神の子
お風呂の探険は、なんだか私の心の息継ぎになった。
何をしていいのか
何をしてはいけないのか
サッパリわからない異世界で、身動き出来なくなってた気持ちが、ちょっとだけ、緩んだ。
何もしないままに、何かに恐れて、ただジッとしてたんだとわかった。
でも、毎日は特に変わらない。
OOOOOO
「あれは何だ」
「王様、私ごときにわかろうはずがございません。」
「、、、」
不機嫌に黙りこんだ王に、しかたなしに言葉をつなぐ。
「お姿は少女、特に恐ろしげな気はございません。
こちらを興味深げにご覧になられますが、けしてわれらの手をとめたり、妨げたりはなさりません。」
「、、、」
「あるじさま。
ご自分の目で耳で、確かめ、感じられませ」
世界は受け取る人により、少しづつ違うのだから。
おかしなもので、あの少女を見ることを楽しみにし、姿を確認して安心し、目が合うと緊張し、そんな出来事を繰り返すことに喜びと、少しの何かわからない気持ちがある。
OOOOOO
「ひめさま」
窓辺の少女がゆっくりと振り返る。
「今日は一段とお美しゅうございますね。
何か良いことでもございましたか?」
口数の少ない少女は、少し頬を染めて俯きがちに頷いた。
その愛くるしさに思わず抱きしめ、頬ずりしたくなるのを堪え、着替えを促す。
彼女はどんなに幼く稚い姿をしていようと神の子であり、怯えさせたり、悲しませてはならないと、神官からきつく申し渡されている。
思うままに過ごさせ、見守ること。
これが、神の子を預かる掟。