは同じ刃物だからな。よく切れる分にはいいだろ」
「…(コクコク)」
そんなことをワイワイと話していると、泣きべそをかきながら絶望したフランツが追いついてくる。
「京平~、助けて~…」
「…(エ?)」
「どうした、一体?」
説明を求めるように優志とスレイが京平に視線で事情説明を求める。
「このバカ王子が調子に乗った。それで刀を壊した」
「…(ウワァ)」
「死んだな」
事情を聴いた優志とスレイの二人が果てしなく同情的な目をフランツに向ける。
「助けてェェェェェ! まだ死にたくなァァァァァァァァァァい!!」
「…(ナムー)」
「骨は拾ってやる」
「てか、フランツが死んだら王宮が平和にならないか?」
夜の王宮にフランツの絶叫が響き渡る。三人はすでにフランツは死亡確定であると考えている。三人の脳内には拷問器具や処刑道具を並べた蒼介の姿が妙にリアルに浮かんでいる。
そして、処刑人の姿を想像されている蒼介の方では――――――――――
「痛い痛い痛い痛い痛い! 許して!!」
「莫迦姫が、起こすなとそこに書置きをしておいたろうが…!」
京平の刀を見て欲しくなったヴェロニカが、蒼介に作れと命令しようとして無理矢理叩き起こしたために〇LAPをかけられていた。その光景をヴェロニカのお付きの侍女と二人の妹が呆れた目で見ていた。




