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第九十四話 地下へ

 1



「……見当たらないな……」


 ガイウスは先ほど黒い巨柱が現れた辺りの家々をしらみつぶしに探したものの、一向に見つけられなかった。


「……確かにこの辺りだったと思うのですが……」


 ロデムルもまた入り組んだ路地の一角に立ち、辺りを見回すもそれらしい建物は見当たらなかった。


「……壊れた建物はない……ならあの黒い柱は実体を伴ったものではないってことか……」


「ええ、おそらくオーラのようなものだったのでしょう。しかしそうなると見つけるのは大変に困難となりますね」


「周りに人通りもないし……困ったな」


 するとロデムルの視界にあるものが映り込んだ。


「む?……あれは…………坊ちゃま、先ほどの黒い柱が建物から発せられたとは限りません。もしやするともっと下……あの下水道の入り口を探ってみませんか?」


「なるほど。勝手に建物に侵入することは出来ないけど、下水の入り口なら構う事はないしね。よし、とりあえず下水道を探って、ないならそこでまた別の方法を考えよう」


「はい。それでは……」


 ロデムルは、下水道への入り口を塞ぐ重い金属製の蓋を渾身の力で引き上げた。


 すると地下へと通ずる石造りの白い階段が二人の眼前に現れた。


「坊ちゃま、どうぞ」


 ロデムルに(うなが)され、ガイウスは勇躍その階段を下りてゆくのだった。



 2



「……当然のことながら暗いね……」


 ガイウスはそう言うと右手の人差し指を天井へと向けた。


 するとその瞬間、ボッという音を立ててその指先から(ほの)かな炎が吹き上がり、途端に辺りを煌々(こうこう)と照らし始めた。


照火(ファラン)ですな。無詠唱でお見事です」


「初級レベルの魔法だよ。ほめられるほどのことじゃないよ」


 ガイウスはそう言いつつも、得意げな表情でにんまりとした。



「ところでこの下水道、ずいぶんと広くて大きいね」


「はい。古代にこのテーベがダロス王国の首都であったことの名残と言えましょう。当時は今と違って人口が格段に多く、これほどの規模でないと市民生活を支えることが出来なかったのでしょう」


「なるほどね。それにしても立派な造りだね……ほらあそこの辺りなんか、宮殿のようだよ」


 ガイウスが指差す炎の先には、大変に見事な彫刻が刻まれたとても太くて立派な柱が何本もそそり立っていた。


「ほう。見事な造りですな。行ってみますか?」


「うん。行ってみよう」


 ガイウスを先頭に二人は、豪華な柱が林立する宮殿のような場所へと向かった。



「すごいな。さっきとは比べ物にならない位に広いや」


「ええ、先ほどまでのところも通常の下水道に比べれば相当に広かったはずですが、ここは桁違いですね」


「ここは一体なんのためにこんなに広く場所をとったのかな?」


「もしかするとこの部分は古代では下水道ではなく、貯水池だったのかもしれませんね」


「そうか、飲み水を貯蔵していた所なのか」


「ええ。推測にすぎませんが……おそらく」


 二人は、そうして宮殿のような地下貯水池にゆっくりと足を踏み入れたのだった。

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