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第七百十一話 退場

「……千年竜はどこだ?どこに隠したというのだ?」


 シェスターの問いに、レノンは笑顔のままあっさりと答えた。


「ああ、千年竜ですか。それでしたらこの地下洞の先におりますよ」


「……つまりここをさらに下っていったところに千年竜はいるということか?」


「ええ、そうです。おとなしく寝ているようですよ……他にも何かありますか?」


「……他か……そうだな、我らを捕らえてどうするつもりか?」


 するとレノンの笑顔が最高潮に達した。


「決まっているじゃないですか。囮りですよ。カルミスや、竜の涙を隠し持っているはずのダルムをおびき出すためのね」


「……なぜ我らの身体検査をしないのだ?竜の涙を我らが持っているかもしれないではないか?」


 シェスターはそう言って首を軽く傾げた。


 するとレノンが微笑みはそのままに答えた。


「それはないでしょう。もしこのように囚われてしまった場合、竜の涙を奪われてしまう危険性がありますし、そもそもあなた方は千年竜を発動させる気などないはず。ならばここへ持ってきても意味はないですからね。違いますか?」


「……確かにな……」


「では、他にご質問もないようですし、わたくしはこの辺で……ヤシブ、後は頼むぞ」


 レノンの言葉にヤシブがうやうやしく腰を折って丁寧にお辞儀をした。


「……さてリボー、参りますよ」


 レノンに呼ばれてリボーはバネのように飛び起き、レノンの後に素早く続いた。


 その腰を落としかがみ込んだままで歩く姿は、完全にレノンに服従した召使のような様であった。


 レノンはその姿を満足そうに横目で眺めながら踵を返し、ゆったりとした動作でもって静かに歩き始めた。


「それではお二方、ご機嫌よう。またいずれ近いうちに参りますので、それまでどうぞお健やかに……」


 レノンは背中越しに別れの言葉を告げた。


 だがそれに対してロンバルドたちは返す言葉を見つけることができず、ただじっとその後ろ姿が暗闇に消え去る時までその背中を睨み続けることとなった。


「……ちぃっ!……」


 レノンの姿が漆黒の闇に溶け込んだと同時に、シェスターがたまらず舌打ちした。


 するとこの部屋に一人残されたヤシブが、ゆっくりとした足取りでもって二人の前へと歩み出たのだった。


「おい、お前たち。大人しくしていろよ?そうすればまあそれなりに世話してやらんでもない。だが……そうでないならば……判っているな?」


 ヤシブはそう言うと、残忍そうな笑みをその四角ばった顔に浮かべた。


 ロンバルドたちはそんなヤシブの醜い笑顔を見て、共に深い嘆息を漏らすのであった。

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