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第九百三十三話 入れ墨の模写

「なるほどね。てことは、何らかの方法で隠し財宝があるらしいっていう情報を手に入れただけで、詳しいことはわたしたち同様何もわかっていないってわけね?」


「おそらくはな……」


 シェスターが呟くように言ったところで、メルバとコメットが、エルバ同様顔を上気させて部屋の中へ入ってきた。


「お待たせ致しました。我らの入れ墨も書き写しが終わりました」


 メルバが代表して言った。


 するとその後ろから家令のレブンが大きな羊皮紙を大事そうに携えて入ってきた。


「それか。ではこの円卓の上に広げてもらおうか」


 シェスターの求めに応じ、レブンが円卓の上に羊皮紙を丁寧に広げた。


 シェスターは円卓上に置かれた羊皮紙を注意深く見つめた。


「これか……これは誰の背中の分かな?」


 シェスターが問うと、レブンがすかさず答えた。


「エルバ様のものでございます」


 シェスターはうなずき、羊皮紙をゆっくり静かにずらした。


「ではこの二枚目は誰のかな?」


 レブンが答えた。


「コメット様のものでございます」


 シェスターはまたもうなずき、一枚目とは逆の方向に二枚目の羊皮紙をずらした。


「するとこれがメルバ殿のものということだな」


 シェスターは三枚の入れ墨の模写を一列に並べて眺め見た。


「様々な記号が書かれているな……それに多くの線……うん?ここに何やら文字の様なものが書かれているな?」


 シェスターが真ん中に置かれたメルバの入れ墨の模写を指さして言った。


 するとアジオがすかさず声を上げた。


「こちらのコメットのものにも同じ様な文字が書かれていますよ」


 すると自分の模写も指さしたエルバも同じ様に声を上げた。


「わたしのにもよ。でも何これ?何の文字なの?誰かわかる人いる?」


 だがこのエルバの問いにうなずく者はいなかった。


 すると、難しい顔をして三枚の模写を睨んでいたメルバが言った。


「見たことも無い文字だ……そもそもこれは本当に文字なのだろうか……」


 するとシェスターがメルバに対して言った。


「おそらく文字ではあるだろうと思うが……どうだろう?ルーボスにこの様な文字に強そうな者はおるまいか?」


「……わかりました。探してはみますが、あまり期待しないで下さい。ルーボスはまだ新しい町でして、学術系の施設に関してはまだあまり揃っていないのです。なのでそれに付随する人材に関しても同様でして……」


 するとシェスターが突然大きな声を上げた。


「そうか!だとしたら古文書館のグレンならば読めるのではないだろうか……」


 シェスターはそう言うと、眉根を寄せて考え込んだのだった。

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