はじめての異世界召喚 13 五人のお仕事
~ そして、最初の調理開始に戻りしばらくの後 ~
ピークの時間を乗り切り、蒼介と優志は休憩時間に入る。
「それじゃ、自分は優志と休憩に入りまーす」
「…(ペコリ)」
「ハイ、お疲れ様ですー」
蒼介と優志は重箱のような箱をそれぞれ持ちながら、厨房から出ていく。まず最初に向かう先は兵士達の訓練場である。
そこには京平が女ばかりの兵士に混じって、鍛錬を行っていた。そして、その鍛錬も丁度終えたようである。京平は蒼介たちの視線に気づいて手早く片づけを終わらせていく。
「それでは、失礼します」
「京平~、飯だぞ~」
「…(ヒラヒラ)」
「おー、今行くー」
京平は蒼介と優志のいる場所に歩いて行く。
「あとは、フランツとスレイを拾って昼飯にするだけだな」
「…(エー)」
「拾うって扱いが酷いな…、犬か猫じゃないんだし…」
「イヤ、スレイはともかくフランツの行いを振り返ってみろ」
「…(アー)」
「否定できない…!」
蒼介の言い分に呆れた目を向ける二人だが、かぶせてきた言葉によって今度は遠い目をすることになった。
二人は思い出す。フランツがその身体能力や錬鉄術を使い、しょうもないことをしていることを。
「覗きに、逃亡…、あとはイタズラか」
「…(ハァ)」
「顔はいいんだがやってることがな…。アレが残念なイケメンか」
「その現場に何故か毎回居合わせた俺が、何度もアイツのとばっちりか尻拭いをする羽目になって…。(ケタケタケタ)」
「…(ビクッ)」
「蒼介、真顔な上に声を出さないで笑わないでくれ、怖いから!!」
どこか壊れたように感じる蒼介だが、無理もないだろう。蒼介の言葉の通り五人の中で最もフランツが問題を起こし、その問題を解決するために走り回ることになっているのだから。
加えて、城に来るまで走って馬車に並走したフランツの走る速度は馬よりも早い。蒼介も足は速い方ではあるのだが、さすがにフランツには敵わないため正攻法ではなく奇策を使っている。時には窓から飛び降りて、上から押さえつけるという方法で捕まえたことすらある。その際に「悪い奴はいねがーッ!!」と目が据わっている状態の蒼介が叫び、その逮捕劇を見ていた侍女や文官の者たちはドン引きしていた。兵士は呆れながらも感心し、男に負けていられないと訓練の内容を濃くしていった。
「異世界に来たっていうのに、このザマじゃ元の生活と大差ないな…」
「…(エ?)」
「どんな生活を送ってたんだ…」
「聞きたいか…?」
「…(ブンブン)」
「やめておく…!」
真顔で目を見開き顔の角度を傾ける蒼介。しかも目に光が灯っていないため、その様子はもはやホラーの領域である。
そうしているうちに、スレイのいる城の大書庫に到着する。
「スレイー、いるかー」
「…(キョロキョロ)」
「弁当一緒に食おうぜー」
「…わかったからもうちょい、静かにしてくれ」
近くの小さい扉からスレイが出てくる。その腕の中には大量の本があり、スレイは顎で一番上の本を抑えている。どうやら、本をもとの場所に戻す作業の直前であったようである。
「…それで見ての通りなんだが、これで仕事が終わるから先に行ってくれ」
「分かった」
「…(コクリ)」
「それじゃ、中庭に集合な。フランツもいるだろうし」
「…分かった。それじゃあ手早く終わらせてくる」
スレイのその言葉に書庫から出ていく三人。次は中庭に移動である。
「しっかし、五人とも仕事が運よく見つかって良かったな」
「…(コクリ)」
「まったくだな。でなきゃ、ヒモになるところだったよ」
召喚されてからの翌日、五人は女王に頼み込んで城内での仕事をさせてもらうことになった。女王は最初は渋っていたが、蒼介と優志の料理の虜になった料理長たちが直訴したため二人に関してはその場で許可された。
ほかの三人に関してもその場ですぐにとはいかなかったが、二日ほどでそれぞれが希望の仕事場へと配属された。蒼介と優志は優志の思惑通りに厨房へと配属された。
京平の配属先は練兵場である。京平自身が身に着けた剣術はこの国でもトップクラスのようで、模擬戦闘を見学していたところに本人が直接頼み込んで参加させてもらったようである。最初は女尊男卑な世界のために訝し気な目で見られていたが、一人、また一人と勝ち抜いていき、挙句の果てに不意打ちで飛んできた魔法まで切り落としたため実力を認められた。その際に京平の剣を教えてほしいと頼まれたが京平自身が断りひと悶着起き、落としどころとして訓練に混ざるとのことでひとまず落ち着いた。
スレイは城の中を案内されている際中に見つけた書庫にかじりつき、本来数ヶ月かけて読むような量の本をたった一晩で読みつくしてしまった。その際に本の場所も把握していたため、書庫の管理人から司書にならないかと言われ二つ返事で了承して今に至る。
「今日も連戦連勝か?」
「…(ジー)」
「おう、記録更新中だ」
「千勝でもしたら、記念にビーフシチューでも作るか?」
「…(グッ)」
「ハハッ、ますます負けられなくなったな」
「というか気づいてるか、京平」
「何がだ?」
「お前、城の連中から色々とロックオンされてるぞ」
「マジか…!?」
そんなことを言いながらも三人は歩いて行く。
そして、五人は中庭に到着する。フランツの仕事場である場所に。




