はじめての異世界召喚 15 姫、登場!!
「訓練が終わってから速攻で食堂に直行したのに、なんで厨房にいないのよアンタら!」
「休憩に入ったからだよ、暴れ姫」
「誰が暴れ姫か!」
「アンタだよ…、食いしん坊」
噛みついてくる第一王女――――――――――ヴェロニカに蒼介が面倒臭いとばかりに蒼介は小馬鹿にしたような顔を向けて対応する。その対応は闘牛のごとく、のらりくらりと蒼介は受け流している。ただ蒼介は、本当に面倒臭いだけという反応ではあるが…。
「ごめんなさい、姉がこんな性格で」
「相変わらず苦労してるな、お疲れ様ソフィー」
そんな姉――――――――――ヴェロニカが蒼介に噛みついているのを目の前で見て、第二王女――――――――――ソフィアが申し訳なさそうに言ってくる。京平はそんな彼女に苦笑いしながら、労いの言葉をかける。ちなみにこのお姫様、五人が呼び出された最初の場所であるあの魔法陣から案内をしていた人物である。
「姉さま、あっちは放っておいてご相伴にあずからない?」
「ある意味アンタもあっちの姉さんと同じだからな?」
「…(コクコク)」
第三王女――――――――――コゼットが蒼介とヴェロニカの喧嘩を放置して、早く食べたいとばかりにソフィーに催促するように言う。ヴェロニカほどではないが、この末姫は割と食い意地が張っているのである。そのことを理解しているスレイはツッコミを入れ、優志もスレイに同意するかのように頷く。
「オーイ、そろそろあっち止めないと危険なんだがー?」
フランツの声によって蒼介とヴェロニカの方を見る一同。いつの間にか拳での語り合いに変わったのか、蒼介がヴェロニカに対してパ〇・スペシャルをかけていた。
「日本男児としては燃えるんだが、そろそろ戻ってこい蒼介」
「…(クイクイ)」
「目の前で女が酷い目にあってるのにお前らは何で目が輝いてるんだよ…」
「二人ともスンゴイ残念そうだな」
「まぁ、私はこれに懲りて姉さまも少し大人になって欲しいんですけども」
「私もそう思うわ。一番上だからって私たちどころか、侍女や騎士団まで振り回すんだもの」
フランツとスレイはヴェロニカの心配をしているが、身内である妹二人はとてもイイ顔で笑っている。どれだけヴェロニカは妹や周りの人たちを振り回してきたのであろうか。二人の姫の笑顔はとても綺麗であるのに、この場にいない蒼介を除く四人はその顔を見てドン引きしていた。
「…(ウワァ)」
「どこの世界に行っても、威張り腐った上の兄姉っているんだな…」
「ソフィーとコゼット、スンゴイ楽しそうだな」
「それだけ周りが被害を受けたんだろうよ…」
「何の話だ」
四人がヴェロニカの我が儘について考察しているうちに、蒼介が戻って来た。蒼介の背後を見てみると、陸に打ち捨てられてしばらく経った魚のようにピクピクしているヴェロニカが見える。
「事後だな…」
「よっしゃ、死にたいなら手伝うぞフランツ」
「ハッハッハ、ゴメン許して」
「まぁ、確かにこの光景だけ見ると事後にしか見えんが…」
「…(コクコク)」
「何のだよ」
「姉上、はしたないです」
「うーん、ここまで容赦なく姉さまを沈めるとは、やりますね蒼介さん」
蒼介はげんなりとした表情で、他の面々は楽しそうに昼食を再開する。そこにソフィーとコゼットが参加する。ヴェロニカ? 放置したままである。
「蒼介さま、これからも姉上の鼻っ柱をお願いします」
「うんうん、へし折り続けてください♪」
「任せろ、色々と壊すのとへし折るのは得意なんだ」
「しっかし、蒼介は男よりも女に容赦がないが何かあったのか?」
「聞きたいか…?」
「…やめとく」
上機嫌な姉妹姫に対して、物騒な発言をする蒼介。実は蒼介は謁見の間でのキ〇肉バスター事件と今回のパ〇・スペシャルのほか、自身に対して噛みついてきたり嫌味を言う女――――――――――戦闘の心得がある者限定だが――――――――――を訓練場にて物理的にことごとく沈めている。京平は基本的に訓練場で鍛錬しているため四人にに頼んで手合わせをすることもあり、蒼介が自分と相手をしている時と比較して特に女に対して雑というか容赦がないということに気づいた。何故そうまでして女を嫌うのか聞いてみたが、無表情な上に蒼介の眼から光が消えたので恐ろしくなり、京平は聞くことをやめた。
雑談をしながらも中庭での昼食休憩は終わり、それぞれが自分の持ち場へと戻っていく。
「午後も気張っていくか」
「…(コクリ)」
「次の持ち場はー、宝物庫か」
「まだやってない水やりはどこだったかなーっと」
「まだ戻ってない本は何だったかな…」
「私たちも戻りましょうか、コゼット」
「はい、姉さま」
そうして全員が戻っていく中、ヴェロニカは未だに気絶したまま放置されていた。その前には優志が哀れに思ったのか、ヴェロニカ用に置いておいた弁当があった。




