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はじめての異世界召喚 11 五人のお仕事

一週間後


「ハイ、注文入りましたー。オムライスセットにハンバーグセットが一人前ずつになりまーす」

「はいよー、それじゃあオムライス作るから、優志はハンバーグ頼むわ」

「…(グッ)」


蒼介と優志は、城の食堂で働いていた。あの日にあらん限り叫んだのに、何故こうなったのか。それは、叫んでから何日か後のことになる。




城の中に叫び声を木霊させた後、蒼介たちはこれからどうするかを話し合った。帰るまでの生活をどうするのか。女王の頼みを断ったのだから、放り出されるのは当たり前で国に頼らずに自分たちで生活するしかないだろうと五人は考えていた。


「これからどうするか」

「…(ムー)」

「どうするったってなぁ…」

「とりあえず、城に住めることになったのはいいとして…」

「確かに拠点ができたのはありがたいな」


しかし、女王はそんなことをせずに五人には城での生活を勧めたのであった。女王曰く、「先遣隊ではあれど大陸最強である帝国の軍隊を殺さずに無力化した者たちを放っておいたら、他国の者たちに唆されて悲惨なことになりそうですので」とのことであった。その他にも「ここに住んでもらえれば、娘たちを気に入ってもらえるかもしれないという打算もありますが」とも言っていたが。

そして、五人は用意された食事を平らげながら今後のことについて話していた。


「このまま何もせずにいれば、ヒモになりかねんぞ…」

「…(ムー)」

「それは勘弁願う!!」

「なら、庭の掃除でもしてみるか?」

「何もしないよりかはいいかもしれんが…」


そんなことを話し合っていると、優志が不意に立ち上がった。


「どうしたよ、優志」

『少し、厨房に行ってくる』

「飯に何か不満でもあるのか?」

『大ありだ』


フランツの疑問に対して目を見開きながら答えた。


『こんな脂っこいものばっかし、食ってられるか!』

「確かに美味(うま)いは美味いが少しくどくなってきたな…」

「こういった料理は、お国柄なのか?」

「そういうこともあるとは思うが」

「せめて口直しにさっぱりしたものが欲しいな」


そんなやり取りをしたあと優志が厨房へ行き、蒼介が優志が話せないという理由で付き添った。そして厨房へたどり着き、ひと悶着が起きた。


「あのですね、私たちが作った料理に何の文句があるんですか?」

『油がくどいんですよ』

「下級貴族の方が手に入れることが難しい高級バターをふんだんに使った料理がお気に召さないとは、とんだ貧乏舌ですね」

『こんなのを高級料理と呼ぶようだったら、貧乏舌で構わん』

「…優志ー、翻訳する俺の身にもなってくれよー…?」


蒼介のストレスがマッハで蓄積されていく。それもそのはず。何かさっぱりしたものはないか頼もうとしたら、厨房にいた料理長らしき人物が二人に対して食って掛かってきて優志がそれに応戦したからである。


「何でこうなったのかね…」

「すいません、料理長のプライドが高すぎて…」

「イヤ、アンタのせいじゃないさ」


蒼介の目の前で優志と料理長はいつぞやの時代の不良漫画のごとく、睨み合いをしている。そして不意に優志が料理長を押しのけて、調理台へ向かった。


「オイ、まだ話は―――――」

「まぁ、昼にやらかした俺が言うのも何ですが、落ち着いて」

「今度の相手は、アンタか」

「いいえ? まだ貴女の相手は優志ですよ?」

「あぁ?」


蒼介が料理長を止めている間に、優志は食材を選んでいく。その目はプロそのものであった。


「まさか料理するつもりか、アイツは…」

「料理人を黙らせるなら、料理しかないでしょう」

「…アンタも料理人なのか?」

「いいえ? 叔父が大衆食堂の大将で、大変な時に時々駆り出されてるだけですよ? 確かに料理を仕込まれた上で叩き上げられましたが…」


そんなことを言っているうちに優志は調理を始めている。しかし、その手際は全く見えない。何故なら食材をまな板の上に乗せた瞬間に、すでに下処理が終わっているからである。もはや料理ではなく何かの手品か魔法でも使っていると考えた方が納得できる次元である。


「手際が全く見えないだと…!?」

「気が付いたら終わってますよ、料理長…!」

「優志、すげーな。ウチの叔父さんと同じくらい早いぞ、アレ」

「「え!?」」


蒼介の言葉に驚愕する二人。その言葉に異界の料理人は化物ばかりなのかと二人は思った。


「…(フゥー)」

「終わったのか優志。てか、早いな」


優志が作って持ってきたものはスープとオムライスだった。


「オムライス…、ケチャップはあったのか?」

『イヤ、流石になかったからガーリックライスで代用した』


優志は蒼介に筆談してから、食えとばかりにズイッと料理長に皿を差し出した。


「…いいだろう、調理の手際の良さを認めて食ってやる。」


料理長は優志が作ったオムライスを一口食べる。そして、一瞬体を硬直させたかと思ったら一心不乱にかき込んだ。


「料理長が…、一体何を入れたんですか…?」

『普通に作っただけなんだがな』

「だとしても、あの様子は普通じゃありませんよ!?」


話をしているうちに食べ終わったのか、料理長がこちらに歩いてくる。その表情はどこか憑き物が落ちたように感じられる。そして頭を勢いよく下げてきた。


「私が愚かでした! 私に極意を教えてください!!」


料理長の豹変振りにその場に居合わせた全員が仰天する。


「優志、何か変なモンでも入れたのか?」

『普通に作っただけなんだがな』


面倒臭いとばかりに先ほど書いたものを蒼介に見せる優志。そうしていると、周りに人だかりができてきた。


「あの料理長が頭を下げた!?」

「何者だ、あの男は!?」

「今日召喚された姫様の伴侶になる男だそうだが…」

「断られたって聞いたぞ」


何やら騒ぎが大きくなっていき、優志は居心地が悪そうだ。


「モテモテだな優志」

『そういう意図でやったんじゃないんだがな』



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