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第八百十二話 秘密

「秘密か……そんなものがわたしにあるとして、君はそれを何だと思うね?」


 メノンティウスは探るような眼差しをアスタロトに送った。


 だがアスタロトはいつも通りの涼しい顔のままであった。


「……そうですね……見当もつきませんね。なので教えていただけると助かります」


 するとメノンティウスが笑い出した。


「面白いことを言うな?わたしが自分からか……だが残念ながらそれは出来んな」


「何故です?」


「では君が、自分の秘密を開示しろと誰かに迫られたら、君は開示するのかね?」


 するとアスタロトが間髪入れずに答えた。


「しませんね」


「そうだろう?それはわたしも同様だ。なので君の要望には応えられないというわけだ」


 メノンティウスはそう言って肩をすくめた。


 するとアスタロトも同様に肩をすくめて言った。


「まあそうでしょうね。ですがもしかしたら……なんて思ったんですけどね?」


「……ほう、それはまた……何故わたしが自分から秘密を開示するかもしれないと思ったのかね?」


 メノンティウスがまたも探るような目つきでアスタロトを睨み付けた。


 だがアスタロトはニコニコと微笑むばかりでメノンティウスの問いに答えようとはしなかった。


「……だんまりかね?どうも君の方がわたしより多くの秘密を抱えているように見えるが、どうなのかね?」


 メノンティウスは無言を貫くアスタロトに対して、さらなる問いを浴びせかけたのだった。


 だがそれにもアスタロトは答えず、ただにこやかに微笑むのみであった。


「……ふむ。先程までの雄弁が何処へ消えたのか……」


 するとメノンティウスの言葉を遮って、ようやくアスタロトが話し出した。


「すみません。少し考え事をしていたものですから……」


 突然のアスタロトの言葉に、メノンティウスは思わず苦笑した。


「考え事かね?それは一体どんな事だったのかな?」


 するとアスタロトが、コクンと首を横に傾げた。


「忘れました」


 するとこれにはさすがのメノンティウスも怒りの色を隠せなかった。


「……ふざけているのかね?それともわたしは、君に舐められているのかな?」


 メノンティウスは怒りのオーラを身にまといながら、アスタロトに静かに詰め寄っていった。


 するとアスタロトが満面の笑みを浮かべながら、ゆっくりとした動作で口を開いたのだった。


「いえ、考え事をしていたのは事実なんです。ですが途中である事に気付いてしまったものですから……考え事がどうでもよくなってしまったんですよ」


 するとメノンティウスがピタリと立ち止まった。


「……ほう。何に気付いたのかね?今度はちゃんと答えてもらえるんだろうね?」


 するとアスタロトが、大きく首を縦に振った。


「ええ、お答えしますよ。途中でわたしが何に気付いたか……貴方、懐にあるものを隠していますね?」


 するとメノンティウスの眉間に深い皺が刻まれた。


 アスタロトはそれを確認すると、ニヤリと笑みを零したのだった。


「そう……貴方、懐に千年竜を隠し持っていますね?」

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