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第七百二十一話 洞穴

 1



 レノンの指示により、部下の一人がポケットから鍵束を取り出した。


 そしてそのまま前へと進み、ロンバルドたちが捕らわれている檻の鍵を外したのだった。


「さあどうぞお出になってください」


 レノンに急かされロンバルドたちはおもむろに檻の外へ出た。


「……それで、我らを一体どこへ連れて行くと言うのかな?」


 シェスターは弓を構えるレノンの部下たちへの警戒を解かず、鋭い視線を周囲に放ちながら慎重に問うた。


 するとレノンは口の端を大きく歪めて悪魔的な微笑を浮かべていったのであった。


「この先の洞穴です……お二方がご想像の通り、千年竜のいるところですよ」


 レノンの笑みはさらに引き歪んだものとなり、もはや悪魔的どころか悪魔そのものといってよい程のものとなっていた。


「……ほう。千年竜のところへですか……それはありがたい。是非とも会いたいものだとおもっていたところなのでね」


「そうでしょうとも。ですので大人しく付いて来ていただけるとありがたいのですが……」


「承知した。当方としてもここで暴れたところで勝ち目は万に一つもありませんのでね。大人しく従うとしましょう」


「そうですか。そう言っていただけると大変助かります。それでは出発すると致しましょう。さあ、どうぞ付いて参られよ」


 レノンは言うや、身に纏った黒いローブを翻して反転した。


 そして緩やかな足取りでもって歩を進め、建物の外へと出て行った。


 シェスターはその背を一旦見送るとロンバルドに向き直り、軽く目礼を交わしてからその後に続いていった。


 ロンバルドもシェスターの後に続きすぐさま歩き始めたものの、建物を出る際一度歩を止め建物内を見回した。


 そしてこの忌々しい建物をぐるっと見回すと軽く一つ溜息を吐き、仕方ないといった表情を浮かべて改めて建物を出ていくのであった。



 2



「……随分と長いですな。これだけの洞穴をよくも短い期間に掘り出せたものですな?」


 シェスターが洞穴を歩きながら、前を行くレノンに問うた。


 するとレノンはにやりと微笑むも後ろを振り向くことはなく、その表情をシェスターに見せることなく返答をした。


「この穴は元々自然にここに存在していたものです。そこへあのレンガ造りの建物から掘りだして繋げたのです。ですので工事自体は短期間の内に終えることが叶いました」


「……これだけの大穴が元々……それを知っていたため、あの建物から掘り進めて繋げたということですか?」


「さようです。あの建物はこの洞穴への入口として必要だったため購入したものです」


「なるほど。ではお尋ねするが……なぜこの洞穴を必要とされたのかお教えいただけますかな?」


 シェスターがレノンの背中に鋭い視線を突き刺すように睨みつけた。


 だがレノンは気付いたかそうでないか、まったく後ろを振り返らずに淡々とした口調でもって返事した。


「決まっているでしょう?千年竜のためですよ……」

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