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始まりは手短に

新しい連載始めました。よろしくお願いします。

「ああ、空が青い。」


 俺は空を見上げ、一人呟いた。


 俺こと水無瀬終夜みなせしゅうや。目立つこともなければいじめられることもない、ごく普通の高校二年生である。

 今日もつい数時間前まで学校の授業について思いをはせていた。しかし、


「どうしてこうなったんだろうな。」


 只今、誰もいない荒野のど真ん中に立っている。






 事の起こりは俗に言われる『テンプレ』と言われるものだ。よくあるネット小説の『異世界召喚』というやつだ。今時使い古されたそんなものに巻き込まれる羽目になるとは思ってもみなかった。誰だ責任者、出てこいや。いや、すぐに出てきたんだったな。

 とにかく教室でぼんやりしていると突然地面が光り、あっという間に視界はホワイトアウト。思わず目をこすると白い世界で女神とか名乗る、美人だが実年齢は何千歳だという若作りしているおばさんにあった。女の子が着るようなひらひらのデザインの、おばさんが着ると痛々しい真っ白のドレスとか着ていて俺は「ないわー」と思ったことを言った。すると、自称女神は激怒し「あなたに『ギフト』はあげませんわ。バーカ!」とこっちが「子どもか」と突っ込みを入れたくなる発言をし、今度は視界がブラックアウトした。

 ハッと気づくと目の前には変な方々がいた。ファンタジーの神官が着ているような白い服に銀糸の縁取りの長いマントを羽織った方々だった。場所も無難な教室からファンタジーにありそうなな無駄に金のかかっていそうな目に痛いど派手…いや、荘厳な神殿に代わっていた。


「まあ、勇者の召喚に成功したのですね!」


 突然聞こえた声のほうを向くと、二次元の登場人物も裸足で逃げ出すほどの美少女が立っていた。一緒に召喚されていたらしいクラスメイト達が(男女関係なく)息をのむのが聞こえた。俺は嫌な予感がした。

「突然申訳ありません。私はこの世界・ハルモニアにある聖マーリア王国が第一王女、リリネット・ラフランシア・ミュラ・マーリアと申します。」

 名前長ぇ。クラスメイトの名前もうろ覚えな俺には覚えられん。

「どうか、あなたたちの力をお貸しください。」

 そういうとリ…何とか王女はいきなり俺たちに頭を下げた。何がしたいんだ、こいつ。


「あ、頭を上げてください。一体何があったのかわかるように説明してください!」

「そうです!私たちは何が何だかわからないんです!まずは説明、話はそれからです。」


 正義感が強い正統派イケメンのクラスメイト・春風光輝はるかぜこうきが王女に向かって慌てたように話しかけた。その隣で春風の幼馴染らしい正統派美少女のクラスメイト・夏島朱里なつじまあかりも追随した。すぐそばに二人と仲のいい、ワイルド系イケメンのクラスメイト・秋川太陽あきがわたいようとクール系美少女のクラスメイト・冬木ふゆきルナが立っていた。

「すみません。…話は長くなりますが聞いていただけますか?」

 二人の声を受けて、王女は凛とした表情で俺たちを見た。…どうでもいいけど話が長くなるなら俺寝るわ。昨日オンラインセッションやってたから眠いんだ。え、温度差ありすぎ?違います。みんなのテンションが高いだけだ。




「つまり、500年前に封じられた厄災を招く魔神が悪い一族・魔族の王・魔王の手によってこの世界に解き放たれてしまった。このままでは世界に災いが訪れる、それに対抗できるのが異世界から女神の加護『ギフト』を与えられた召喚者・勇者だけということなんですね?」

「違いありません。全てが終われば皆さまは元の世界に戻れることでしょう。」


 はっ!居眠りしている間になんか話が終わっていた。言ってることに面白みが無く、ほとんど聞き流していた説明を成績学年トップの冬木がまとめてくれていた。ありがたい。

 王女が冬木がまとめたことを肯定したことによりクラスメイト達がざわめいた。ファンタジーな展開になんかやる気が刺激されているらしい。

「皆さまは女神・エウエアーレ様にお会いしていらっしゃるはずです。そこで『ギフト』を授けられたことと思います。さあこちらへ。」

 神官長、と王女に呼ばれたおじいさんが俺たちより少し離れた場所で、水晶玉をもって立っていた。

「さあ皆さま、この水晶に手を翳してください。この水晶は『ギフト』に反応して光輝きます。光を確認次第、ステータスの確認へと移りたいと思います。」

 王女が俺たちを誘導し一列に並べた。クラスメイトは皆『ギフト』を持っているらしく、水晶玉が光っていた。特に春風、夏島、秋川、冬木は『レアギフト』と呼ばれる珍しく強力なものらしく、水晶玉の輝きも凄まじかった。だって直視できなかったし。


 俺の番が回ってきた。水晶玉に手を翳すが、光らない。当たり前だ。女神おばさんは俺に『ギフト』を与えていない。


 王女も周囲の人間も困惑。審議の結果、他の勇者に悪影響を及ぼさないようにと城の離れに隔離された(神殿も城の敷地の中にあった)。春風は俺をかばったらしいが正直どうでもいい。早く家に帰り、キャンペーンセッションの続きがやりたい。俺はそう思った。

 しかし、別室で待っていたのは屈強な兵隊だった。鎧で身を固めた彼らは俺に剣を突き付け、荷馬車に乗るよう促した。逆らうのもだるく従った。どうやらこの国の一部のお偉いさんが『ギフト』を持たぬ勇者を気味悪く思ったらしく、俺の放逐を命じたらしい。兵隊が言っていた。大の大人の口が軽すぎて、この国の機密保持の面で心配になった。

 荷馬車で運ばれた先は荒野のど真ん中。何をすればいいのか聞く前に兵隊はとっとと城に戻った。






 冒頭に至る。


「…展開早くて助かるわー。」

 そんなことを呟いた俺の前に、やけに鬣の長いライオンもどきが現れた。たぶんモンスターだろう。さっきの兵隊が俺を運んでいるときに「モンスターに食われておしまいだろう。かわいそうに。」と言っていたし。


《ガァアァアアァーーー!》


 飛びかかってきたそいつを俺は一瞥し、『ふっ飛ばした』。


「やれやれ。俺が超能力者じゃなかったら危ない目にあってんぞ。」


 ひくひくとひくついているモンスターを無視して、先ほど『透視』で見つけた近くの町まで行くことにした。『瞬間移動』で町の近くまで行けばいいだろう。5キロ以内の『透視』圏内に入っていたし、すぐに移動できる。そこで情報収集してから今後の方針を決めようと思う。

「ダイスの女神がいない世界なら、ファンブルはない。ならきっと大丈夫だろう!」

 でも、固定値がないのは心配だ。






 こうして、超能力者TRPGゲーマーは異世界を旅することとなった。

一人称に挑戦しましたが、難しいですね。

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