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第八百二十八話 二つの宣告

 1



「……ほう、人間よ。よくそれが判ったな?……」


 突然、上空から低く厳かな声が鳴り響いた。


 シェスターは驚き、思わず上空を見上げるとそこには、したり顔で見下ろすメノンティウスの姿があった。


「……メノンティウス……ということは……」


 シェスターはその現実に思わず言葉を失った。


 すると当のメノンティウスが図らずもシェスターの言葉を継いだのだった。


「そういうことだ。アスタロトは敗北したのだよ」


 言葉を失い呆然とするシェスターに代わり、険しい表情のドーブが一歩前に出た。


「……デルキア様はどうなった?……」


 するとすかさずメノンティウスが答えた。


「同じだ。カリンと共に地面に倒れ伏しているよ」


 ドーブは思わず目を伏せ、祈るように頭を垂らした。


「では諸君、参ろうか。サタンの元へ」


 メノンティウスの言葉が大氷原に鳴り響いた。


 そしてそれは再び下された、ロンバルドへの死刑宣告でもあった。



 2



「……シグナス様……一つお伺いをしてもよろしいでしょうか?……」


 メノンティウスに連れられ、氷漬けとなっているサタンの足下へと戻ったレノンは、そこで静かに佇むシグナスの顔を見つけると、慌てた様子で近づき、恐る恐るといった様子で問うた。


 シグナスはレノンの顔を一瞥すると、詰まらなそうな顔付きとなるも、仕方なさそうにうなずいた。


「……ああ、言ってみるがいい」


「はい。ありがとうございます……あのう……シグナス様、今ダロスを乗っ取っている者は何者なのでしょうか?……一体、何者が彼の地を支配しているというのでしょうか?……」


 するとシグナスは一つ大きなため息を吐いた。


 そして面倒くさそうにレノンの顔を見ると、静かに答え出すのであった。


「……以前にも言うたであろう?敵が何者かは判らぬと……だがわたしとメノンティウス、それにガイウス・シュナイダーが組めば奴らなど敵ではないとも……な」

 

 するとレノンが興奮した様子で反駁した。


「おかしいではないですか!敵の正体が判らぬのに、なぜガイウス・シュナイダーがいれば勝てるというのですか?そんな馬鹿な話しはない!今の今までそのことに気付かなかったわたしは当然馬鹿者ということになりますが、シグナス様!もし仮に貴方が本当に敵の正体が判らずに勝てるなどと言うのでしたら、貴方はわたし以上の大馬鹿者と言うことになりますぞ!」


 するとそこでメノンティウスがシグナスの傍らに近づき、静かな声音でささやいた。


「シグナスよ。あのシェスターめが気付いたのだ。ダロスに巣くう者の正体にな……」


 するとシグナスが軽く肩をすくめた。


「……ほう。気付いたのか……実に目敏い男だな。人間にしておくには惜しい男よ……」


 シグナスはそう言うと、静かにレノンへと向き直った。


 そしてレノンにとっては極めて重大な宣告がなされるのであった。


「レノンよ、その通りだ。ダロスを今掌中に収めている者の名は……お前が愛して止まない……神さ……」

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