はじめての異世界召喚 16 刀匠
ヴェロニカ、パ〇・スペシャル事件から三日後、京平とフランツは鍛冶場へと来ていた。
「約束してたのに忘れてたなー」
「まぁ、あの時の状況での口約束じゃ、忘れてても仕方ないだろ」
召喚されて襲われた際に迎撃するときにフランツは京平に日本刀を作ると口約束ではあるが、確かに言っていた。言われた本人も思い出したのがつい昨日の晩だったので、今日作ることになったのである。ちなみに二人とも本日は休日である。
「しっかし、構想を聞いただけで作れるのか?」
「安心しろ、向こうじゃ師匠に一人前って言われたからな」
フランツが自身の胸を強く叩き、自信満々とばかりにドヤ顔をする。フランツに対して、京平は若干イラッとする。そんな京平の心情など知らんと言うが如く、フランツは意気揚々と炉に火を入れる。普段のふざけた態度が何だったのかと言いたいほどに、打っている剣を手際よく完成に近づけていく。そして完成したが――――――――――
「駄目だな、コレは何か違う…」
「何でェェェェェェェェェェ!?」
――――――――――京平にバッサリと言の刃で叩っ斬られた。
「注文通りに作ったよな、俺!?」
「そうなんだが、俺の説明も足りなかったみたいでな…」
困惑するフランツに、どう説明したものかと京平は悩む。と、そこに――――――――――
「差し入れだ、刀鍛冶は順調かーっと」
――――――――――差し入れの弁当と大きな荷物を持った蒼介があらわれた。
「おー、蒼介。できたけど、何か違うんだよな」
「蒼介! 京平と同じ国の出身なら、何か分からないか!?」
鍛冶に自信を持っていたがゆえに、京平のダメ出しに蒼介に半泣きで泣きつく。
「イヤイヤ、普通…じゃないが、一般的なただの学生に玄人の職人みたいなこと分かるわけが――――――――――」
「土焼きしてないだろ、コレ」
「「分かるのか!?」」
蒼介の指摘に京平とフランツの驚愕の声が見事に重なる(フランツの声は喜悦の割合も入っているが)。
「反りも甘いし波紋がない…、コレだとファルシオンかスクラマサクスに近いぞ。イヤ、聞き伝えだけなうえにではじめて作って、ここまでできたのは称賛するべきか…?」
「何でそこまで詳しいんだ…」
「蒼介、もっと! ダメ出しを! 改善点をもっと言ってくれ!!」
呆然とする京平と答えが見つかったことで狂喜乱舞するフランツ。蒼介は黙ってフランツの作った日本刀もどきを持って、しげしげと見やり考察している。そして、蒼介は――――――――――
「何本か打つか…」
「ん、何だって?」
「待ってくれ、蒼介!」
誰にも聞こえないほどの小さい声で一言だけ残して帰っていった。――――――――――フランツの作った剣を持ったまま…。
そして、その翌日の早朝。
「オイ、京平」
「何だ蒼介、これから訓練が――――――――――って、うお!?」
京平は訓練に参加しに行こうとしたら、蒼介に呼び止められた。振り返ると目の下に立派な隈を作った蒼介がいた。その顔は寝不足が原因と分かっているとしても十人が十人、人を殺しそうな表情をしていると言うだろう。
「蒼介…、大丈夫か?」
「いらん世話だ。それとフランツはどこにいる?」
「呼んだかって、うぉ! 今度は誰を殺しに行くんだ、蒼介…?」
「やかましい、それよりホレ」
京平と京平との会話でやって来たフランツに、蒼介は木箱を投げ渡す。用は済んだとばかりに蒼介は踵を返して、厨房へ仕込みへと向かう。
「そんじゃ、あとは気張れ」
「オイ…、何なんだ一体」
「とりあえず、開けてみるか?」
困惑する二人だが、気持ちを落ち着けて渡された木箱を近くのテーブルに置いてから木箱の蓋を開く。そこには――――――――――
「オイ、これって!」
「まさかコレが…!?」
京平の箱の中には白木の鞘と柄で包まれた大小二本の日本刀が、フランツの箱の中には日本刀が一振りと打ち直されたと思わしきフランツの剣が入っていた。
「まさか自分で作ったのか…、昨日の昼から朝までのこの短時間で…!」
「短時間って、普通ならどれくらいかかるんだ…?」
「本来なら数日はかかる…」
京平の言葉を聞いたフランツは冷や汗を垂らす。この年代ではトップクラスの鍛冶の腕を持っているという自負をフランツは持っていた。だが、それはあっさりと覆された。それも年上の人間ではなく、同じ年齢の青年に。感慨深げにフランツは遠い目をする。
「世界って…広いなぁ…」
「まぁそう、へこむなフランツ。」
ぼやくフランツに、ケラケラと笑いながら京平は肩を叩く。
「とりあえず試し切りをしてみるが、見に来るか?」
「あぁ、頼む。コイツの切れ味を見せてくれ」
新たな道しるべを見つけたフランツは京平について行く。
そして、蒼介の方では――――――――――
「………」
「…(チラッ)」
「…蒼介殿、今度は誰を沈めるつもりですかな?」
「…ア゛?」
「失礼しました!!」
寝不足で目つきの凶悪になった蒼介によって、厨房での空気が息苦しくなっていた。




