悪役令嬢回避のため頑張りました!・・・のに。
正統派悪役令嬢な転生ものが書きたかったとです。
こんにちは、はじめまして。私の名前はエルヴィエラ・ロードリート。
なんとなく分かっているでしょうが転生したら乙女ゲームの悪役令嬢になってましたわ。
そのときの私の絶望をどう伝えたらいいのでしょう。なにせゲーム中のほぼ全ルートで没落、追放、死亡というテンプレを制覇する令嬢に生まれ変わってしまったのですから。
唯一ましな結末では生死不明かしら。ほぼ死んでるみたいな描写でしたけれど。
なので私はそんな結末を回避するべく悪役回避を試みました。
そもそもこの世界を舞台としているゲーム「きみがくれた世界」通称「きみくれ」でなんで私が悪役令嬢化するといえばヒロインが私の異母妹であるからなのだ。
あらすじとしてはヒロインは平民の子として母と二人で暮らしていたもののある日病で母が亡くなり血のつながった親であるロードリート伯爵(父)を頼らざるをえない状況になる。
ヒロインは正妻である母と父が婚約する前にヒロイン母と秘密のおつきあいをしていた期間の間にできていたが父の将来とかもろもろを思いヒロイン母はなにもいわず父の前を去っていった。そのため父はヒロイン母のことを密かに気にかけておりその娘であるヒロインを引き取る。
がそれが面白くない人物がいる。私である。
母は気にしていないようにみえるが内心は悲しんでいる。それを感じ取ったエルヴィエラはヒロインに対して敵意を抱く。
それだけならば表面上は平穏だったのである。
だが引き取られ魔力があることが発覚したヒロインは貴族の通う学院へと編入。そこで攻略対象たちに出会い仲を深めてゆく。
ちなみに攻略者たちは有力な貴族、人気者、天才とかテンプレである。
その様子を同じ学院に通いながら見ていたエルヴィエラの何かが壊れる。
攻略者たちにはそれぞれ婚約者がいた。にもかかわらず平民の血を継ぐヒロインと愛をはぐくむその姿に過去の父とヒロイン母をかさね、婚約者たちに己の母を重ねた。
そこからはエルヴィエラの悪役令嬢物語の始まりである。ヒロインに嫌がらせはあたりまえ。攻略対象とひきはなすべく別の人間をあてがうべくけしかけたり。だがこれは序章だ。
1年の途中で父が死にロードリート家をエルヴィエラが引き継ぐとさらにヒロインに前当主暗殺の疑いをかけ追放しようとする。
まぁテンプレで逆にこっちがやられるんですけれどね。
さて、悪役令嬢を回避するために私がするべきことはなにか?
答えはヒロインの母が死なないようにすること。
もともとヒロイン母が亡くなったことで父に頼らざるを得なくなったのですからその原因を潰すことにいたしました。
幸いヒロイン母の死因の病は平民には高くて手が出せないだけでちゃんと治療薬のあるものでしたのでこっそりその薬を流せば万事解決ですわ。
まぁ、ちょっと私の懐が寂しくなりましたけれど。背に腹には代えられませんもの。
これで私の将来は安泰。
そう思っていた時期がありましたわ・・・。
打撃音飛び交う学院の噴水のある中庭で私はその光景をただみつめながら過去に思いを馳せて現実に目を戻します。
目の前では私の異母妹であるヒロイン、セレナ・エトワールが攻略対象の一人である騎士フェリオ・ドルゲーザを殴り飛ばしている光景がありましたわ。
なにこの光景、とか、ヒロインの家名エトワール?とか皆さん思ったんじゃないでしょうか。
そうですね、あえていうなら世界の修正力が働いてしまった結果というのが正しいのではないでしょうか。
「エル様、見てくださいましたか私の勇姿!!」
とても晴れやかな笑顔でこちらに手を振るセレナ。
その頬には先程殴り飛ばした際に飛び散った血がべったりと。とても乙女ゲーのヒロインとは思えないオプションがついてしまっています。
私はそっと彼女に近付き手持ちのハンカチでその頬を拭う。
それに「ありがとうございます!」と嬉しそうに笑う少女。
その愛らしい笑顔は皆が愛するであろうヒロインのものでした。
ヒロイン母は死ななかったがある日セレナは己の中の魔力を暴走させる。それは平民にはあらざる力であった為彼女は跡継ぎのいない貴族の家に養子に入ることになりました。
それこそがエトワール子爵家。原作よりランクはダウンしましたが彼女は貴族の一員となりこの学院へやってきたのでした。
それならば彼女は普通に貴族の娘として暮らせたのでしょう。
だが世界の修正力はそれを許さなかったようでした。
セレナはいつの頃からかこの世界の声らしきものを聞くようになったそうです。その声はセレナにこう囁きました。
『学院で攻略対象たちを落とすのだ。さすればそなたは幸福な結末を迎えられるであろう』と。
これをセレナから聞いたとき私はなんてこと!と心の中で悲鳴をあげました。
でもなぜこれが攻略対象たちを殴ることに繋がるというのかとも思ったのでその場でセレナに聞いたのです。彼女は答えてくれましたわ。
「頑張って皆さんをオトせるように父に頼んで武術の先生を紹介をしてもらったのです。ちゃんとオトせてるでしょう?」
純真な少女は"攻略を落とす"を"攻略対象(の意識)を落とす"と曲解したのですわ。
これをセレナから聞いたとき私はなんてこと!と心の中で(以下略
さまざまな理由でボロボロになって意識を美少女に刈り取られていく攻略者たちを私はただこの目に焼き付けていくことしかできませんでしたわ。
え?セレナの誤解を解かないのかって?
所詮私は自分の身が一番かわいい矮小なる存在なのです。そう私は私の平和のために彼らを見殺しに・・・
まぁ正規ルートだと彼らにボロボロにされるのは私なのできっとこれでいいのでしょう。そういうことにしておきましょう。私の平和のために。
でもひとつ疑問が。
「あの、セレナ。謎の声はあの方達をオトせばセレナが幸福になるといっていたのよね?セレナは今幸福なのかしら?」
そう、セレナは幸福な結末のために努力した(方向を盛大に間違えましたが)のに肝心の結果が返ってこないという状態になっているはず。なのに未だ攻略対象たちをオトし(物理)ているのはなぜでしょう。
そう訊ねるとセレナは花開くような笑みを浮かべました。
「幸福です。覚えていますか私が最初に彼らの一人をオトした時のこと」
「覚えていますわ。あれが貴方との出会いですもの」
そうその時は確か学院の裏の森で。
私は何故かいるセレナに話を聞きたくて彼女が一人になるときを伺っていたのだ。
そこで攻略対象の王子であるエルフリードを絞め落とすセレナに出会ったのだ。
そして思わず声をかけた。そこでなにをしているんですの、と。
「ええ。あれが無ければきっと私はエル様と出会えなかった。お話なんてできなかったでしょう」
「そ、そうかしら?」
「はい、だから私は幸福です」
微笑むセレナに私も笑顔を向けました。
・・・友情、ですわよね?
その後学院を卒業後、なぜか国では同姓婚を良しとする法律ができた。
私は国外逃亡を決意した。
本当はヒロインやんでれてメリバとかやろうと思ったけど誰得だよ!と思い直してギャグおちっぽく終わりにしました。
はたしてエルヴィエラは逃げ切れるのか。その結末は貴方の心の中に。
また百合オチに逃げてしまいました。
ちゃんと恋愛かきたいです男女の。