はじめての異世界召喚 14 五人のお仕事
「しっかし、一番意外だったのがフランツだよな」
「…(ウンウン)」
「俺も最初は鍛冶師にでもなるかと思ったんだがな…」
「俺がどうしたって?」
三人がぼやいていると、横から声がした。そこには麦わら帽子に手袋、オーバーオールといったいかにも農家の人間ですといった格好のフランツが立っていた。
「鍛冶師はどこに行ったって話だ」
「…(コクリ)」
「どっからどう見ても鍛冶師じゃなく、農家の人間だな。」
「一応農家じゃなくて庭師なんだがなー…」
フランツは庭師になっていた。本人も当初は鍛冶に関係する仕事と女王に希望を出していたが、中庭を散策中に通りがかったところ城の庭師が転んで手を痛めたためにフランツが代わりにやると言い出したのがはじまりだった。ケガをした庭師の指示のもと剪定からレイアウトに加えて植え替えをしてみたところ、指示を出した庭師も舌を巻くほどの出来栄えに仕上がったとのことであった。そして、出来上がった中庭に女王がやって来たため事情を説明したところ、女王がフランツに庭師を勧めてきた。フランツ自身は趣味の領域に過ぎないと一度は断ったのだが、女王と庭師がグイグイと勧めてきたのでとりあえず了承したとのことである。
「何で一国の王子がほかの国の庭師をやってんだかな…」
「…(ウーン)」
「フランツ自身が満更でもないって顔だし、いいんじゃないか?」
「そんなことよりも、昼飯か? 早くしようぜー、腹減ったー」
だらけたことを言うフランツ。その姿からは女王から説明を受けた日の優雅さは欠片もなく、若干怠惰な年相応の少年であった。
「ヘイヘイ、スレイが来てからな」
「その肝心のスレイはどうしたんだよ」
「仕事終わらせてから来るとよ」
「いつ来るんだよ…」
「ここに居るぞ」
「ギャア!!」
だらけた様子のフランツに蒼介が説明しているうちに、いつの間にかフランツの背後にひっそりといたスレイ。さすがのフランツもいきなり声をかけられビビった。
「スレイ、時々気配もなく幽霊みたいに突然出てくるんだよな」
「…(ウンウン)」
「錬金術師兼薬師って嘘だろ、暗殺者か何かだろ絶対」
「どうにかならないのか、ソレ!?」
「どうにかならないのかって、普通にしてるだけなんだがな…」
五人は寸劇を挟んで蒼介と優志謹製の弁当で昼食に入った。ちなみに今回のおかずは大量のソーセージとトンカツと玉子焼きである。
「今日はド〇ベンの弁当を再現してみた」
「…(フイー)」
「ド〇ベンって、野球の方かよ…」
「何だ、ド〇ベンって?」
「俺に聞くな…、ってデカ!?」
蒼介と優志の作ったネタに走った弁当にそれぞれが反応をしながらも、
「最近はどうなんだ、京平」
「…(チラッ)」
「何がだ?」
「そりゃ、姫様との仲に決まってんだろ」
「お前だけが独り身だからな」
「うっさい、放っとけ!」
「というか、さっさとくっつけ。そうすれば、俺はあと腐れなく帰れる」
「…(ウンウン)」
「」
昼食を取りながら五人は雑談をする。こうした時間は意外にも貴重である。何故なら、この城には男は全くと言っていいほどいない。さらに五人の立場は女王の客人という立場であり、例外もあるがそのために通りがかりの侍女や兵士、文官などは五人のうち誰かが通りかかると頭を下げてくる。城の厄介になってから毎度のことであるが、城で働いているほとんどが女という状況に五人は居心地の悪さを感じている。
そして、その例外は――――――――――
「あー! 見つけたー!」
「こちらにいらしゃったのですね」
「私たちも一緒にいいかな」
――――――――――三人の王女たちであった。




