ボス討伐③
いつまでもウジウジしている系主人公。
でも、仕方ないじゃないか。最弱の主人公を覚醒させるためには心理的な悩みは必要不可欠なんだから。
「クゥッ!」
守の目の前では動かない守を敵と認識しなくなった大蛇がフランを襲っていた。フランの呻き声は当然同じ部屋にいる守にも聞こえているが、守は何も行動を起こさない。
「マモル!頼む!早く救援を頼む!」
「…」
「おい!マモル!」
ついに痺れを切らしてフランが守に応援を頼もうとしたが、それでも守は動かない。
「おい!頼む!マモル!」
耳に入ってくるフランの声を聞きながら、守は様々なことを思い出していた。
平均的な学力なのに名門校に入ってしまったこと。
自分の能力が周りよりも低かったので同級生からいじめを受けたこと。
自分たちの子供が名門校に入ったと思っていたらとてつもなく低い成績をとってきたことに失望していた自分の両親のこと。
いきなり異世界に勇者として召喚されたこと。
異世界でも最下位の成績をとってしまったこと。
さっき自分が放った渾身の斬撃が簡単に防がれてしまい、あまりの実力の差に絶望してしまったこと。
そして、最下位の成績しか持たなくても自分に期待をかけてくれて、何もできなかった今も自分を頼ってくれているフランのこと。
それらの体験が守の脳裏を駆け巡った。
「グッ!」
フランの展開していた結界がついに破かれ、フランの前に大蛇が立っている。
守はこのまま一人で扉を破壊して逃げようか、と考える。だが、その度に守の脳裏に自分を見て成功体のリッチーが完成したと言って喜んでいるフランの笑顔がちらつく。
大蛇の口が開く。それを見ながら守の心は諦めに染まりー。
「助けて!マモル!」
その言葉に冷え切ったマモルの心が再び躍動する。
(そうだ…俺は何を考えていた?俺は自分の命を失うのが惜しくて他人の命を危険に晒しているのか?俺の命なんて無限にあるからいくつ失ったってどうでもいいっていうのにか?
俺は失ってしまうのか?無能な俺でも構わず接してくれた人を?
いやだ。それだけはイヤだ。絶対に…、そんなことさせやしない。)
そう考えた瞬間、世界が遅くなった。守は自分の視界がいつの間にかスローモーションになっていることを不思議に思うこともせず、スローモーションの世界を駆け抜け、フランの方に向かった。
次の瞬間、大蛇がフランに向かって炎を吐き出した。




