第六百一話 絶世の美女たち
「……やはり二人の男とは、アルスとオルテスのようだな……」
シェスターは男から、六日前に白い美女と共に現れたという二人の男についての特徴を聞きだし、確信した。
すると傍らのロデムルも大きくうなずいた。
「はい。間違いないかと」
シェスターはうなずき返すと、改めてその時の様子を男に尋ねた。
「どのような様子であったか覚えているか?」
すると男はまたも息せき切って早口で言った。
「もちろんですとも!あのような見目麗しい美女が三人も現れるなんて普通だったら有り得ない話ですからね。そりゃもう眼福とばかりに凝視しちゃいましたんで、よく覚えていますとも!」
「そうか。で、どんな様子であったかな?」
「先程言った通り最初美女は二人だけでした。二人はこの部屋に入るとなにをするでもなく、所在無げに佇んでいました。なのでわたしは多分待ち合わせなんだろうなあって漠然と思っていました」
「つまり君の予想は当たっていたってわけだ?」
「ええ、そうなんです。二人がこちらに来てから……そうですね……十五分程してだったでしょうか、もう一人の美女と二人の男が入ってきました」
「二人の様子はどうであった?男の方だが……」
「男の方ですか……正直ほとんど注意を払って見ていなかったのでよく覚えていないのですが……美女たちと恋人関係って風には見えなかったですね……どちらかというと仕事関係って感じだったでしょうか……」
「様子には特に変わったところはなかったかな?」
「……う~ん、そうですね~。特に変なところはなかったと思いますよ?まあよく覚えていないってことが、男たちが普通の様子だったっていうことの証左じゃないですかね?もし仮に変わった様子があれば覚えていると思いますしね」
「確かにな。では三人の美女たちはどうだったかな?」
「いやあ、そりゃもう美しいなんてもんじゃなかったですよ!あれはもう三人ともが絶世の美女というべきですね!しかも驚くべきは、三人ともあんまり似ていないってことですよ。普通美女が三人も現れたら、三姉妹かな~って思うじゃないですか?でもあの三人はおそらく姉妹じゃないんじゃないですかね?となると凄くないですか?絶世の美女クラスが同時に三人ですよ?一体どういう関係なんですかね~?まあ、そうはいってもこれは僕の勝手な思い込みに過ぎないかも知れませんけどね?」
するとシェスターが腕を組んで考え始めた。
「……ふむ……見たこともない美女が三人も現れたというのに、その三人はまるで似ていなかったか……そんな絶世の美女とも言えるほどの女性たちが姉妹でもなく……となるとやはり不自然か……」
シェスターは独り言のように呟くと、薄く光が差し込む天窓のステンドグラスをじっと静かに見つめるのであった。




