コウキュウ
人の気配で目が覚める。
「気が付かれましたか?」
優しい声、夢見心地、、
「ひめさま、、?」
ヒメ?
なんのこと?
○○○
「ひめさま、ひめさま、王がお帰りになられますよ!」
!
とうとうか、、
私は仮の快適生活の終りに、落胆を隠せない。
緊張なさることはございません、と白い女性達が慰めてくれるが、私はヒメなぞではなく、ただの大学、いや、卒業したんだから、フリーターだ。
辛く、終りのない就活を思い出し、更に気分が滅入る。
すっぽんぽんで沐浴の泉に湧いた私を、何故かヒメと呼んで世話をやく女性達には何をゆっても通じないので、もはや色んなことを諦めつつある。
それでも10日ほどの間衣食住世話して頂いたお陰で気力体力ともに充実した私は、叩きだされてもやっていけそうな気がする。
いや、本当は心細いから、ここで雇って欲しいんだけど、全然相手にされないのだ、悲しい。
その王様が、どっか住み込みの仕事とか、斡旋してくれないかなァ、、
○○○
久しぶりだ、ひと月ほどか
長かった
溜まる仕事もあるが、湯でも浴びようと後宮、といっても側室の一人もいないが、へ知らせをやる。
女官長が現れ、沐浴場の前で礼をとった。
「おめでとうございます、王様。
姫様がお待ちかねですわ。
本当に愛らしいお方、私は嬉しくて!」
乳母だったランは感極まる風に訳のわからないことを口走った。
「ささ、中で姫様がお待ちです。」
なんだ?
ヒメ?
風呂は独りでゆっくりしたいことを、誰より知っているランの言葉に見送られ沐浴場へ入る、女官は誰もついて来ず、やはりいつもの通りだ。
なかを見渡すが、人影はない。
疑問は残ったが、湯に浸かるのが先だ、小剣を下ろし、服を脱ぐ。
湯に浸かり、身体を伸ばすと長い息をつく。
火の精霊の加護をうけた身には、この泉はこの上ない癒しだ。
急に外が騒がしくなった。
女官が粗相でもしたのか、ランの咎める声がする。
その声が近く、寄ってくると、入口から失礼を詫びるランの声がかかった。
何事かと気怠く目をやると、見たことのない
女が所在なさげに立っている。
俯いて、なんとも落ちつきのない様子で、逃げ場を探している。
ランの悪戯にも困ったものだ、だが、不思議と嫌な気もしない。
私は閉じ込められた小動物があがく様子を観察することにした。