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剣豪幼女と十三の呪い  作者: きー子
三章/銘々の守護者
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二十二/アースワーズ

 その部屋は〝工房〟と呼ばれていた。領主城館の屋根裏に位置し、広々とした空間を所狭しと数十体の人形が埋めていた。

 金髪の女はほうほうの体で部屋に駆け込み、そしてうずくまった。肩を上下させ胸を弾ませ、ぜえぜえと荒い息を繰り返す。


「なるほど。こんなところであったか」


 声がした。次の瞬間、扉は無情にも蹴破られた。

 扉の向こう側には刀を提げた少女がいた――カイネ・ベルンハルト。

 カイネは頬の傷をそっと拭い、指の腹をちろりと舐める。


「な――ぁ、な、なんでここが……ッ!」

「ちょうど逃げておるところを見つけてな。()けさせてもろうたぞ」


 地下室を出てから人形兵の足止めを食ったせいで追いかけるのが遅れてしまったが、どうやらふたりは無事にソニアを退けられたらしい。

 そのことを悟ったカイネは、ソニアの身柄を確保することを優先し――そして、彼女の〝工房〟に至った。


「……ずいぶん厳重に隠しておったものだな。それに、この人形……」

「さわっ……触るなッ、下郎ッ!!」

「壊しやせんよ。大切な証拠になるからな」


 カイネはうずくまったままのソニアを無視して部屋の中に探りを入れる。

 室内に置きっぱなしの人形にはいくつか作りかけのものがあったが、それよりもさらに多いのは、ソニア・アースワーズを模したと思われる人形の群れだった。


 カイネはおもむろに抜剣し、ソニア本人に歩み寄る。彼女は怪訝そうにカイネの顔を見上げる。


「……わ、私をどうするつもりですの。ころ――ギャアアアアアアッ!?」

「おや。相済まぬ」


 カイネは剣先を突き立てたソニアの掌に視線を落とす。

 貫いた一点からは止めどなく女の血が流れていた。目が覚めるような赤色。紛うことなき生者の証。


「おまえさんは生身であったのだな」

「あっ……あ、当たり前でっ……うぐッ、ひ、ぎッ……!!」


 痛みのあまり呼吸困難に陥りながら悶え苦しむソニア。カイネが無造作に剣を抜くと、またひときわ甲高い絶叫が上がる。


「……しかし、妙だな」

「……な、なにが、言いたいわけ……?」

「おまえさん、自分の人形に裏切られたことくらいはわかっておろう。しかし、あのようなものは今まで一度も無かったのか?」

「――なんであなたに、そんなこと……」

「言わねば腕の先から寸刻みにしていくぞ――と、いったら?」


 カイネは懐紙を取り出し、血に濡れた切っ先を拭いながらうそぶく。ソニアを見下ろす無感情な赤銅色の瞳。

 ソニアはごくりと生唾を飲み、汗みずくの顔で頷いた。


「……ええ、無かったわ、一度も。というより、技術的に不可能なはずなのよ。起きるはずがなかったのに……」

「……ふぅむ?」


 ソニアの口振りからするに、形の似通ったものが同質の魂を形成するという現象を勘案していないわけではなかったようだ。


「なぜだ」

「……それは」


 ソニアは口ごもり、カイネはそれに合わせてゆっくりと刃をかかげる。


「わ、わかったわ、わかったってばッ! 話せば、話せばいいんでしょう!?」

「わかればよい」

「…………私が模しているものは、人間の構造に過ぎない。そこに個人の皮を被せているだけ。個人については表層的な理解に留まるから、模することもできない。魂が宿るとしても、それは個人としての人格を持たない〝殻〟のようなもの……に、なるはずなのですわ」

「にしては、それぞれの人形兵は骨組みから違っておるように見えるが……」

「いくつかの類型がありますの。そこから誤差の範囲内で変化をつければ、みんな違っているように見える――――あなたの人形も、類型の原型となったひとつですわ?」

「……なんと言っていいものやらわからんが、よくも二百年前の人間を作ろうなどと考えたな」


 カイネは感心半分、呆れ半分というように息を漏らす。

 ソニアの話を真に受けるならば、なぜイルドゥが人格を得たかは全くの偶然ということになってしまう。

 あるいは――


(個人の皮をかぶせるだけで……表層的な理解だけで、あとは些細なきっかけがあれば……それで十分、ということなのか?)


 イルドゥが同士討ちを始めたのは、シャロン(の虚像)が危険にさらされるのを目の当たりにした次の瞬間だったという。

 カイネは解せぬというように頭を振り、工房内の人形に目を配る。


「こやつらは、おまえさんを模造したものか」

「……ええ、そうよ。それこそ、私が魂の複製に見切りをつけた理由……だって、私は誰よりも私のことを理解しているわ? その私が、私自身の魂を複製することはできなかったんだもの。……それが赤の他人ならなおさら、とは思わないかしら……?」

「……理屈は通っておるが――」


 カイネは首肯しかけ、ふと引っかかりを覚えて問う。


「つまり、複製をやろうとはしておったわけか。おまえさん」

「……ええそうよ。それが、どうかしたかしら……?」

「ならば――もし成功したらどうなるか、ということも当然考えておったろうな?」


 ソニアは苦しげにうずくまったまま、ぶるっと肩を震わせる。掌の傷口を押さえつける手が赤い血の色にまみれていく。


「も、もちろんよ。もし私がふたりいれば、こんな事態にはなっていなかったでしょうね」

「ほう。こうは考えなかったか?」

「……なに、を――なにを、言うつもり?」


 そう問いかけるソニアの表情は、次にカイネが放つ言葉を恐れているようでもあった。

 カイネは言った。


「完全な複製に成功すれば、もう『本物』など必要なくなるのではないか――とな」

「……ばッ」


 馬鹿いいなさい、ととばかりにソニアは端正な顔を歪める。しかし言葉が続かない。


「違うか? 何が違う。この城の守りは人形で事足りておったろう。それとも、生身の指揮官さえおれば結果は違ったとでも言うか?」

「ち……ちがッ……」

「言えるわけはなかろうな。でなければこれほど偏執的な真似はすまい。周りに置くものを人形に置き換え、守備兵を人形に置き換え――自分を複製する段に至って、置き換えぬでもよいわけなどあるわけがない」

「かッ、勝手なことを言わないでくださるッ!? 複製、修繕、他の人形の采配、私でなければできないことなんていくらでも――――」

「それらを代替できぬのであれば、おまえさんの複製とは到底言えぬまがいものであろうな」

「ッッ……!!」 


 カイネはソニアの反応をうかがい、おおよその経緯を推測する。

 技術的に不可能だというのはおそらく偽りであろう。でなければイルドゥが人格を得たことに説明が付かない。

 彼女には確かな技術があったはずだ。それこそ、魂を複製し得るほどに精巧な人形を制作する技術が。


「自らの存在が不要になるかもしれぬと思えば職人の手も鈍らぬわけはあるまい。……日和ったのであろ、おまえさん。だから俗世の権威などに固執する――」

「――――あ、あ、ああぁぁぁぁぁッ……!」


 ソニアは悲嘆の声を上げて両手を力なく床につく。生身の血の色がべっとりと床につく。彼女の手は床に転がっている投射筒を求めてさまよい、ゆっくりと手を伸ばしかけ――


 かんっ。

 からからからから。


 カイネの爪先が筒を蹴飛ばした。くるくる回りながら床を滑っていくそれは、部屋の壁にぶつかってようやく動きを止める。


「あ……」


 呆然とカイネを見上げるソニア。


「すまぬが楽には死なせてやらん。オーレリア領への侵入工作、魔術学院への大規模侵攻……余罪も含めてきっちりと吐いてもらうぞ?」


 カイネは刀の柄尻で彼女の後頭部をしたたかに打ち、その意識を速やかに刈り取った。

 昏倒したソニアを拘束してから引きずるように〝工房〟を出る。部屋の中もじっくりと調べたいのはやまやまだが、ろくに知識がない自分だけでは意味がない。ソニアの沙汰を仰いでから、改めて調査する過程などで詳しいことも明らかになるだろう。


(置いていかれぬうちに行かねばな)


 クラリーネも、セルヴァもすでに外に出ているはずだ。

 カイネはソニアを引きずるがまま、足早に領主城館の外へと歩み出した。


 ***


 それからの数日は矢のように過ぎ去った。

 カイネ、クラリーネ、セルヴァ、ジョッシュの四人は無事に合流を果たした。彼らはまず国王直轄地に向かい、ソニア・アースワーズはそこから王都まで護送されることになった。魔術学院襲撃についてはまだ未確定だが、一貴族――セルヴァ・グロワーズを監禁していたことは決定的であるからだ。


 護送を担当する憲兵隊から「セルヴァ殿の救出を主導したものは誰か」と問われ、「クラリーネ殿です」とカイネはいけしゃあしゃあと答えた。

「……どういうこと」とクラリーネは眉をひそめるが、カイネは「必要な措置でな。ちと済まんが、おまえさんは名を挙げとくれ」と悪びれもしなかった。


 王都への護送は無事に済み、ソニアへの取り調べが始まる。

 決定が下るまでには多少の時間がかかるだろうが、アースワーズ領に戻される目はすでに無いという。

 正当なアースワーズ領の後継者であるシャロンに代わり、セルヴァ・グロワーズが臨時領主として赴任することが決定したからだ。


 これにてカイネ一行はお役御免。セルヴァはなるべく領地を空けておきたくないと、一足早くアースワーズ領に出発することが決まった。


「感謝いたします、カイネ殿。この度はどれほど礼を申し上げれば……」

「おれに言うのは筋が違っておろうよ」


 出発の馬車に乗り込む直前。この時のセルヴァは、地下牢から救出したときとは見違えるほど精悍な風貌を取り戻していた。

 不快な悪臭や着衣の乱れが無いのはもちろんのこと、騎士としての実直さと重ねた年月に由来する和やかさが同居するような顔立ち。痩せ衰えかけた身体は元通りとはいかずとも生気に満ち、全盛期の名残をかすかに感じさせる。


「おぉ、これは失敬。そうでした、そうでした」


 セルヴァはカイネに向かって丁重に礼をすると、改めてクラリーネに向き直る。

 実際のところ、彼女の活躍が無ければセルヴァを生きて帰らせることは困難だった。カイネだけでは精々ソニア・アースワーズを始末するまでが限度であろうか。


「私は、いいのに」

「何を仰られますか。今、私がこうして生きていられるのはまさにあなたのおかげなのですから――真に、感謝の念に耐えませぬ」


 セルヴァは頭を深々と下げ、たかだか齢十五の少女にすぎないクラリーネに――命の恩人に礼を尽くす。

 しかしクラリーネは形ばかりの礼で応じ、言った。


「だって、私はセルヴァさんのこと、どっちでもよかったって思ってるから」

「なにを言い出すかおまえさん」


 これにはさすがにカイネもぎょっとする。セルヴァが困惑げに目を丸くする。


「私はただ、シャロンを悲しませたくなかっただけ。――だから、お礼を言われるのは変な感じがする」

「ははは、そういうことでしたか」


 セルヴァは納得げに頷き、微笑む。


「いやはや、正直なお嬢さんだ。……それでも構わんのです、あなたに助けられたことは事実なのですから。……なにとぞ、シャロンとは引き続き仲良くしてやってくだされ」

「頼まれずとも」


 クラリーネは改めて丁重に礼をする。カイネは一連の様子を眺めながらほっと一息。


「……正直なのはよいが、正直者がすぎるであろうよ」

「保護者に似てきたんじゃねェか?」

「……やかましい」


 カイネの護衛のごとく後ろについていたジョッシュがぽつりと一言。反射的に言い返す言葉を探すが、あまりにもその通りだったので悪態をつく他にない。


「それではまた、ご縁があらば。――シャロンにも、どうか私は無事であるとお伝えくだされ」


 セルヴァはその一言とともに馬車に乗り込み、王都ロスヴァイセを出立した。

 無事な顔ひとつ見せてやれぬのは難儀なことであるが、アースワーズ領内を支配していた〝人形遣い〟が消えた以上、近いうちの混乱は必至であろう。シャロンに領地を引き継ぐ時のためにも、領内の立て直しは急務であった。


「……これで一段落、ってことになんのかね。面倒事はだいたい片付いたよな?」

「まぁ、一応はの」


 残された懸念は、領主城館の屋根裏部屋――〝工房〟から何が出てくるかということだ。

 あの部屋には国王直属の査問機関が入り、魔術としての研究対象になるものは後でまとめて魔術学院に送られてくるという。


 そのことを言うと、ジョッシュはあっけらかんと言った。


「要するに今は待つしかねェってわけだ――ゆっくり羽伸ばしてゆっくり戻ろーぜ。急ぐ理由もねェだろ?」

「早く帰りたい」


 とは、今回の功労者であるクラリーネの弁である。


「……なんだ、なんか急ぐ理由でもあんのかい?」

「授業。置いてかれる」

「それは困るな。明朝には発つとするか」

「それがいい」

「……うっす」


 そういうことになった。

 ジョッシュに拒否権はなかった。


 ***


「――攻性呪働甲冑〝妖精式〟」


 カイネは静かな呪文を耳にして目を覚ました。その時すでに花弁のような白銀の〝妖精〟が複数、宿の部屋の窓を睨みつけていた。


根源(マナ)解放――――」

「まて、落ち着くがよいクラリーネ。撃つでない」

「変質者。カイネさんをじっと見てる」

「変質者ではない。いや変質者かもしれんが、知っておるやつだ」


 カイネは跳ね起きるように身を起こしてクラリーネを制止する。彼女は怪訝そうに振り返り、今にも白い光を放とうとしていた〝妖精〟の矛を収めた。

 カイネは窓の鍵を開け、クラリーネの前に立ちながら一歩ずつ身を引く。


「……普通には入ってこれんのか、(おまえさん)は」

(おれ)の城であれば話は別だ。しかし、市井に安易な顔出しでもしてみろ――すぐに大騒ぎになって近衛どもが駆けつけてくるぞ。それは我が望みではない」


 ひとりの男が窓から部屋に入ってくる。垂れ袖の清楚な服を身に着けた金髪碧眼の美青年。

 クラリーネはしっぽを踏まれた野良猫のように敵意をむき出しにする。


「誰。あれは何」

「王だ」

「……王?」

「王、らしい」


 クラリーネのいぶかしげな声にカイネは若干自信を失いながらも言う。

 男は威風堂々たる姿勢で床に降り立った。


「辺境くんだりから訪ねてきたとなれば俺の風采を知らぬも道理というものか。見事な迎えであった、ルーンシュタットの末娘よ。王への名乗りを許す」

「……知ってるのに?」

「儀礼的なものだ」

「……クラリーネ・ルーンシュタット。王といえど、ゆえなき侵入者への対応にお詫びはいたしかねます」

「肝が座っているな。我が名はアルトゥール・ワレンシュタイン――王だ。覚えておくがよい」


 男――アルトゥールは静かに名乗った。クラリーネはなおも警戒を解かなかった。

 王として振るわねばならぬというのも難儀なものよな。カイネの内心もよそに、アルトゥールは透徹とした目でふたりを観察する。


「先の対応もそうだが――あながち名を使ったというわけでもないようだな、カイネよ」

「陛下は耳が早くあらせられる」

「皮肉ってくれるな。幸い此度は朗報だけだ。気を楽にせよ」

「……左様であったか」


 彼から言い渡された忠告は、カイネの心の中に残された懸念事項のひとつであった。

 クラリーネはふたりの間に視線を行き来させ、ぽつりと言う。


「ふたりは、どういう仲なの」

「婚約中だ」

「袖にした相手だ」


 ふたりは端的に応じた。どちらも正しい答えだった。クラリーネは得心げに頷き、王に蔑みの目を向けた。アルトゥールはそれを一顧だにしなかった。


「今回、貴様は裏方に徹していたようだな。それが奏功したというべきか、ことが大きくなりすぎたというのもあるが……魔術学院が主体となった事件として処理できよう。――このような事が起こったというのは頭の痛いことだが」

「木を隠すならば森の中、というやつかの――実際、おれの助力など微々たるものであるしな」


 カイネはかたわらのクラリーネを一瞥する。彼女は少し恥ずかしげに白銀の端末を招き寄せ、つと目を伏せた。


「そして、もうひとつ。ソニア・アースワーズのことだ」

「……あやつのことで、なにか関係が?」

「直接にはないかもしれんだろうが――ソニア・アースワーズはいかにしてあの忌まわしい術を得たか。あれはアースワーズ家に代々伝えられてきたものか、ということだ」


 アルトゥールのつぶやきに、クラリーネはぴくりと肩を震わせて反応する。

 それはシャロンにも関係することだ。なぜ彼女は呪術に関する知識、ひいてはマギサ教の〝十二使徒〟である自認を一切持たなかったのか――


「興味があるようだな、クラリーネ・ルーンシュタットよ」

「聞かせてください。国王陛下」

「よかろう」


 アルトゥールは首肯し、ソニアから聞き出したという情報を手短に述べる。

 人形制作――〝人形代(ミスレコグニション)〟とあだ名されたアースワーズ家の呪術はシャロンの祖母――先々代に至るまで代々伝えられていた。しかし彼女はこれを次代に伝えようとはせず、親子二代で研究成果の全てを破棄するつもりだったという。

 先々代の死後、〝人形代〟に魅入られたのが当主の座を逃したソニア・アースワーズだった。彼女は姉の手によって破棄されかけた過去の資料を確保し、呪術の研究に明け暮れ――その忌まわしい力を体得した。


「……そういう、こと」

「姉は自らの代で消し去ることを望み、妹の方は力の独占を望んだわけだ。――娘が何も知らぬのも道理であろうな」


 以前クラリーネが推測した通り、シャロンが呪術と関わりを持たないことはすでに明らかであったろう。

 それでも彼女は安堵の息を吐く――その関わりを完全に断ち切ることができたということに。


「余罪が山ほどあるであろう、極刑は免れ得ないが――あの女、少数だが依頼されて人形制作を請け負っていた節もある。もし何かあれば遣いをやろう」

「相済まぬ、世話をかける。……しかし、今回のことも遣いで済ませればよかったのではないか?」

「この俺に、貴様の顔を拝む機会を減らせというのか?」

「減らせ」

「これ以上減らせば無くなってしまうではないか――だが許す。貴様の言葉であればいずれも()いものよ」

「クラリーネ、撃ってよいぞ」

「わかった」

「貴様らはしばしば本気でやるんじゃないかと思わせるところがあるな! だが許す! 許すぞ! 緊張感があって良い!」


 クラリーネがおもむろに〝妖精式〟を励起させた時、アルトゥールはすでに窓のへりに足をかけていた。

 一瞬後、遠い足音とともに夜の静寂が訪れる。

 カイネとクラリーネはお互いに神妙な顔で目を見合わせ、口を開いた。


「……寝直すか」

「うん」


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