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第六百七十六話 手土産

「……彼女たちを無事に家まで送り届けるためにはカルビンの脅威を取り除く必要がある……だが奴は強大……やはり教皇を味方に付けるのが得策だが……シェスター、カルビンと教皇は以前より長く権力争いをしているんだよな?……」


 ロンバルドは長考を終え、シェスターへと問うた。


「はい。両者が現在の地位に就く前からと聞いておりますので、少なくとも十年以上は……」


「そうか。だとしたら教皇を味方に付けたとて、これまでと同じく睨み合いの状態が続くだけということになるな……いや、そうとばかりは言い切れんか……」


 するとシェスターが訝しそうに尋ねた。


「と言いますと?」


「フラン元大司教さ。彼は教皇のもう一人の政敵だったのだろう?その彼が死んだ。となれば教皇の力は以前より強くなっていると考えられるのではないか?」


「なるほど。フランとカルビンは味方同士ではないものの、教皇に対抗するためによく手を組んでいた。となればフランの死はカルビンにとってはかなりのマイナスですね」


「そうだ。だが逆に教皇にとっては……」


「かなりのプラスというわけですね?」


「その通りだ。おそらく両者のパワーバランスは崩れているはずだ」


「ならば我らが教皇に取り込む隙もありそうですな?」


「ああ、その通りだシェスター。だがそうだとしても……手土産は必要だろうな……」


「……コメットの背中の刺青の写し……ですか?」


 シェスターが鋭い眼差しでもってロンバルドを軽く横目で睨んだ。


 するとロンバルドはニヤリと笑ってその考えを即座に否定した。


「無論そんなことはせんよ。彼の背中の刺青がフラン元大司教の遺産の在り処を指し示していたとして、その遺産はコメット君やその兄弟たちのものであって、少なくとも俺のものではない。ならば俺が勝手に右から左へと渡していいべきものではない道理だ」


「……では何を手土産になさるおつもりですか?」


 するとロンバルドは大きく息を吐き出し、天を仰いだ。


「さてそれだ……教皇が喜びそうな手土産といえば……何かないかな?シェスター」


「はて……まずもって考えられるのは、やはり金でしょうな。なぜならばフラン元大司教の遺産を狙っているくらいですからね。それと次に考えられるのは権力でしょう。これまでカルビン、フランと争ってきたのはひとえにさらなる権勢を欲してのことでしょうからね」


「そうだな。やはり金か権力ということになるか……」


 ロンバルドはまたも腕を組んでしばらく深く考え込んだ。


 すると隣り合って歩くシェスターもまた難しい顔となった。


 そして二人はしばらくの間ひたすら無言で歩き続けるのであった。

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