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第八百七十八話 姉弟

「エルバ嬢、こちらが君の弟のコメットだ」


 シェスターが一行を代表して、コメットをエルバに紹介した。


 本来ならばこれは、アジオがエルバの部下として行うべき事であったが、両者はこれまでほとんど面と向かって話しをしたことがない位に離れた関係であったため、ヴァレンティン共和国の高官としてエルバと対等に話しが出来るシェスターが代わってコメットを紹介したのだった。


 するとエルバがそんなシェスターの紹介にその場でピタリと立ち止まり、笑顔を浮かべながらゆっくりと振り返ったのだった。


「ああ、挨拶が遅れたな。わたしがエルバ・フラミニ・ラ・フランだ」


 エルバはかなりフランクな物言いで、肩肘を張らない挨拶をした。


 コメットはそのことに若干驚き一瞬たじろいだものの、先程バルトに威風堂々たれと言われたことを思い出し、威儀を正して挨拶を直した。


「初めまして、コメット・アルペジオ・ド・フランです……」


 最後の語尾が若干弱めだったものの、コメットが中々に堂々とした挨拶をしたため、お付きの者であるバルトがコメットの背を見つめながら感慨深げに目頭を押さえた。


「ああ、我らは母は違うがれっきとした姉弟だ。これから友誼を深めて仲良くしていこうではないか」


 エルバは堂々と挨拶したコメットに合わせたのか、フランクな物言いから若干堅めの物言いへと変えて言った。


 そのためかコメットもさらに堅い感じの話し方となった。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 するとそんな二人の堅苦しい挨拶を見ていたシェスターが、若干苦笑交じりに割って入った。


「どうも少し堅いな。成人してからの初対面でもあるし、多少堅苦しくなってしまうのは仕方のないことかもしれんが、何事も初めが肝心でもあるし、もう少しざっくばらんに話してみてはどうだろうか?」


 するとシェスターの提案にエルバがあっさりと乗ってきた。


「そうね。貴方の言う通りだわ。今度本当に姉弟として仲良くするつもりがあるなら、もっとくだけないとね。貴方はどう?コメット」


 エルバは早速くだけた物言いでコメットに尋ねた。


 するとコメットは一瞬戸惑った表情を浮かべたものの、すぐに笑顔を浮かべながらホッと息を吐き出しながら言ったのだった。


「そうですね。その方が僕も楽です」


「そう、良かった。ああ、ところでコメットって呼んでも大丈夫だったかしら?」


 するとコメットがさらに笑みを深くして言った。


「ええ、もちろん。でも僕は何と呼んだら……」


 するとエルバがとびきりのはじけるような笑顔を振りまきながら言った。


「姉様っていうのはどうかしら?いい感じだとは思わない?」


 エルバの屈託のない笑顔に、コメットも朗らかに笑った。


「いいですね、それ。……じゃあ、姉様……」


 コメットは照れながらも早速エルバをそう呼ぶのであった。

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