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第五百二十六話 謝罪

「失礼します」


 四人が決意を固めたところへ、突然秘書のコーデシアが入ってきた。


「長官がお見えです」


 ロンバルドは驚き、思わず立ち上がった。


 するとそこへ隻腕の威丈夫エドワルド・ミュラー属州長官が突如現れた。


「両名とも、すまなかったな。この通りだ。許してくれ」


 ミュラーは部屋へ入るなり、そう言っていきなり頭を下げた。


「長官!そのようなことをなさらずとも!」


 ロンバルドは慌ててミュラーに駆け寄った。


「いや、弁護士はわたしに任せておけと言っておきながら、我ら両名奴らの囚われの身となり、駆けつけること叶わなんだ。許してくれい」


「いえ、奴らがそこまで色々と仕掛けてくることを予期できなかった我らの責任でもあります。どうか頭をお上げください」


 するといつの間にかロンバルドの斜め後ろにやってきていたシェスターも、詫び続けるミュラーに対して声をかけた。


「長官。そもそもは我らの不徳の致すところから始まっております。長官に対してはご面倒をおかけしたと申し訳なく思っておりこそすれ、責める心持ちなど微塵もございません。なにとぞ頭をお上げ下さるようお願いいたします」


 するとようやくミュラーが頭を上げてロンバルドたちの顔を見た。


「そうか……そう言ってくれると気が楽になるというもの。本当にすまんな……」


「いえ、どうか気になさらずにお願いいたします。このようなことをなされては、わたしもシェスターもむず痒くなってしまいますので」


「ええ、副長官の仰る通りです。あまりにもいつもと違いすぎてかえって怖いぐらいですよ」


 シェスターの軽口にようやくミュラーの顔がほころんだ。


「うむ。わかった。ではこれまでにしよう……来客中にすまなかったな」


 ミュラーが、ロンバルドの肩ごしにオルテスたちを見ながらそう言った。


 すると慌ててオルテスたちは立ち上がり、ミュラーに対して会釈した。


 するとミュラーがそれに対して丁寧に会釈を返すと、ロンバルドたちに片目を瞑って目配せをした。


 そしておもむろに踵を返すと、悠然とした歩様でもって退室していったのであった。


 ロンバルドはその後ろ姿を静かに見送り、ミュラーの後に続いた秘書のコーデシアが扉を閉めるのを確認してから、肺腑の中の空気を全て吐き出したのであった。


「ふう……参った。あのように長官に頭を下げられるなど初めてのことで……」


 すると傍らのシェスターが静かにロンバルドの言葉の後を継いだ。


「緊張しましたな」


「ああ、ああいうのはたまらん。お前が言ったように元は我らの責任だからな」


「いえ、先程は我らと申しましたが、あれはわたし個人の責任です」


 するとロンバルドが少々怒気を孕ませてシェスターの顔を睨んだ。


「くだらんことを言うな。あれは我らの責任だ。いいなシェスター。二度とそのようなことを言うのは許さんぞ」


 シェスターは、ロンバルドの自分を思った言に感謝と悔恨の入り混じった感情を抱きつつ、深々と頭を垂れるのであった。

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