第七百四話 三人組
「……では手はず通りに……」
シェスターは言うや、ロンバルドの元を離れて暗がりに消えた。
ロンバルドはしばらくの間息を潜めてその場に留まっていたものの、突如としてシェスターが消えていった方向から風切り音が響いたため、静かにそーっと動き出した。
「……今何か聞こえなかったか?……」
見張りの一人が呟いた。
すると別の一人が不審そうな声で反応した。
「……ああ、何か変な音が……風かな?……」
「いや……違うと思うぞ……何かいるんじゃないか?……」
すると三人目の男が怯えたような声音で二人を注意した。
「勝手な話をしていると、またリボー様に怒られるぞ?」
「勝手な話しってなんだよ。変な物音がしたから言ってるんだろ?もし侵入者だったらどうするんだよ」
一人目の男が心外だとばかりに三人目に食ってかかった。
すると二人目の男も一人目に同調する構えを見せた。
「ああ、その通りだ。調べたほうがいい」
「だな。よし調べよう。お前はどうするんだ?」
一人目の男は三人目の男に対して態度を迫った。
すると三人目の男は仕方ないといった風情でうなずいたのだった。
「……判ったよ……俺も行くよ」
「よし、なら一緒に行くぞ。俺に付いて来い!」
一人目の男はそう言うとそろりそろりと前に歩み出た。
その様子は勇ましい台詞の割にはへっぴり腰であり、実戦経験の拙さを露呈していたのであった。
「……おい!誰かいるのか?いるんだったら返事しろ!」
一人目の男は無意味なことをのたまいながらゆっくりと前進した。
残りの二人も同じようにへっぴり腰で続いた。
「……いるんだろう?さっき変な声が聞こえたんだ……大人しく出てくるんだったら今のうちだぞ?ほら、出て来いったら!」
一人目の男は内心の恐れを打ち消すかの如く暗闇に向かってしゃべり続けた。
「出て来いって……大人しく出て来たら危害は加えないって言っているだろう?こっちは三人いるんだぞ?しかも俺たちは厳しい訓練を受けた精鋭なんだ。お前に勝ち目なんかないぞ。そうだろ?二人とも」
一人目の男は後ろを向いた途端に襲われる事を恐れたのか、振り向かずに後ろの二人に問いかけた。
だが後ろからはなんの応答もなく、ドサッという大きな音が二回立て続けに起こったのみであった。
「……おい二人とも!何とか言ったらどうなんだ?お前ら勇敢な俺の背中に隠れて声も出せずに震えてでもいるのか?情けない。そんなことじゃまたリボー様に怒られるぞ?まったく少しは俺を見習ってだな……」
男はなんの応答もない後ろが気にかかりつつも、振り返った隙に襲われる事を恐れて振り向かずにいたが、後ろのふたりがうんともすんとも言わないためにさすがに不安になったのかついに後ろを振り返った。
だがそこには旧知の二人の姿はなく、少々呆れ顔で男を見据えるロンバルドの姿があった。
ロンバルドは男と顔を見合わせると満面の笑みを見せた。
だがすぐに腰を落とし、手に持った隠し刀の柄でもって男の腹をしこたま強烈に打ち付けた。
すると哀れ、男は声を出せずに一瞬で気を失い、その場に崩折れてしまったのであった。




