はじめての異世界召喚 4
敵の撃退が終わり、一緒に逃げていた案内人の先導により蒼介たちは互いに話し合いながら歩いていた。
「そういや蒼介、さっきは片目だけ青かったのに今度は両方青くなってるが…」
「あぁ、体質でな、普段は片方だけ蒼くてそっちは見えないんだが、こうなると両方見えるんだ」
『厨二―――――』
「言うな、いや、書くな優志…!」
「何て書いたんだ?」
「読めないな、どこの文字だ…?」
「気にするな!」
「プッククク…!」
「(ピュ~)」
「お前ら…、というかそれを言うなら優志だって髪どころか眉毛まで真っ白のアレだろうが!!」
「…!(グフッ!)」
蒼介が京平の質問に答え、優志が心を抉るようなことをメモ帳に書く。蒼介にとって幸いなのは、スレイとフランツが日本語を読めないということだけだろう。現に京平は笑いをこらえられずに吹き出し、優志は知ったことではないとばかりに明後日の方向を向き口笛を吹き、蒼介の反撃によって撃墜された。
誰も先ほどの戦い――――――――――蹂躙がなかったのように平然としている。
しかし本当に恐るべきはあそこまで一方的に蹂躙しておきながら、誰一人敵を殺していないことにある。殺そうとしてきた相手を誰一人殺さずに無力化したのは殺人への忌避か、それとも殺すまでもないという余裕の表れか。
「しっかし、ここにいる5人のうち3人が日本人とはな…」
『まったくだな』
「一体何だってんだろうな…」
「ん…? 日本?」
「そんな国があったか…?」
フランツとスレイがそんな国は知らないというように、首を捻る。その反応に蒼介たちは違和感を覚え、いくつか質問をしようとするが、案内人からの声が聞こえたため中断された。どうやら目的地に着いたようである。
「どうぞこちらにお乗りください。」
「何だコレ…?」
『馬車だろ』
「そういう意味じゃなくて、無駄に豪華な装飾についてのことだろ?」
「無駄に金使ってそうだな」
「あー、ハハハー…」
蒼介が開口一番に疑問を口にし、優志が淡々と筆談で答える。京平は的確に疑問の方向性が間違っていることを指摘し、スレイは目の前の装飾された馬車に対して毒を吐く。フランツは何故か乾いた笑いをしている。
「俺、歩いて行くわー…」
「え、し、しかし、歩きでは…」
「中でお前とスレイに情報交換とか質問があるんだがな…」
フランツの一言に対して案内人と蒼介の双方が戸惑いと難色の表情を浮かべるが、それでも往生際悪く乗ることを拒否する。
「大丈夫だって、離れたって走れば追いつくし!」
「確かにあの速さなら…、てかお前もしかして…」
蒼介が首根っこを引っ掴んで無理やり馬車に乗せようとしても、どこまでも抵抗するフランツに対して京平があたりをつけた。
「もしかして乗り物酔いが酷いのか…?」
「…ニャ、ニャンノコトカニャ!?」
京平の一言に思いっきりカタコトで噛みながら動揺するフランツ。もはや誤魔化しはできないのに、精一杯意地を張り続ける。そんなフランツを周囲の人間は生暖かい目で見ていた。その視線に耐え切れず、フランツはついに憤慨した。
「あぁ、そうだよ! 次期国王なのにどうせ馬車どころか馬にすら乗れない、バカ王子だよ俺は!!」
「は? 王子…?」
「え? マジか?」
フランツの言葉に対して京平は眉間に皺を寄せ、スレイは目を見開いた。それに対し、蒼介と優志は――――――――――
「ウソクセー」
「…(フゥー)」
――――――――――ないわー、と言わんばかりに小馬鹿にしたような目でフランツを見ていた。
「オイ、どういう意味だコラ!」
「あんなでかいハンマー笑いながら振り回して、そんなアホ面した王子がいてたまるか」
「…(コクコク)」
「「確かに…」」
憤慨するフランツにただ淡々と自分の思ったことを直球で言う蒼介。他に3人は蒼介の言い分に同意のようである。
「ここにいるだろうが、ここに!!」
「ハイハイ、自称王子自称王子」
「あのー、そろそろよろしいですか…?」
フランツが孤立無援の状態になったあと、案内人がとうとう焦れて声をかけてきた。流石に時間が押してきたようである。
「しゃーないか、色々と聞くのは着いてからにするか…」
「…(コクリ)」
「それしかないな…」
「俺は乗らないがな!」
「ところで、目的地に着くまでどれくらいかかるんだ?」
「一時間半から二時間といったところです」
スレイが到着までの時間を聞き、他の面々は一名を除き馬車へと乗り込み出発した。




