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第六百六十二話 脱出

「……凄っ!……」


 アジオが思わず、シェスターの放った氷結魔法の威力に驚嘆の声を上げた。


 それもそのはず、シェスターの繰り出した魔法は三人の男たちを瞬く間に飲み込んで氷漬けにし、あっという間に物言わぬ物体へと変化させていたのだった。


「よし!では行くぞ。アジオ!先頭を頼む。トラン!アジオに次いで二番手で進め。俺は予定を変更して最後尾で行く」


 シェスターはそう叫びながら氷漬けの男たちを力任せに蹴飛ばして倒すと、そのままの勢いで素早く廊下へと踊り出た。


 するとアジオとトランがシェスターの背中を目で追いながら応答した。


「「承知!」」


 二人は必要最小限の返事をすると、怯える女性たちと少々戸惑っているコメットを促しつつシェスターの後を追って素早く廊下へと出た。


 シェスターは敵の更なる襲撃に備えて青く輝く両手はそのままに、廊下の先を鋭い視線でもって見張った。


 すると手招くアジオたちの後を追って女性たちが怯えながらも次々に廊下へと向かった。


 シェスターがそれを無言のまま背中で見送りながら警戒を怠らずにいると、女性たちは次々と続き、アジオたちの後を追っていった。


 そして長々とした行列が続き、ついにその列が十五人を数えると、最後にバルト、ロデムルの二人が廊下へと出た。


「シェスター様、お早く!」


 最後尾のロデムルがシェスターに声をかけながらその後背をすり抜けていった。


 シェスターはその声を聞くと瞬時に反転、その後を追った。


「よし!みんな早くこの中へ!」


 先頭のアジオが拷問部屋へとたどり着くと、素早く扉を開けて女性たちを部屋の中へと誘った。


 するとまずトランが部屋の中へと飛び込み、次いでコメット、そして十五人の女性たちが次々に中へと入っていった。


 そしてバルト、ロデムルと続き、最後にシェスターが飛び込むと、アジオは廊下の様子を伺いながら静かにその扉を閉めたのだった。


「よし。では脱出する。いいな?」


 シェスターが全員を見回しながら言った。


 すると最も早く部屋へと飛び込んだトランが、隠し扉に近づいてすかさず開けた。


 女性たちは驚き、互いの顔を見合わせた。


「そうだ。ここから脱出する。実を申せば我々はここからこの建物に侵入したのだ」


 シェスターはそう言いつつゆっくりとした足取りで隠し扉に近づいた。


 そして同じく近づくアジオに目配せすると、自ら隠し扉の向こうへと飛び込んだ。


「さあ、みんな続いて」


 アジオが女性たちに声をかけつつ、シェスターの後に続いた。


 次いでコメットが当初の予定通りに三番手で続くと、女性たちも陸続と続いた。


 そしてバルト、トランが中に入ると、最後にロデムルがゆっくりとした動作で入った。

 

 そして静かに振り返って拷問部屋をひとしきり見回すと、隠し扉を慎重に閉めて自らの侵入経路を消したのであった。

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