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第五百二十二話 閉廷

 1



「それではこれにて閉廷致します!」


 裁判長が打ち下ろした木槌の音が高らかに法廷内に鳴り響いた。


 ロンバルドたちが立ち上がって裁判官席へ向かい深々とお辞儀をすると、裁判長は微かににこりと微笑み、そのまま静かに退廷していった。


 ロンバルドはその背中を見送るとゆっくり視線を戻し、ふと検事席へと目を向けた。


 するとそこには怒りの形相凄まじいコッホルの姿があった。


 だがコッホルはロンバルドたちに向ける言葉が見つからなかったのか、手に持っていた資料を床に叩きつけてぶちまけ、そのままぷいっと後ろを向いて子供のように出て行ってしまった。


 ロンバルドは、コッホルのぶちまけた資料を拾いながらあたふたする検事たちを見ながら、ふとため息を漏らした。


 すると傍らのシェスターが声をかけた。


「コッホルの奴、相当悔しそうでしたね?それに後ろの傍聴人席に陣取っていた元老院のギャレス・ボレローも、とても悔しそうな顔をして帰って行きましたよ」


「そうか……」


 ロンバルドは短く感想を言うと、踵を返して歩を進めた。


 そしてそのまま弁護側席後方の扉から静かに三人は退廷していったのであった。



 2



「皆さん、少しよろしいでしょうか?」


 ロンバルドたちが軍事法廷裁判所の入口ロビーを歩いていると、後背から三人を呼び止める者があった。


 ロンバルドたちが振り返るとそこには、神妙な面持ちをしたアルスの姿があった。


「君か……アルス隊長……」


 ロンバルドが思わず呟くと、アルスは首を振ってそれを否定した。


「いえ、もう隊長ではありませんよ」


「ああ、そうだったな……」


「少しお話をしても?」


「ああ、もちろんだ。だがここで立ち話もなんだな……」


 するとシェスターがすかさず提案をした。


「でしたら政庁で話をしましょう。ここから歩いて数分ですし」


「そうだな。それがいい。どうかな?」


「ええ、それで結構です」


 アルスの同意を得て、四人は百十M先のエルムール政庁へと向かうこととなった。


 ロンバルドを先頭に四人は裁判所を出ると、一路政庁へと続く道を歩き始めたのだったが、一人アルスのみはオルテスとの間に気まずさを感じたのか、最後尾を三人とは少し離れて歩いた。



 そして数分後、政庁へとたどり着くとすぐさまロンバルドの執務室へと四人は足を運んだのであった。





 ロンバルドはソファーに腰掛け、秘書のコーデシアが入れてくれた熱いお茶を息を吹きかけながらすすると、すぐさま対面に座るアルスに対して口を開いたのだった。


「それで……話とは?」


 アルスは話を向けられロンバルドの顔を見るも、すぐさまロンバルドの左隣に座るオルテスへと視線を移した。


「オルテスさん……申し訳ありません。コリン君を殺したのは、このわたしです……」


 アルスはそうはっきりと告げると両手を膝の上に置き、丁寧に深々と頭を下げた。


 するとオルテスはゆっくりと目を瞑り、しばらく無言で頭を下げたままのアルスを見つめてから静かな口調で声をかけたのだった。


「ああ、知っている。だがそれは……仕方のないことだったのだと思っている……」

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