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第七百六十四話 魂に刻む

「……どうかな?これで信じてもらえただろうか?」


 メノンティウスは突き出した口から、恐ろしげな牙を覗かせながらシェスターに問うた。


 シェスターはこの目の前の恐るべき生物に全身鳥肌を立たせながらも、必死の思いで顔には出さずに答えた。


「……ああ、このようなものを見せつけられては信じるしかあるまいよ……」


 シェスターは自らの内なる恐怖を必死に押し隠しながら、絞り出すように言った。


 するとメノンティウスは軽くうなずき、シェスターの肩越しにレノンをちらと見た。


「……久方ぶりであったな?レノン司教よ……」


 するとレノンが深々とお辞儀をしながら返事した。


「……はい。ご無沙汰致しております……メノンティウス様には……お変わりなく……」


 さすがのレノンもメノンティウスの顔に恐怖を感じているのか、たどたどしい口調となった。


 するとメノンティウスが狼のような口を大きく開けて笑った。


「……この顔では大分変わっておるわ。そうだな、二人もこの顔では話しづらいだろうし、戻すとするか」


 メノンティウスはそう言うと、直ぐさま顔を変化させた。


 そして徐々に先程の若い精悍な顔へと戻していった。


「……これでいい。これなら話し易かろう。どうかな?」


 メノンティウスがシェスターへ問いかけた。


 するとシェスターが軽く肩をすくめながら答えた。


「……まあそうだな。先程の顔はあまりにも異形すぎてな……」


 するとメノンティウスはシェスターの内心を見透かしているような、実に滋味に溢れた顔で言った。


「そうだな。あの顔には、人間ならば誰でも恐怖を抱く。魂に記録でもされているかの如く……な」


 するとそこでシェスターが軽く深呼吸をした。


「……どうやらわたしの内心を読まれているようだな?その通りだ。あの顔にわたしは恐怖心を抱いた。それは認めよう。しかし魂に記録されているかの如くとは、一体どういう意味なのかな?」


 シェスターはメノンティウスの顔を見て内心を隠したところで意味がないと悟り、あっさりと認めつつ問うた。


 するとメノンティウスが軽く何度もうなずき始めた。


「そうだな……恐らくは実際に魂に記録されているのだと思う。あの顔を恐れるよう遙か太古の昔に人間達に刻みつけた者がいるのだろうな……」


「……それは貴公ではないのか?」


「違うな」


「それはつまり、あの顔は類型的に人間が恐怖を抱く顔だから、貴公はあえてあの顔に変化したということか?」


「その通りだ。ずいぶんと理解が早いな」


「つまり先程の顔は、貴公の本当の顔ではない……ということになるな?」


「それも正解だ。わたしの本当の顔は……別にある。あるが、それは見せられんのでな?あの顔に変化したまでだ。だがあれでもわたしが悪魔だということは証明出来るだろう。なぜならば人間にはあのように顔を変化させる能力などないのだからな?」

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