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第五百三十二話 混乱

「……なるほど、ゼクス教か……」


 ロンバルドは自らが発した言葉を噛み締めるように何度もうなずいた。


「つまりレノンの所業はゼクス教の教義と合わないというわけですね?」


 するとカルミスは大きく首を横に振ってロンバルドの考えを否定した。


「いや、そんなことはまったくありません。レノン様の考えや、これまでに為したすべてのことはゼクス教の教義と何らぶつかるものではありませんから。ですからわたしはレノン様に対しては何ら含むところはないのです」


 カルミスのこの回答に、ロンバルドは多いに戸惑った。


「……え?そうなのですか?……ゼクス教の教義のためではないのですか?」


「いや、だからゼクス教の教義のためですよ?」


「……いや……その……言っている意味がよくわからないのだが……」


「要は地獄めぐりですよ。御子息の」


 カルミスの何気ない口ぶりに、ロンバルドは更なる混乱をきたした。


「……へ?……地獄……へ?……」


 ロンバルドは完全に思考停止状態となった。


 そのため代わりにロデムルが見かねて口を開いた。


「失礼。主人に成り代わりましてわたくしが質問させていただきますが、ガイウス坊っちゃまの地獄めぐりとは一体どのようなことを指しておられるのでしょうか?」


「……そうか、知らなかったのか……言っちゃまずかったか……」


「はい。確かにわたくし共は存じ上げません。ですが、こうなってしまっては言っていただくより他ありません。なにとぞわたくし共にわかるようにご説明願います」


 ロデムルの口調は有無を言わさぬ迫力があり、カルミスは戸惑いながらも気圧されてしまった。


「……あ、ああ。まあそうか……言っちゃったものは仕方がないか……でも後でガイウスにバレてぶち切れられたら……どうしよう……」


「無論、坊ちゃまには内緒にしておきますので、ご説明を」


 再びの有無を言わさぬ物言いに、ついにカルミスは観念せざるを得なかった。


「……ああ、それじゃあ言いますけど……そのう、ガイウス君は地獄へ行ったんですよ」


「地獄……と申されるのは、あの地獄でございますか?悪人が死して後送られるという、あの?」


「ああ、そうです……あっ!いや違う。わたしも地獄とは悪人が死んだ後に送られる場所だと思っていました。ゼクス教の教義にもそう書かれています。しかし実際は違うのです。というよりガイウスが違うと言うのですよ。自分は地獄へ行ってきた。だがそこは別段死者の赴く場所などではないと!」


 するとロデムルもさすがに多少混乱をきたした顔を浮かべた。


 しかし主人のロンバルドが完全に思考停止状態のため、自分が代わりに聞くしかないのだと思い立ち、必死に頭を巡らしてカルミスに尋ねたのだった。


「つまり……ガイウス坊っちゃまは、我々が思い描くあの地獄へ行かれた。しかし実際行ってみると地獄は、我々が思っているような場所ではなかった……ということですか?」


 するとカルミスは嬉しそうに膝を叩いて叫んだのであった。


「そう!そのとおり!大正解!!」


 カルミスの声が広々としたリビングに響き渡る中、ロンバルドは三人がけの長いソファーに横倒しに倒れ込んだのであった。

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