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第八百五十三話 屈服

 シェスターの有無を言わせぬ迫力に、アジオが気圧された。


「……いや、しかしそれでは隠し子の秘密が判らなくなりますけど?……」


 アジオはかなり弱々しく、か細い声で言った。


 するとシェスターは間髪入れずに力強い声で言い放ったのだった。


「結構!それはこちらで調べる。君は気兼ねなく出て行ってくれたまえ!」


 シェスターの剣幕に、アジオはまたも白旗を上げるしかなかった。


「……判りましたよ……すみません。生意気言いました……赦して下さい……」


 アジオは頭を深々と下げ、恭順の意を示した。


 シェスターは腕組みしながら大きくうなずくと、迫力はそのままにアジオに厳しい様子で語りかけた。


「わたしが君をここへ置いているのは、コメットに対して害意がないと思っているからだ。だがだからといって君に対して完全に警戒を解いているわけではない。君の情報は有益なものが多いとはいえ、こう隠し事が多いようだと、危険の方が大きいと判断せざるを得なくなる。なにせ敵は強大な教皇一派なのだ。内憂を抱えたまま対峙するには危険な相手なのだ。アジオ、どうするね?ここで全ての秘密を開示するか、それとも放逐されるか、どちらか好きな方を選ぶといい」


 アジオは自らの軽率な駆け引きが、シェスターの強烈なしっぺ返しにより、剣先が自らの喉元へ突き立てられる羽目になったことを後悔した。


 だがいくら悔いたところで時が戻る訳でも、話しが遡る訳でもないため、アジオの進退は完全に窮まってしまったといってよかった。


 そのためアジオは仕方なく諦め、改めて頭を垂れるのであった。


「……すみません。完全に僕の負けです。調子に乗って駆け引きなんて仕掛けるんじゃなかったです……」


 するとシェスターは厳しい表情はそのままに言った。


「いいだろう。では全ての秘密を開示するな?」


 アジオは肩をすくめ、仕方なさそうに同意した。


「……はい。そうします。放逐されてしまう訳にはいかないもんで……」


「よし。ではまず隠し子の件を話してもらおうか?」


「はい。なぜ最後の一人が世間の耳目から隠されねばなかったかですが……」


 アジオは一瞬躊躇したような素振りを見せたものの、生唾を一度ごくりと飲み込み、覚悟を決めて言ったのであった。


「それは……その母親が被差別民だったからです」


 するとシェスターの眼が途端に鋭くなった。


「被差別民だと?それはつまり……」


 するとアジオがシェスターの言を引き継いだ。


「はい。この肥沃なメリッサ大陸ではなく、やせ細った不毛の大地……あのカント大陸出身者だったのです……」


 シェスターは鋭く細めた目をさらにすーっと細めた。


「……ローエングリンの……いや、ゼクス教の教義は確か、如何なる差別も許容しないのではなかったか?」


 するとアジオがその口元に皮肉な笑みを浮かべたのだった。


「ええ、ですがそれも上辺だけの話しです。聖職者が本来妻帯してはいけないはずなのに、実際はしているように……ね……」

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